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2016/05/31

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今の邦楽ロックのスタンダードを"KANA-BOONスタイル"と名付けたい

「最近のバンドはクソだ」

 バンド文化が日本に流入して以来ずっと言われ続けてきたであろうこの言葉。人間はどうしても思い出を美化したがるらしい。
 老化のせいか、今流行っているバンドのどれを聴いても似たり寄ったりに聴こえてしまい、iPodに音源を入れてみても3度も聴かないことがほとんどだが、よくよく考えればいつの時代もバンドは似たり寄ったりだった気がする。あるバンドが新機軸で成功すると、二匹目のドジョウを狙うバンドたちがそれに飛びつき、結果的に同じようなバンドで飽和してしまう。そんなことをここ15年の間に5回近く繰り返している。

 じゃあ今のムーブメントは?といえばやはりKANA-BOONだろう。
 売れまくっているバンドは他にもあるが、応用が利かなかったり、マネるに苦しかったりと、他のバンドが手を出さないなりの理由がある。その点KANA-BOONの開拓したバンドスタイルの応用の効き方といったらもう…、そりゃみんなこぞって真似るわな、と。

 今回はこのKANA-BOONスタイルなるものについて考えて行きたい。これを極めさえすれば、ツイッターのプロフィール欄にバンドの名前をスラッシュで区切って並べるのがご趣味であらせられる皆さんにバカウケ、Youtubeの再生は100,000を越え、地方のフェスでそこそこの盛り上がりを見せ、二年以内に世の中から忘れ去れることができる。是非極めてくれ。

KANA-BOONスタイルとは

 地下室TIMESの読者ならもう既に大よそのアタリが付いていると思われるが、四つ打ちにハイトーンボーカル、繰り返しフレーズなんかが加われば言う事なしのこのスタイルだ。例を挙げると

 こんな風である。その中で独自性を出そうと各バンド試行錯誤が見られるが、根幹はやはり「わかりやすく踊らせる」これに帰結する。
 イントロはわかりやすく覚えやすいリフ、裏拍の概念が弱い日本人にわかりやすいように頭4つでバスドラムを踏み縦ノリを促すことにひたすらフォーカスを置いている。

 便宜上KANA-BOONスタイルと呼んではいるが、彼らが台頭する以前にもこういったバンドは少なからず存在した。しかしその当時はまた別の物(9mmとか時雨のようなバンド)が流行っていたし、彼らが大当たりするということはなく、それらが下火になった時にタイミングよく現れ、運よく一匹目のドジョウを手にしたのがKANA-BOONだったのである。
 また、当たりを引いたのが彼らだっただけで、後続のバンドも彼らよりこのスタイルを我がものとして完成させているバンドもチラホラといる。

 ドラマチックアラスカなんかは四つ打ちに依存し過ぎず離れず、暗すぎずポップすぎず、本家KANA-BOONよりもこのスタイルの教科書的なバンドだろう。流行りのバンドを好んで聴いている人は是非一度聴いてみて欲しい。

なんで流行ったのか

 売れているバンドは他にもあるのになぜKANA-BOONのこのスタイルだけ流行ってしまったのか。

 たとえばONE OK ROCKなんかは、モロにUSエモだし本場のそれをパクってしまえばいくらでも真似できそうなもんだが、Takaの歌が上手すぎて他がやっても見劣りしてしまうのと、ジャンル自体の制約が多いために個性のつけかたが難しいのが障壁となっている。真似してなんとなるのは森家の血を引く者だけだろう。


(森家の血を引く者がやってるバンド)

 ゲスの極み乙女は名前とドラムの顔で話題性を作り奇跡のホームランを打ったバンドなので、音楽性だけマネしてもなんともならないし、ドラムとピアノを真似た時点で他の部分も変化のつけようがなくなってしまうのでパクりづらい。

 その点KANA-BOONの隙の多さは世の若手バンドにさぞ大きな希望を与えたことだろう。
「ダンスビートで踊らせて、リフさえキャッチーにしておけばいい!俺たちの方が顔もかっこいい!痩せてる!ファッションセンスもダサくない!楽器も上手い!いけるでこれ!!」
こうなってもおかしくない。誰も悪くない。

人気はでるかもしれないが

 このKANA-BOONスタイル、現在一種のムーブメントと化しているので、これをやっておけば一定数のファンは約束されるというスグレモノ。彼女たちはダンスビートなら誰にでも喜んで股を開く。あとは話題性のあるMVとすぐれたルックス、だれにでも響くようなわかりやすい歌詞を用意したら成功は目の前だ。演奏力や細かな工夫、曲のまとまりなんかは全く求められてないのでただ人気を出したいだけならば必要ない。
 こう書くと聞こえが悪いが、これはこのスタイルに限ったことでなく、メロコアやV系のようにジャンル自体に一定のファンがついておりそのジャンルに属するだけで集客に期待が持てるのである。

 しかし問題は多少の人気を獲得した後の事である。そのジャンルが人気であればあるほど必然と競合バンドの数も多くなる上に、何にでも飛びつくような股の緩いファンはすぐ次のバンドへと移って行ってしまう。結局そこそこの人気すら持続せず打ち上げ花火のように空中分解するバンドは後を絶たない。メロコアバンドが伸び悩んだとたんにメロコアから脱却しようと変な個性を身に着け既存のファンすら失い自滅する現象と全く同じである。下手なスプラッター映画よりよっぽどかムゴい。

 KANA-BOONスタイルを使ってバンドを真に成功させるには、先ほど必要ないと言い切ったバンド自体の地の力、もしくはやりすぎでない且つ強力な個性が求められる。ガールズバンドでやるとかね。
 かといってこのスタイルを全く無視してバンドを成功に導くのもかなりの茨道だ。

終わりに

 こうしたら絶対成功する!という確固たる答えはやはりない。あったら私がやっている。
 ただ、間違いないのは流行りに乗っかるということはバンドの寿命を短くするということだ。バンドで成功したいと志している人はそれをよく心得て欲しい。

 一見売れ線は近道のように見えるかもしれないが、継続することがバンドの成功だとしたらリスクの高い賭けでしかない。何にせよ努力と才能と打算と運が求められる。確実な勝算がない限りは手を出すべきではないだろう。
 バンドマンよ幸あれ。

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