LOVE PSYCHEDELICOの音楽性をベタ褒めする記事
こんにちは。
LOVE PSYCHEDELICOというユニット、非常に有名であるし既にご存知であるとは思うが、非常に特殊なユニットではないかと思う。
規模、流通経路などの観点から言えば完全にいわゆる”メジャー”的な方法であるのに、
音楽性とそのスタンスを見る限りでは消費者を意識した商業的といわれれば、むしろ真逆の”自分達の音楽を追求する”タイプに分類されると思うのだ。
そうであるにも関わらず思いっきり大ヒットをあげるし、デビューから15年経った今、お世辞にも全盛期とは言えない状況でもライブツアーを開催すれば相当な動員がある。
使い古された言葉だと思うが、「音楽シーンの中で独特なポジションを占めている」という言葉がこんなにも当てはまるアーティストはいないのではないだろうか。
今回はそんなLOVE PSYCHEDELICOの音楽を改めて聴きこんでみたところ、
彼女らの突き詰められた音楽がこんなにも凄いということを、第三者的な目線で語ってみようという記事である。
「デリコ節」という発明
LOVE PSYCHEDELICO - Last Smile
会いたい気持ちがgo away 今でも泣きたくなるならany way
LOVE PSYCHEDELICO - Last Smile歌詞より引用
文字に起こすとギャグにしか見えないし、言葉に出してみると余計滑稽な響きがする。
ルー大柴が犯した罪の罰を真正面から受け止めてしまった結果だろう。
LOVE PSYCHEDELICOというバンドの最大の特徴でもある、この日本語と英語が織り交ざった独特の歌詞スタイルと歌い方。
これが俗に言う「デリコ節」である。
デビュー当時、この斬新なスタイルが話題を呼んだが、15年経った今でさえそれを超えるものはおろか、後追いすら殆どいないという正にこれこそ唯一無二の音楽性である。
先ほど文字に起こしてみたが、彼女らマジでギャグにしか見えない歌詞を連発しまくるのだが、
これが実際に歌になると、文字にしたときのあの違和感を殆ど感じない上に非常にカッコいい。
サンフランシスコで幼少期を過ごしたというボーカル・ギター、kUMIのやたら上手い英語の発音と絶妙に下手くそな日本語が相まって
「全編英語っぽく聴こえるのに、大体意味がわかる」という不思議な現象を起こしているのが「デリコ節」だ。
「デリコ節」は単純に”英語と日本語が混じった歌詞”だけではない、もっとヤバイ
LOVE PSYCHEDELICO - Everybody needs somebody
先ほどは英語と日本語が混ざっているヤバさについてフォーカスしたが、彼女らの独創性はブッちぎっていてそれだけではとどまらない。
今回注目して聴いて欲しいのは上の「Everybody needs somebody」のちょうどサビに入る瞬間である。
ちょうど歌詞上では「好きさ」となっている部分である。
この「好きさ」、上の動画のライブでは1度目のサビ前では歌っているが2度目は省略、3度目はそもそも音源の時点でも歌わない。
省略されたり消えたりと色々扱いが雑な、この「好きさ」というワード、実は他の曲でも登場したりしているが扱い的には似たようなものである。
この使われ方、登場する場所等を考えると、「好きさ」は恐らく英語の曲の"come on"とか"all right"とか"love you, baby"といった、
要は歌詞上でこれといった意味はないが、歌のリズム的なところで欲しかったり、テンションが上がってきたから適当に発するタイプの歌なのである。
その「好きさ」という不思議なワード。
それが意味することは、要はデリコの歌は歌詞が日本語にせよ英語せよ、本質的な部分で”洋楽的”であるということだ。
では”洋楽的”なメロディーとは具体的にどういったものなのだろうか。
"this"という単語を例に掘っていってみよう。
カタカナ英語で”ディス”と書いた場合だと、母音が二つ「い」と「う」が現れる。
だが本来の英語では母音は"i"の一つだけである。
ではカタカナ英語の時の”ス”はなんなのかというと母音の無い子音だけの音という扱いになるのだ。
だからカタカナ英語のときはディスーと伸ばして歌えるが、
実際の英語ではディースという風には音を伸ばせるが、”ディスー”とは伸ばせない。
全ての音に母音が含まれる日本語と母音と子音の組み合わせによる英語では言語的な部分で既にリズムが違うのである。
そしてさらにツッコむと、英語の子音の部分これが音楽的なリズムで言うと”裏拍”にあたる。
日本語は全部に母音があるので全部”表拍”だけの言語といえよう。
流石帰国子女KUMI、感覚的な部分まで英語的にメロディーが出来ている。
だがメロディーのベースが英語だから洋楽のメロディ、と思いきや、
日本人の血も混ざっていてので邦楽的に、日本人が好むいわゆる”泣き”の部分も混ぜてきたりもする。
ここまでくると唯一無二どころか、新しい歌唱法を”発明”したというべきだろう。
デリコ節すげえよ。
ルー語で歌ってるとか言ったのが申し訳なくなる。
音楽の”ジャンル”の探求
ボーカルワーク、いわゆる”デリコ節”の凄さを説明した上で次は、その歌が乗っかる演奏の方にフォーカスしていこう。
まずはLOVE PSYCHEDELICOを語る上で外せないのがルーツミュージックからの影響だろう。
ルーツミュージックといえばその名のとおり、ロックンロールやブルースなど現在のポピュラー音楽の元となった音楽であり、
曲の随所にそれらのアーティストへのリスペクトがみられる。
例えばこの曲
LOVE PSYCHEDELICO - LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~
とりあえずタイトルのLADY MADONNNAがビートルズまんまだし、リフもBeatlesのMoneyという曲にそっくりな部分が出てくる。
このルーツミュージックからの影響のおかげか、曲が普遍性を持つことができ、
もはや、一世代前のヒットソングと言っても差し支えないこの曲を、今聴いても全く古臭さを感じない。
あとルーツミュージックまんまの音楽性であるTHE BAWDIESをプロデュースした結果、武道館でのライブを成功させたというというのも凄い。
LOVE PSYCHEDELICOの凄さは今まで誰もやらなかった形でルーツミュージックと様々なジャンルの音楽をミックスしているところである。
例えば初期の方でよく見られたが、ブレイクビーツ。
上の「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」もそうである。
元々ヒップホップがルーツのこのビート、まさかビートルズと掛け合わすとこうなるとは誰も予想しなかっただろう。
そしてR&Bからの影響、
動画がみつからなかったが、ベストにも収録された"All over love"という曲のサビのコーラスの重ね具合あたりが本格的にR&Bしている。
その曲に関してグルーブは完全に黒人だし、R&Bとしても相当クオリティが高い。
最近のアルバムでどんどん増えてきているのが、カントリー。
アメリカの演歌と呼ばれるこのジャンルだが、見事にそのカントリーのダサい部分を他でカバーしつつ曲に取り入れている。
"Beautiful world”あたりはカントリーの要素をいれつつ、曲全体は王道の泣きJ-popにまとめるという信じられないバランスの名曲である。
例を挙げていくと、膨大な数になるのでそろそろ割愛するが、他にはJ-popもそうだし、ガレージロック、ループミュージック系、さらにはデジタル系の音楽やダンスミュージック、
あとブルースからの影響もすごい、ブルースに関しては他ジャンルでは滅多に聴くことのできないスライドギターを曲の随所にとりいれている。
まとめるのが難しいくらいの数のジャンルの音楽をミックスしつつも、
どの曲を聴いてもすぐに「あーデリコの曲だ」となるのは根幹の部分がしっかり固められているからだろう。
いかがだっただろうか。
LOVE PSYCHEDELICOは活動的にも音楽的にも非常に稀有なアーティストである。
これからも日本の音楽を牽引していって欲しい。