サイダーガールと歌い手「ゆりん」邦楽バンドが歌い手出身者で飽和する前兆
目下売り出し中のバンド、サイダーガール。名前くらいは目にしたことがあるんじゃないだろうか。
各種ニュースメディアで取り沙汰されているあたり、プロモーション側からの「売っていきたい」という確固たる意志が見受けられる2016年注目のバンドの一つだ。
売り出され文句としては「正体不明」「炭酸系」などと言われている。いや正体不明ってね、どの業界でもよく聞きますけどね、正体に何か包み隠したい後ろ暗さがない限りはそんな売り出しかたしませんぜ。思えばマンウィズも最初は「正体不明の覆面バンド」とか言われていたよね。
結論を急げば、ボーカルのYurinは歌い手の「ゆりん」だ。「犯人はコイツだー!」みたいな感じで言ったが正直僕も良く知らない。ていうか歌い手自体に詳しくない。なんだよ「歌ってみた」って、「検索妨害してみた」の間違いだろ。
別に著作権がグレーなところを除けば歌い手活動は犯罪歴には該当しないし、何も隠す必要のないことだが、邦楽ロックバンドとして売り出していくにはやはり、ハンデキャップがある。故に「正体不明の炭酸系」とかそういうPRの仕方に落ち着いているワケだ。
そんな歌い手「ゆりん」氏の新ビジネス、サイダーガール。今回はこのバンドについて考えていこう。
バンドとしては優秀
これだけ聴けば、本当にただただ正統派。ウケそうだ。最近正統派なバンドってなかなか芽を出さないなぁなんて思っていたが、これぞまさにといった様相。リードギターが良い仕事している。
歌も歌詞もコンセプトも何もかもハナマル。バンド漫画の主人公がやってそうなバンドだ。そして若い子はそういうバンドが好きだ。
本当に、良い意味で尖り特徴特色がない。しかし未だにこれがウケるとしたら、バンド音楽はアートスクール世代で進化が止まっているということになる。
歌い手 ゆりん
じゃあ曲も確認した所で歌い手としての彼を見てみよう。
わぁ、カラオケだぁ!
出だしからピッチがブレブレで非情にスリリングな仕上がり。あんまり歌の上手くない友達にカラオケの順番が回ってきたときと似た極上の緊張感がたまらない。
声質はすごく良い、と思う。邦楽ロック向きの、若者受けのよさそうな、ボイストレーナーに嫌われそうな、そんな声だ。
歌のピッチや声量なんてものはCDにプレスしちゃえば今日びなんとでもなってしまう。そう思えば障害でもなんでもないかもしれないが、僕のイジワルな部分が
「果たしてその歌声、生演奏のドラムとアンプの爆音の中で通るかな…?」
とささやいてくる。同じ歌でもカラオケとライブじゃ必要とされる技量がまるで違う。もうすぐ春がくる。カラオケで褒められて勘違いした子が軽音部に入部して現実を思い知る季節が、またやってくる。そして彼らは決まって歌い手かフォークシンガーになるのだ。
売り出し方は上手い
先ほど述べたように、音楽性に関してはもうバリバリ売れてしまえる出来だ。ジャケットもサブカルイラストレーターの急先鋒「かとうれい」くん作。こんな絵ね、邦楽ロックが好きな女子中高校が好きにならないわけないでしょう。
ハチャメチャに可愛い。かとうれいくんに任せた采配は完璧と言える。
しかし一つね、懸念があるとすれば。このサイトではお馴染み、ルックスの問題だ。見てみよう。
うむ、服のセンスがニコニコ動画。サルエルパンツと靴下の赤黒が極めてスリリング。あんまり私服がおしゃれじゃない友達がファッションに目覚め始めた時と似た極上の緊張感だ…
あと手痛いのが顔面を出さないということ。もう化粧でもなにしてもいいから出せ。スタッフ、あとは顔面だなんとかしろ。
覆面系バンドは「そういうキャラ」で済むし、Amazarashiみたいな音楽性に特徴が強いバンドは邦楽ロックという同族意識やアイドル性で売ってないので顔面を出さなくても頑張れる。
しかし邦楽ロックは本当にアイドル性の強いジャンルだ。顔面を出さないなんて選択肢は、ない。安心して欲しい、今売れているバンドマンだって良く見りゃそんなイケメンじゃない。臆さず顔を出すべきだ。
顔面は隠せば隠すほど「良いもの」としてファンに妄想されてしまう。いざ顔面を出してライブした時にあんまりに落差が酷いと、ゲンナリされてしまいことだろう。
振り返ればこの数年で、邦楽ロックにニコニコ動画は急接近した。例を挙げる気にならないほど歌い手やボカロP出身のバンド・ソロシンガーが生まれた。
もしかしたら1からバンドを組んで狭いライブハウスからコツコツバンド活動を頑張る時代じゃないのかもしれない。
サイダーガールの今後が、きっとそのままその答えになるんだろう。