「エモい」って言葉の語源知ってる?Sunny day real estate
みなさんは「エモい」という言葉を聴いたことがあるだろうか?
「エモい」はいわゆる若者言葉の一つで、2010年代以降に爆誕した「ブヒれる・バブみ・ドラゲナい」のようなスラングの中の一つである。
元々を辿ると音楽ジャンルの”エモ”の「エモらしさがある」という意味であった。元々の意味では結構前から使われていたが2010年以降に語彙がクチャクチャになってきた。
その後言葉が人々の間を渡るにつれ、意味が拡大解釈され、「エモらしさがある」から「抒情的である」になり、今では「郷愁感があって感情を動かされる」という意味になり、最終的には「マジ深え」くらいの意味になった。
余談だが、オジサン世代にも一度「エモい」という言葉が流行ったらしいのだが、その当時は「エロい+キモい」という意味だったらしい。オジサン達と話すときに不用意にエモいなんていうと、アンジャッシュ状態になりかねない。注意。
さて、そんな言葉まで生み出した”エモ”というジャンル、現代の音楽を語る際には触れずにはいられないほどの影響を与えている。
今や国民的バンドになったONE OK ROCKも思いっきりエモの流れを汲んだ音楽性であるし、むしろ言ってしまえばこの時代に生まれた音楽で多かれ少なかれエモの影響を受けていないものを見つけるほうが難しいといった具合だ。
エモのジャンルの成立にはいくつかのバンドが関わっているが、今回はその中でも重要な役割を果たしたバンド、Sunny day real estateの紹介である。
ロックが好きならば是非とも知っていてほしいバンドであるし、Sunny day real estateを知らずに「エモい」という言葉を使うのは、なんJを知らないのに「草」「ンゴ」という大学生のようなものである。素晴らしいバンドだ。今回はぜひとも「エモい」の再認識とともに彼らを憶えて帰ってほしい。
青臭くて感情的でエモいファーストアルバム”Diary”
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Sunny day real estateは1992年にアメリカ、シアトルにて結成される。
1992年はちょうどニルヴァーナのネヴァーマインドがリリースされた直後の時代感である。
またシアトルはアメリカの左上の方に位置する街で、どっちかというと全体的に肌寒い気候で大体いつも霧雨みたいなのが降っていて街の周りはうっそうとした森林に覆われている。街がもうエモい。
この時代感や街の雰囲気やらは多かれ少なかれアーティストに影響を与えており、Sunny day real estateも意識して聞くとそういったものの影響下にあることがわかるだろう。
Sunny Day Real Estate - Seven
彼らのファーストアルバム"Diary"はニルヴァーナやフリートフォクシーズなどを輩出したシアトルの名門のエモいインディーズレーベルSUBPOPからリリースされた。
コチラの曲"seven"はアルバムのリード曲である。エモの歴史はここから始まった。
内気で不器用そうな少年が感情を絞りあげながら歌うスタイルがウケ、アルバム"Diary"はヒットした。
Sunny Day Real Estate - Song About An Angel
コチラがアルバムの中で一番エモい曲。
静かなイントロと不安定なボーカルからディストーションギターでスイッチが入り感情が爆発して涙腺に直撃する。
その後エモが発展していったが、この曲以上に青臭くて切迫したエモさを持つ曲はないだろう。
「エモい」という言葉の意味が変わっていったようにジャンルのエモも変わっていった。
そんなSunny day real estate、世間のエモが変化しているのについていくわけでもなく、あくまで自分たちの音楽を追求していく方向へと進んでいった。
Diaryのあと1枚のアルバムをリリースし、一度解散し、再結成してエモくなってから2枚のアルバムを発表、現在計4枚のアルバムがリリースされている。(その後また解散し、また再結成してまたまた解散している、エッモ。)
ちなみに解散後はドラムとベースがフーファイターズのメンバーになった。ベースは今でも元気にフーファイターズしてる。エモい人事。
わからない人はART-SCHOOLとストレイテナーみたいなものだと思っていただければそれで合ってる。
Diary後、彼らの音楽性はアルバムをリリースする度に変化していったが、ぜひ聞いていただきたいのが、その変化の最終地点、現在リリースされている最新アルバムの"The rising tide”である。
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Sunny Day Real Estate- One
2000年にリリースされたこのアルバムは、現在のエモとは似つかないどころか、彼らが作った元々のエモにすら似てない独特の音楽性になっている。エモい?
改めて聞いてみたが、どう考えても一般ウケの悪そうなサウンドではある。しかし聞き込めば聞き込むほど、その徹底した世界観、完成された音楽性にのめりこんでいく名盤だ。間違いなく買いの一枚。
さてどうだっただろうかSunny day real estate。「エモってワンオクとかSiMじゃないの…?」みたいな人からしたらばエモっぽくないと思ったかもしれない。どう考えたってワンオクとサニーデイが同じジャンルには聞こえないし、時の流れマジエモい。
元々のエモはフガジあたりのポストハードコアバンドや、Sunny day real estate、The get up kidsや「ドドドッド童貞ちゃうわ!」で有名なAt The Drive-Inあたりのイメージだったのだが、言葉の「エモい」が「エモらしさがある」から「抒情的である」となり、最終的には「ヤバい」「テンアゲ」になったように、エモとして先代のバンドの音楽性の一部を引き継ぐのを繰り返して全く違う音楽性になっていったというワケだ。
音楽と共に、でも全く別の方向に独自進化を遂げた日本の「エモい」という形容詞、僕が独自に一番違い類語を探してきたところ多分
いとおかし
「いとをかし」を現代語仮名遣いで表記した語。現代語にはない語彙であるため、通例用いられない表記。「をかし」は『枕草子』を中心とした平安時代の古文などで使われる「もののあわれ」を言い表す表現で、「とても趣が深い」などの意味。「いと」は「とても」「非常に」などの意味。
これです。いとをかし。進化の末1200年退化してやがる。
なので「清水寺何回来てもエモいな」とか「今日で大学最後の日だって考えるとクソエモいな」みたいな使われ方をするのだ。意味的には古文の「いとおかし」と殆ど一緒である。紫式部も現代に生まれてたならばツイッターで「秋はマジでクソエモい」とか言うのだろう。
みなさん、エモいとサニーデイ、ちゃんと理解できたかな?なに?わからなかったって?うんうん、それもまたエモいね。
もう好きに使ってくれ。
では今回の記事はこのあたりで。