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2019/05/09

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8bit音楽、現役女子大生にチップチューンの魅力を伝えることはできるのか?

 2016年10月某日、小洒落たカフェにてテーブルをはさみ対峙する二組の男女。壁には申し訳程度のハロウィン要素。先に断っておくが、これは失敗した合コンではない。崇高なる音楽の研究の場である。

 

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 何故この様な事態になったのか、いったいこれは何の会だったのか。順を追って説明していこう。

 写真の会より遡ること数日前、とあるイベント会社さんから一本のメールが届いた。内容は「今度弊社が関わるイベントのプロモーションがしたい」という、よくあるタイプのとても有難みがあるやつだ。さて、問題だったのはその内容である。

 

 少し話が変わる、というかむしろ話の本題に入るのだが、みなさんはチップチューンというジャンルの音楽をご存じだろうか?9割以上の読者の方はご存じないと思う。

 公平公正の天下のウィキペディア大先生からチップチューンとは何ぞやを引用しようと思ったのだが、そのあまりにも公平公正に正確に書き過ぎるスタンスのせいで、逆に意味不明になっていたので、今回はニコニコ大百科の方から説明を引用しよう。

Chiptuneとは、いわゆるファミコンチックなピコピコした音楽のジャンルである。
チップチューン(chiptune) は音楽ジャンルの一種であり、80年代のパーソナルコンピュータや家庭用ゲーム機(主にファミコン、ゲームボーイ等)に搭載されていた音源のような制約の多い音源をあえて用いて制作される音楽、またはそうした音源の音色を意識して作られた一連の音楽を指す。

ニコニコ大百科 - チップチューンより引用

 書いてあるまんまになってしまうが、ファミコンとかのBGMのあのピコピコした音で音楽を作ろうという、これまた大層けったいでマニアックな音楽ジャンルなのである。

 

 勘のいい方ならもうお気づきだと思うが、我々に来たのが「チップチューンのイベントやるんでプロモーションしくよろ!」という指令だったのである。

 はて、どうしたものか。

 個人的には私自身が割とゲーマーな人間であることもあって、チップチューンという音楽には親しみを感じていたことにはいたのだが、いかんせん音楽自体がマニアックすぎる。

 しかもクライアント様、フワッと「普段チップチューンを聴かないような子に知ってもらいたいなあ!」とまでおっしゃられる。それができたらどのジャンルも苦労しねえよ!と言いたいところだったが、その場ではグッと飲み込んだ。でもそうですよねみなさん?

女子大生というソリューション

 クライアント様からの無理難題マターを解決すべく、私が導き出した解決方法がコレ。女子大生。

 男性諸君なら頷いていただけると思うが、とにかく”女子大生”というワード自体がそもそも輝いている。その女子大生に上手くチップチューンの魅力を伝えることができたならばチップチューンのもつそのマニアックという分厚い壁に風穴をブチ開けることができるのではないかという発想である。

 それとまあ、個人的にマジで女子大生にチップチューンを聴かせたらどういう反応をするのか見てみたかったというピュアな動機もある。マカロン噴き出して死ぬんじゃないか。

 ということで改めて今回の企画の趣旨を書くと「女子大生に様々な方法を用いてチップチューンを聴かせ、最終的にチップチューンを好きになってもらうことができるのか」ということになる。

 かくして冒頭のイマイチ盛り上がっていない合コンのように見える珍妙な風景が出来上がったワケである。

 

そして集まった4人

 ということでチップチューンを聴いてもらう女子大生を集めるために当サイトの公式LINE@にて取材協力の募集を掛けたところ「あんまり音楽には詳しくないですが、行ってみたいです!友達と二人で行きます!」というこの企画に超ベストマッチングした二人が集まってくれた。

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 写真向かって右側が応募してくれたアンナちゃん(仮名)普段から当サイトを読んでくださっているそうで、ウチのサイトの記事を読んで2年ぶりにCDを買いました!と嬉しそうに語ってくれた。ありがてえ…!頑張ってサイト運営してきてホントに良かったと思ったよ。一番好きなバンドはワンオクロックだそう。メンバーが5人いた時からのファンらしい。ワンオクの話をすると途端に目がキラキラし始める。今度ワンオクロックを激しく罵る記事でも書こうと決意した。

 そして左側の子がアンナちゃん(仮名)に連れられてきた友達のマリアちゃん(仮名)昨日初めてBASEMENT-TIMESの存在を知りました!特別好きな音楽とかはなくて、強いて言うなら星野源とかBIGBANGが好きかも…みたいな、今回の企画に最適な逸材。これぞ俺たちが思い描く女子大生。

 二人ともチップチューンのチの字も知らないそう。

 

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 それに対し、チップチューンをプレゼンする側、あごひげの男二人。

 右側のあごひげが、今回のことの発端となったイベント「Pico Pico: Impossible」のプロデューサーであり、メインアクトのヒゲドライバー氏。

 チップチューン曲以外のにも結構凄い活動をしている人で、アニメ艦これのエンディングテーマの作曲をしたりとかしている。ちなみに一緒に外を歩いているとき街中で普通に掛かってる曲を指して「コレ僕が作ったんすよ!」って言っていた。マジスゲエ。


ヒゲドライバー - ukigumo

 こちらがヒゲドラ先生のチップチューン代表曲。チップチューンというものがどういうものなのかも併せて一聴していただければと思う。

 そして左側のあごひげが現在この記事を書いている私、谷澤である。ちょっと気張った格好していったら新米の詐欺師みたいな風貌になってしまった。ちなみに生まれてこのかた、合コンというものに一度も行ったことがないのがコンプレックス。

 

1.とりあえず聴かせてみた

 ということで都内某小洒落たカフェに集合し、軽く挨拶を交わしたところで、そもそもどんな音楽を聴かされるかすら知らない女子大生二人に早速チップチューンを聴かせてみた。

 もしかしたら聞いたことがないだけで、聴いてみたら結構好きっていうパターンの可能性も捨てきれんしな。


YMCK - Magical 8Bit Tour

 女子大生とチップチューンとのファーストコンタクトとして選曲したのが、コチラ。チップチューン界で最も有名なアーティストの一つ、YMCKのMagical 8Bit Tour。ピコピコサウンドながら演奏自体はジャズ調という絶妙な組み合わせがクセになる一曲だ。

 チップチューンというジャンル自体が、そもそもボーカルがないインスト曲が多いジャンルではあるのだが、こちらの曲はシッカリボーカルが入っている。Magical 8Bit Tourなんていう曲名も相まってチップチューンで最初に触れる曲としてはベストマッチだろう。

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 女子大生「あ、めっちゃゲームボーイ」「めっちゃポケモン」「ゲームにでてきそう」

 驚きも無ければ感動も無いといった様子。昔女の子とガンダムのプラモデルの展示会に行った時のことを思い出した。「へぇ~こんな世界があるんだぁ(早く帰って月9の録画見たい)」みたいなリアクション。

 私が思ってたよりハッキリと意見を口に出してくれて「BGMっぽいですね…聴き入るというよりかは後ろで流れてるというか」とのこと。なんか最初からすごく痛いところを突かれた気分だ。女子大生、思ったより手ごわいぞ…。

 その後数曲聴かせてみたが、やっぱり同じようなリアクション。彼女が大好きなワンオクロックについて話しているときと同じ表情に持っていければ勝ちだと思っていたが、流石にただ聴かせるだけではダメなようだ。というか普通に聴かせてオッケーだったら今のマニアックなジャンルというポジションに落ち着いていないはずだろう。

 

 聴かせている途中に興味深い質問があって「これってボカロってやつとはまた違うんですか?」と聞かれた。確かにチップチューンとボカロ界隈は文化圏的には遠くはないが、別段近いというわけでもない。割と違うジャンル。しかし、その辺りの界隈のことを知らない人には似たような音楽に聞こえるのだろう。これも実際に女子大生に聴いてもらったからこそわかったことである。なるほど普通に参考になる。

 

2.レトロゲームをプレイさせてから聴かせてみる

 さて、案の定というのもなんだが、やっぱりただ聴かせただけで好きになってもらえるほど甘くはなかった。ということで、用意しておいた次の作戦に移ることにした。

 名付けて「レトロゲーをプレイさせてチップチューンに親しんでもらおう作戦!」

 もはや作戦名が全てを語ってしまっているので説明の必要もなさそうだが、やっぱりチップチューンという音楽とゲームとは切っても切れない存在。レトロゲームで楽しく遊んでいただいた後に、すかさずチップチューンを聴かせることによってチップチューンの魅力が最大限に伝わるのではないだろうか?という作戦である。

 今回用意したゲームは「スーパーマリオブラザーズ3」「ロックマン2 Dr.ワイリーの謎」そして「星のカービィ2」だ。どのゲームもピコピコ時代の名作かつ、BGMの評価の高いゲームばかり。ゲームボーイ実機だと本番で動かなくなる危険性があったので3DSにてバーチャルコンソールでダウンロードしたものをプレイしてもらった。

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 女子大生「え?なにこれ?コレ人なの?ロックマンってなに?

 意気揚々とゲームをプレイさせてみたところで、予想外の問題が発生した。何と今の女子大生はロックマンを知らないらしい。

 アンナちゃん(仮名)の方はお兄さんがいるらしく、今回用意したようなレトロゲーをプレイしたことがあったようなのだが、もう一人のマリアちゃん(仮名)の方はそもそもビデオゲームというやつをあまりプレイしたことがないらしい。

 今の女子大生ならみんなスマホでツムツムとかやってるし、割とゲームへの抵抗もないかと思われたが、予想外にあんまりゲームにのめり込んでくれない。

 結論を言うと「レトロゲーをプレイさせてチップチューンに親しんでもらおう作戦!」どちらかというと失敗した感じのようだ。ゲームをプレイした後にチップチューンを聴かせてもあんまりさっきの「へぇ~」というリアクションには変化がなかった。というかむしろ何回も聴かせ過ぎて若干飽きてるようにも見えた。

 ちなみにヒゲドラ先生には敵の配置に悪意しか感じないヤバゲーム、ロックマン2をプレイしてもらったが開始十秒早速でティウンティウンしてた。過ぎ去ったことを振り返っても仕方がないが、もしもヒゲドラ先生がカッコよくノーミスでエアーマンをブッ倒していたならば彼女らのリアクションもまた違うものになっていたかもしれないと思うと悔しくてたまらない。

 ということでゲーム作戦はダメでした。仕方あるまい、奥の手を使うこととしよう。

 

3.8bitカフェに連れていって聴かせてみた

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 「高校球児の聖地、甲子園」といった具合でチップチューンやレトロゲー界隈にも聖地的なものがある。

 それがこちら、新宿三丁目にある8bitをコンセプトとしたカフェ・バー”8bit cafe"である。

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 店内の様子はご覧の通り。目に見えるもの大体が8bitテイスト。ヒゲドライバー氏も当然のように常連のようで、なんなら常連過ぎて店に「ヒゲドライバー」という名前のカクテルメニューまである始末。

 次の作戦は、この濃厚な8bit空間で楽しく談笑し、8bitやピコピコに親しんでもらった上でチップチューンを聴いてもらおうという作戦である。

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 いよいよマジで合コンじみてきたが、まあよかろう。役得だ。

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 こちらは一見すると初代ファミコンのコントローラーに見えるが、実はファミコン風の見た目をした汎用コントローラー。ヒゲドライバー氏はコレをPCにつないで、音楽用のコントローラーとして使っている。コントローラーのボタンを押すとシンセサイザーが鳴るようにしてある。割と思いっきり仕事道具である。

 コチラは結構ウケがよかった。見た目こそポップだが、プロミュージシャンの演奏実演だからな。

 

 ということでひとしきり遊んで、談笑し、8bit空間にも慣れてもらったところで、リスニングタイム。


スピカの夜 - SPICA

 こちらは現在女優として活動している、島ゆいか(ex.可憐Girl’s)と飯田來麗(ex.さくら学院)による音楽プロジェクト”スピカの夜”の一曲。ヒゲドライバー氏がサウンドプロデュースを手掛けており、今回の企画の発端となったイベント「Pico Pico: Impossible」にも出演する。

 他にも誰もが知る名曲「初めてのチュー」のチップチューンカバーなどなどをチップチューンの魅力を語りながら色々と聞かせてみた。

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 さて結果はと言いうと、素直に言えば、失敗ですねこれ。

 あの手この手を駆使して色々聴かせてみたものの、全然反応が変わらない。何を聴かせたところで、嬉しそうにワンオクロックについて語る時の顔とはほど遠い表情をしてしまう。

 しばらくして、アンナちゃん(仮名)が少し申し訳なさそうに語ってくれた。

 『私たちはお二人(ヒゲドライバー・谷澤)と違って、小さいころにピコピコサウンドのゲームと殆ど触れてきてないんですね。チップチューンの魅力って「昔ゲームをやってた懐かしさ」みたいなのが大事な要素だと思うんですよ。私たちにとってはピコピコサウンドは逆に真新しく聞こえてしまうんですよ。そういうのもあって、中々シックリこないんだと思います』とのこと。

 チップチューン作っている本人が目の前にいたりと、正直気を遣ってしまいそうなシチュエーションであるにも関わらずハッキリと意見を言ってくれた。見た目は天使でも中身は鬼。ヒゲドライバーさんからはマリオの死んだときの音が今にも聴こえてきそうだった。

 

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(確信を突かれ、ショックを隠し切れない我々二人)

 確かに言われてみれば、我々がチップチューンを聴いてテンションが上がるのも、小さいころにピコピコゲームに親しんできたという下地があってこそなのかもしれない。逆に言えば小さいころゲームをやっていなかった人にはチップチューンというやつはなかなか魅力が伝わりにくい音楽ということなのだろう。

 上のリアクションがありのままである。女子大生にチップチューンの魅力を伝えるのは非常に難しかった。

 ダメだったものは仕方ない。失敗です。撤収!もう俺たちだけで懐かしんで楽しんでるからいいわい!チクショウ。

 

Pico Pico: Impossibleというイベント

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【公演日時】2016年11月17日(木) 開場18:00 / 開演 18:30
【会場】渋谷clubasia
【出演アーティスト】ヒゲドライバー、スピカの夜、MC8bit、黒魔、suguruka
【チケット代】オールスタンディング ¥4,000(税込) 当日¥4,500(税込) 
入場時ドリンク代¥500別途 ※限定缶バッチ付き

Pico Pico: Impossibleオフィシャルサイト

 さて、女子大生にチップチューンを聴かせる企画は最終的に成功率45%といった具合に終わってしまったが、やはり今回の敗因は彼女らが語ってくれた「小さいころにピコピコゲームをやったかどうか」というところだろう。

 裏を返せば小さなころにゲームばかりしていた人はチップチューンにハマる素質があるということである。タイトルの女子大生という言葉につられて記事をみて、初めてチップチューンという音楽に触れた方も少なくないんじゃないだろうか?

 これを機にチップチューンって良いなって思った方は是非、Pico Pico: Impossibleに足を運んでみてはいかがだろうか。一応イベント自体も「新しいチップチューンの形や、楽しみ方の紹介」というテーマになっており、この記事でチップチューンを知った人にはうってつけのイベントともいえる。

 出演者も上記の「アイドル×8bit」のスピカの夜、そして元キックザ…の関係のあるらしいMC8bitなどなど、大きくチップチューンを枠としてとらえ、バリエーション豊かなアーティストが出演する。

 ということで最後はヒゲドライバー先生の『「Pico Pico: Impossible(ピコ ピコ:インポッシブル)」開催のお知らせ』動画でお別れしよう。

 ではまた!

 

もう一つ告知

 さて、オチのつけづらい結果に終わった企画を無理やりヒゲドラ先生の動画でシメた後にまだ記事を続けるのはちょっとしんどいのだが、クライアント様のご要望で最後にもう一つだけ関係ない告知を。吹っ切れすぎてて面白いから掲載。

 多分みなさんテレビ等で知っていると思うマジシャンのセロ氏が今度来日し、ライブ講演を行うそうだ。マジでこの記事に全く関係ない。

 もしも「え、セロ来日すんの?知らんかった!行く!」という人がいれば是非足を運んでほしい。

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【公演日時】
①2016 年11 ⽉25 ⽇(⾦) 開場18:30 / 開演19:00
②2016 年11 ⽉26 ⽇(⼟) <昼公演>開場12:30 / 開演13:00 <夜公演>開場17:30 / 開演18:00
③2016 年11 ⽉27 ⽇(⽇) 開場12:30 / 開演13:00
【会場】品川ステラボール
【チケット料⾦】 全席指定 ¥9,500(税込) ミートアンドグリート付き ¥15,000(税込)
※未就学児⼊場不可 ※ミートアンドグリートは公演後に予定しております。

セロ CYRIL MAGIC UNPLUGGED公演詳細

 それでは。

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