エイプリルフールだけど嘘は決してつかないバンド ウソツキ
「王道うたものバンド」
今年に入り、そんな見出しでレコードショップの店頭で彼らの名前を目にした人もいるのではなかろうか?
祝4/1!ということでこの機体のニューカマーを紹介しよう。
昨年、2014年デビューした嘘は決してつかないバンド「ウソツキ」だ。
あたりまえに素晴らしい歌をうたうバンド
千葉出身、2011年結成の4人組ロックバンド。
高校生の頃から作曲を始めたというボーカル竹田を中心に結成した爽やかでちょっぴりドリーミーなギターロックバンドである。
正直に言おう、近年稀に見る下北ギターロック直系さだ。
一瞬バンプなんじゃなかろうかと錯覚すらするギターロック・オブ・ギターロック感。
新人がこのクオリティ、正直言ってえげつない。
昨年発売のデビューミニアルバムのリード曲「金星人に恋をした」 。
構成や肌触りはギターロックなのだが、聴きやすさのレベルが凄まじいのがおわかりいただけただろうか?
聴く者に一切の不快感を与えずに、ツルツルっと耳に入り込んでくる音と声。
美しいコーラスワークスで厚みを出し、滑らかに滑るようなギターの音色で淡い感情に揺さぶりをかけてくる。
この曲が、まだミニアルバムを2枚出した、ホントのホントの新人バンドの曲なのである。
この曲以外も、ダンサブルなビートからバラード調まで、感情を絶妙に擽る塩梅のビートをうまく出し引きしながら、エフェクトや弾き方を工夫し、効果音のような音色を奏でたりと、非常に巧みな構成でシンプル良いメロディをビッグチューンに昇華させている。
ベタ褒めはあまり良くないかもしれないが、良く出来た新人である。
どこらへんがウソツキなの?
「ウソツキ」
さて、それではこの不思議なバンド名について、少し考察してみよう。
極論、音楽なんてほとんどが嘘である。
リアルだけを追い求めても、表現には限界があり、激しすぎる自己主張はともすれば嫌悪感を伴う場合もある。
そう考えると、従来シンガーなんて誰だってウソツキじゃなきゃいけない。
モノクロの僕の世界に フルカラーの君は誰だい
”金星人に恋をした”
幻想的な歌詞だ。
ドリーミーで非常に中二的な言葉のチョイスだが、だからこそキュンキュンする。
しかし、彼らは軽やかにその上のファンタジーを発信している。
天の川降り間違えないように 慎重に慎重に駅を数えてく
代々木上原で乗り継ぎしたら キミに花を買っていこう
”新木場発、銀河鉄道”
ファンタジーに・・・「代々木上原」!!??
虚構の表現に、一瞬にしてリアルが土足で踏み込んできた。
「池袋ウェストゲートパーク」や「木更津キャッツアイ」といったクドカンドラマのような現実とファンタジーの同居する楽曲である。
焦点を当てたいことばを異質的に浮かび上がらせる高度な文学的手法である。
それはさながらスピッツのような・・・そんな雰囲気の世界観の歌詞である。
例えば僕と君とみんなと 世界中の人が信じあうことが出来て
みんなでチョキを出したとしよう そしたら ほら みんなピースしてる
”ピースする”正解はなくていいぜ 元々そこにはないぜ
自分の中で作り上げればいいと思うんだ
”京葉線SOL OUT”
そんなひねくれたファンタジーと同じぐらい嘘をついてなきゃやってらんないのがメッセージ性が強い上記のような楽曲だ。
正論、妄想、願望。
正直に、言葉にできる人なんてほとんどいないだろう。
だから、バンドが、代わりに代弁する。
言葉を選び、寄り添うように問いかけてる。
『新木場発、銀河鉄道は行く』『金星人に恋をした』『雨降るバス停』『時空間旅行代理時計』
聴く人のことを必死に考え、練に練り上げられた表現を、漢字を並べたてたタイトルで誤魔化す照れ隠し感がちょっぴり若さを感じるが、やっていることは非常に大人な優しさを感じる。
どうせ嘘をつくなら、素敵な嘘の方がいい。
そっちの方向に振り切る決意表明のバンド名なんじゃなかろうか?
重厚かつ色彩豊かな旋律と美しく澄んだ歌声で作られた最高の嘘で、聴く者をトリップさせる。
そんな癒し系確信犯「ウソツキ」だ。
嘘つきがステージにあがればスターにだってヒーローにだってなれる
曲作り、歌詞の世界観、そして思想も完全に確信犯。
敢えて騙しにかかっていることを宣言し、その通りのハイクオリティーを掲示することは、並大抵のことではない。
ただ単純に聞いて気持ち良くなるだけのポップスはいっぱいある中、若くして違いがある気持ち良さを発信できているのは、きっとそこなのだろう。
バンプ並みのビッグメロディ。
スピッツを彷彿とさせる言い回しと世界観。
そして自らをウソツキだと、言い張る覚悟。
虚構の塊であるロックスターに「なってやるんだ!」という意思表明に感じるバンド名。
突き通して欲しい、その嘘。
嘘だと思って、今から聴いておいて、何年後か自慢してもらいたい。
稀代のロックスターの嘘のつき始めを聴いていたことを。
最後にひとつだけ・・・
・・・彼、きっとあだ名は『ブースカ』だったはずです。
多分。
いや、絶対。
・・・ごめんなさい、嘘です。
素晴らしい音楽を、素晴らしい日常に。
Let’s sing A song 4 ever.