メロコア嫌いから見たメロコアバンド04 Limited Sazabys
メロコア王国名古屋発、フォーリミこと04 Limited Sazabysがメキメキと頭角を現し、今年頭にコロンビアミュージックよりメジャーデビュー。今やメロコア界の急先鋒として界隈で最も勢いがあるバンドの一つとして認められつつある彼らだ。
とまあここまではよく言われている話であり、流動激しいメロコア界にありがちな打ち上げ花火…かと思いきや何だか様子が違うようだ。
ややもしたらハイスタ・エルレ(エルレはメロコアじゃないにしろ)のように、フォーリミも全国にメロコアキッズを氾濫させた一大バンドの一つとなりえるのではないだろうか。
04 Limited Sazabysはメロコアキングダムの再興を実現できるバンドかもしれない。
引っ込みがつかなくなる前に断っておきたいのだが、筆者は「メロコア」という音楽ジャンルがあまり得意でないし、詳しくもない。学生時代に一通り有名所を聴いてみたがOff Springと初期Husking Beeぐらいしか手元に残っていない。ディッキーズもバンズも履いたことがない。あ、でもスカダンスはできる。
2ビートとレスポールのシンコペーション、というキッズ以外にはなかなか耳に馴染まぬオヤクソクがあるので、どうしてもそればかりに気を取られ細部にまで目が届かず「ああ、声が若いハイスタだ」「速いハイスタだ」「リードギターがいるハイスタだ」ぐらいの感想しか持てないのである。
キッズやキッズだったアダルトのみなさんには俄かに信じがたいだろうが、きっとメロコアが得意じゃない人はみんなそうだと思う。好きじゃない人がシューゲイザーを聴いて「ははん、マイブラ」となるのと同じだ。人間の耳って不思議だね。
本来はメロコアに造詣の深いはとさんがメロコア近辺の音楽について書くことが多いのだが(参考:日本のメロコアから『売れる』バンドを考える 前編)今回はメロコアが好きじゃない人視点で04 Limited Sazabysについて考えたい。
なんか様子が違う
地元が近いので名前を耳にする機会は多々あり、たしかこの曲で数年前既に彼らとの邂逅を果たしている。が、上記の通りどのメロコアバンドを聴いても同じに聴こえてしまう奇病にかかっているので
「Ken Yokoyama声高くなった?」
と思ったがよくよく聴いてみると別のバンドらしい。フォーリミと言うそうだ。
「これは売れる!ヤバい!エモい!」
と息巻く友人がフォーリミよりもデカい声でアツく説明してくれたのだが、70のジジイになってプレステ8のコントローラーを孫から手渡されたかのようにまったくもって何が何だかだった。「これ、かっこいいんだ…」と時代に置いていかれたような錯覚に陥ったまま僕のフォーリミ初体験は終わった。
それから数年後、フォーリミという単語をすっかり忘れかけていた頃に、居酒屋の有線で「ん、この声の高いハイスタ…」と聞き覚えのある音楽が聴こえてきたので顔をしかめているとバンド仲間の友人に「04 limited sazabysだよ」と言われ「アアアアア~!フォーリミ~!!」と数年越しの再会を果たした。
売れてたんだ、フォーリミ。と最近の楽曲を漁ってみるとちょっとした違和感を覚えた。
僕の知っているメロコア打ち上げ花火と違うぞ…?
売れたメロコアバンドはそれで終わらない為に、行き詰ったメロコアバンドは個性獲得の為に何らかの形でメロコアから脱却しようとしたり、語弊を恐れぬ言い方をすれば余分な要素を付け加えたりして失敗する傾向にあるのだが、フォーリミは安直な横道ではなくメロコア/パンクを彼ら流に昇華させてる。
リードギターのオクターブと甲高い少年声とそのメロディの乗せ方がメロコアを聴く上で敷居となるメロコアくささをかなり緩和している。ていうかこのサビのメロの乗せ方はどのジャンルでも聴いたことがない。
(あれ、なんでMVにピエール中野が…?)
ファン層も他のメロコアバンドと大きく異なっている。メロコアキッズと言えば「KANA-BOONとかシャラくせえ。サークルモッシュでエモくすんぞコラ」というような人が多く、ぼんやりと売れ線邦楽ロック界隈と住み分けがなされているが、フォーリミのファンにはその両者が介在しているように思える。ここ最近チラホラとフォーリミの名前を耳にするが、口にする人口にする人みな普段メロコアを聴かないという人ばかりである。
あと服装もなんだかちょっとメロコアっぽくない。なんか、スピンズにいそう…
メロコアバンドの人と言えば、タバコ臭くピアスが開いててボタンダウンのシャツかTシャツ短パンでHPと攻撃力が一般の人より高そう(あとMPは低そう)なイメージだが、良く言えばKEYTALKみたいだし、言わなければCHOKICHOKIとかに載ってそうだ。
(参考)
結論として
04 Limited Sazabysは台風の目になりうるのでは、と。
終盤ルックスの話になったがルックスもバンドの成功に間違いなく欠かせない重要な要素だ。他メロコアバンドの「俺らはメロコアだぜ」というイカニモな格好は、キッズたちの仲間意識を煽る面では優秀だが、やはりライト層へ取っつきづらさを与えてしまっていることは否めない。対してフォーリミの4人の若者ウケしそうな風貌は、前髪の重たい女子中高生が彼らの音楽を聴くにあたっての敷居をグッと下げるだろう。
残るメロコア要素も、他の売れ線ロックにない"重さ"として既存のダンスビート音楽に飽き始めたリスナーにウケるんじゃないだろうか。このままきっかけが重なり人気が大爆発し人気が人気を呼ぶようなスターバンドになれれば、またエルレのようにメロコアに足を突っ込む間口として機能し、キッズ量産・メロコア王国の復権もありうるかもしれない。
そうなった日には僕の事を預言者として崇めてくれ。ヨロシク。
No Big Deal Records (2013-05-15)
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