Nirvana × 邦楽ロック = The Predators
その後ろ向きに怒れる姿勢や、強烈に歪んだギターから、カート・コバーンの死後23年経った今もカルト染みた人気を誇る伝説のロックバンド、Nirvana
本国アメリカから遠く離れた日本でもその人気は健在で、今の10代20代そこそこのバンドマンならみな必ずと言っていいほどニルヴァーナ禊を済ませている。なんなら一端のギタリストでSmells like teens spiritのリフを弾けない奴なんていないんじゃないだろうか。
プロ・アマ問わず手広くカバーされるNirvanaだが、Nirvanaの魅力はカートが歌ってこそ、という部分が大きい。リフ・メロディを真似るのは容易だが、それだけではその魅力の半分も表現できやしない。
そう、犬ライダーのように。
そんなニルヴァーナを、邦楽ロック界のプリンス・永遠のブレイク寸前ことthe pillowsより、俺たちのアイドル山中さわおが悪ふざけでカバー(?)しているバンドがある。しかもドラムは元Ellegardenの高橋、ベースはGLAYのJIRO、と全く共通項が見当たらないビッグネーム3人での布陣。本業優先!活動不定期!
今回はそんなユルい邦楽Nirvana、The Predatorsの紹介だ。
ちゃんとさわおしてる
一番好きな曲だ。かっこかわいい。ピロウズとニルヴァーナのいいとこどりだ。
おそらく元ネタはSmells like teens spiritとRape meあたりか。サビのカッティングや、申し訳程度の「ヘーイ」アウトした不思議な単音フレーズなど濃厚なニルヴァーナ臭を感じる。
バンドメンバー募集サイトが「プロ志向・当方ギターボーカル、Nirvanaのようなロックをやりたいです」というような書き込みで溢れていることからわかるように。健康的にネガティブな日本人男子はギターを持つとカートに憧れがち。よってみながこぞってNirvana風の曲を作っては劣化コピーバンドと化すのである。ちなみにNirvanaを踏襲して成功した邦楽ロックバンドはいまだ一つとしてない。
その点このプレデターズは作詞作曲が山中さわおなので、ニルヴァーナに寄せても寄せてもどうしてもピロウズの色が出てしまう。歌詞なんかもう、さわおが一生懸命凶暴な歌詞を書こうとしてかわいくなってる感じが最高。チワワがオオカミのマネして一生懸命吠えているかのようである。
ただのNirvana追っかけバンドでは聴いてる方も退屈なのである。「あ、Nirvana好きなんだな」と思えるような要素と、それを上回る個人の個性が必要なのだ。
でも笑えるほどニルヴァーナ
まんまIn Bloomだ。
THE PREDATORSは、本元の音楽活動の延長線上であるため、メンバーとしては遊び感覚の意識が強い活動であるとされる。
サウンドは、3人が好きなニルヴァーナを意識しており、ライブではカバー曲も演奏している。
この開き直ったカバーっぷり。完全に上記の"遊び"部分だ。サビだけ唐突にさわやかなのが小憎い。
ちなみにカバーはこんな感じ。さわおはBreedがお気に入りらしい。
さわお上手い。むしろラリってない分カートよりさわおの方がしっかり演奏してる。結局丸々コピーでもサワオが歌ってる時点でピロウズ感が抜けない。
逆にニルヴァーナ成分を抜くとリードギターの真鍋を抜いてドラムを重くしたただのピロウズになる。おそるべし。
やはり本業のような気負いなくやれる分二次活動は楽しいのか、ライブ映像やインタビューからは普段よりもっとイキイキした三人が見られる。JIRO良い人っぽいしね。
ピロウズ好きは「ああ、さわお楽しそう…」でハッピーになれるし、ニルヴァーナ好きは「あ、ここニルヴァーナだ!」と細部に溢れた遊び心が嬉しい楽しい。両バンド共に大好きな人にはたまらないバンドだ。
THE PREDATORS、きっと喜ばれるのでニルヴァーナもしくはピロウズ好きの友人に是非教えてあげてくれ。
ポニーキャニオン (2015-08-26)
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