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MONO NO AWAREと言葉のバランス感覚

 同じ内容を口にするにしても言葉を選ぶだけで、印象や響き、さらには発言者の人となりの見え方まで変わってくる。

「アルバイトに向かう。」
「バイト行ってくる。」
「バ。」

 これらは全部同じ意味で通用するし、連絡としてはどれでも問題ないのだけれど、こと歌詞の世界になってくるとそういうわけにもいかない。

 最近のバンドだとMONO NO AWAREが良い例になってくれる。

 内容を極限まで集約すると

「海外っていいよなあ」

 ぐらいの歌だと思うんだけれど、[Alexandros]が同じ内容を歌ったとして"井戸育ち"なんていうタイトルになりましょうか。逆に彼らじゃなきゃStarrrrrrrみたいな曲名は生まれないですし。

 MONO NO AWAREはそういった言葉のバランス感覚をもってメロディ付けて歌うバンドで、上手に韻を踏みながら独特な言い回しで物事を表現する。

 サウンドも、歌詞にぴったり合っていて、大昔の邦楽から引っ張ってきた音色を今風にアレンジしたような、気取らないかわいい感じ。

 音だけで言えばこういうバンド、インディーズ界隈の奥地を探せばいなくはないんだけれど、言葉選びから徹底できてるバンドは数少ない。

 

 そもそも、歌詞のテーマにこういった何気ないことを選定すること自体が異質だ。

 普通、歌われる内容というのは恋愛のことか、人生哲学かの二つに大別される。だいたいね。で、売れるのは恋愛詞。ポジティブに言ったり後悔で歌ったり何か途方もないものに例えたりするけれど結局言ってることに「君が好き」以上の連絡はない。

 それを悪いとは思わないし、そういう歌も好きだけれど、MONO NO AWAREみたく、何でもない内容を曲のテーマに据えるバンドは珍しいなと、単純に思うのだ。

 話は冒頭に戻る。言葉のバランス感覚かなぜ大事か?それは大半のバンドが恋愛詞もしくは人生哲学について歌う為、似たような言語感覚で歌詞を書くとだいたいおんなじような歌詞に成り上がるためだ。

 そこから脱却するために、あれこれ人は手を尽くすのだけれど、結局歌詞から意味を取り除いて全く意図不明のものになったり、または極度に露骨になったり、そういうものになりがちだなと最近のバンドに対しては思っている。

 MONO NO AWAREがこういった「飯がうまい」程度の内容で詩的に歌えるのは間違いなく稀有な才能だ。

 

 そんな彼らが、ついに"東京"という曲を出した。東京、ソングタイトルの墓場である。いままで幾多のバンドが「手詰まり」と言わんばかりにこの曲名に行きついたか。また、東京という曲名の重みに耐えきれず曲名の下敷きになったことか。

 彼らの場合はよくある「大都会!思いの集まる場所!」みたいな話ではなく、八丈島(知らない人の為に補足すると、都内です)出身ということで、内容も「故郷の思い出」ぐらいのカジュアルなものにとどまっている。

 

 以前"to(gen)kyo"という曲(街へ は仮タイトルらしい)も発表していた。出身地ということで思い入れもあるようだし、逆に、彼らにとって特別な意味はないらしい。

 歌詞は読解する楽しみもあると思う。あまり自分の勝手な考えをここで押し付けてもと思うので、残りはみなさん楽しみながら聴き読み解いてくれればと思います。

 それでは。

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