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宇多田の恋人とかそういうのはどうでもいいからちゃんと小袋成彬の音楽を聴いてみて欲しい

 ミュージシャンの人生って、世への出てきかたにかなり影響されると思うんですよね。

 例えば米津玄師とか。今でこそまさに国民的な受け入れられ方をしていますが、出てきた当初、本名で曲をリリースした当時はまだ”ボカロPの人”という見られ方をされることが多くて、いわゆるバンド音楽が好きな層とかからは別の界隈、みたいな雰囲気がありました。

 他にはライブハウスでたたき上げで名前を上げたバンドなら、同業者からの支持が分厚かったりとか。インターネット発だと売れる時は凄く売れるけど、落ち目がくると急にファンがいなくなったりとか。出てきかた一つで客層から寿命、伸び方、全部が変わると思うんですよね。

 そう思うと今回の記事の小袋成彬はホントに特殊な出てきかたをしたなと思っていて。この人の場合はライブハウスたたき上げとかボカロとか、そういうのじゃなくて、出てくる元が完全に宇多田ヒカル。


宇多田ヒカル - ともだち with 小袋成彬

 最初は宇多田ヒカルのアルバムに客演として参加したところから。椎名林檎とKOHHはわかっても小袋成彬って名前は聴いたことないなって人が多かったと思います。

 その後しばらく間をおいて宇多田ヒカルのプロデュースでデビューするとのアナウンスがされ、この前の宇多田の離婚報道の流れで「宇多田の新しい恋人なんじゃないか」という噂が流れて。

 一応それよりも前にN.O.R.K.というユニットで活動していたけど、割とコアな感じだったし、今彼の名前を知っている人はほぼほぼ宇多田ヒカルからの流れのはず。

 一連の流れで、今からデビューの新人にしては相当な知名度を獲得できたと思うんですが、どうしてもその出てきかた的に”宇多田のツレ”くらいに思ってちゃんと聞いてない人が多いんじゃないかと思うわけです。音楽性も割ととっつきづらいところがあるので、ミュージシャンズミュージシャンみたいな、その道の人には評価されるけど自分には関係のない音楽だって捉えてる人が少なくないんじゃないかと。僕はホントにめちゃくちゃ良い音楽だと思うので、それではもったいないなと。

 というわけで今回は僭越ながら彼の音楽の魅力について紹介できればと思います。

とっつきづらい音楽だけど


小袋成彬 - Selfish

 こちらが小袋成彬のデビューアルバムのリード曲。

 こういうときって大体「まずは1回聴いてみてください」って書くのがベタなんですが、今回は2回聞いて欲しいです。

 この前朝の情報番組に彼が出演してこの曲のライブをしてたんですが、コメンテーターが全員「良い声でしたねー」って、料理食べて”この料理味がしますね!”みたいなコメントをしていて。多分AメロBメロサビみたいなJ-popのフォーマットに乗っかってない上にリズムトラックもほとんどなしの特殊タイプの曲なので、一度聞いただけだと聴き方がわからないんじゃないかと思うんですよね。歌詞も「もう君はわからなくていい」だし。

 そういう意味で2回聞いてもらいたいなと。2回聞くと良さがわかるというか、どういう風に聴けばいいのかわかるはず。というか僕がそうでした。

 

 個人的には生々しさがあって良い音楽だなと思いました。音数の少なさによるところもあるけど誤魔化さずに歌を聴かせに来てるところとか、どこかトゲがある歌詞の言葉のチョイスとか。その辺りが相まって画面の向こうの音楽じゃないというか。見せなくてもいいような部分まで見えてしまうような赤裸々な音楽だなあと。

 あとは地の音楽力の高さも魅力だなと。繰り返しになるけど、この音の少なさでよく成り立たせたなって思うんですよねホントに。バッキングと歌声と歌詞の全部のバランスを完璧にとっていかないと全然響かない歌になるなと、それこそ並みのミュージシャンがコレをやったら制作中の仮歌かなんかに聴こえると思います。

 

売れて欲しい

 売れて欲しいってのは、商業的に稼いで欲しいってことが言いたいわけじゃなくて、この音楽の良さをわかる人が増えて欲しいなっていうことが言いたくて。

 海外だとJames Blakeあたりが似たような音楽性だと思うんですが、めちゃくちゃ売れてて。しかもそういうコアな音楽ファンに人気ってわけじゃなくて普通のリスナーが普通に聴いてるらしいんですよね。なんか聞いた話だと向こうのリア充みたいなのが、女の子といるときにムードを出すために流すとか。

 リア充までみんなに売れて欲しい!ってわけじゃないんですが、多様性があって良いなって思うんですよね。今の日本の音楽シーンは、お金がしんどいせいなのか絶対ハズさない音楽ばかり売られていて、なかなかこういう音楽を聴かれる土壌もなければこういう音楽をやるミュージシャンも少なくて。

 そういう意味では小袋成彬は存在そのものがシーンに一石を投じているなって思うんですよね。割と聴く人を選ぶ音楽なのにメジャーで結構大々的にプロモーションして売り込んでるし。かなりチャレンジングなリリースだなと。でもこういう動きが今の音楽業界には必要なだと思います。

 というわけで「宇多田の~」冠辞なしでも面白いミュージシャンってのが伝わりましたでしょうか。彼のデビューアルバムは今度の4/25にリリースだそうです。めっちゃ楽しみ。

 それでは今回はこのあたりで!

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