女、バンド沼に引きずり込み機こと「おいしくるメロンパン」の商業戦略
こんにちは、2018年。夢眠ねむも引退したというのに未だに黒髪ボブのみなさん!おいしくるメロンパン、聴いてる!?
おいしくるメロンパン、で検索すると公式ページのディスクリプションにこのように書かれている。
透明感のある歌声とソリッドな演奏。甘酸っぱいメロディを奏でる3ピースのギターロックバンド。
こういうね、バンドの紹介文っていうのは毎度のこと本当に本質をとらえていないというか、顧客各位から「こう思われたい!こう、見られたい!」という願望が前に出すぎてバンドの実態に伴ってないものが多すぎる。最近のバンド全員歌声に透明感ある。お前らのな、言う所のなあ、透明感なんてなあ、山下達郎の清流ボイスの前じゃ中国の工業廃水垂れ流してるドブぐらいの透明度ぞ。ああ!?
そういう話じゃない。実際、ボーカルのナカシマ君の歌声は世間一般で言う「透明感ある」ってやつだとおもう。ただ、ここでいう透明感、って何だ?今日筆をとったのはそんな些細なひっかかりから。
透明感。
この系統のボーカルっていうのは一定数いて、そのどれもが必ず、中性的なルックスで歌詞の内容もアンニュイというか、女性的というか。例を出すと例えばこういうの。
それ以前からもあったけど、わかりやすい例で言うと川谷絵音のIndigo la Endの系譜。喉を絞って低音を切った歌い方のボーカルたち。これをどうやら透明感のある歌声と呼ぶらしい。
この系統のバンドの最たる共通点はマジで男のファンがいないこと。ファンの男女比が今年度から共学になったばかりの商業高校もかくやという有り様。ゲスの極み乙女の男ファンはいてもIndigo la Endの男ファンにはあったことないしおいしくるメロンパンやその他この系統に属するバンドのファンに男がいたためしがない。いてもTwitterのアイコンが一眼レフこっちに向けてるヤツ。そういうヤツ。
本来、音だけ切り取れば音楽に女性向けだの男性向けだの、性別によって分かれる好き嫌いはないと思うんです俺は。だのに、なぜ、こんなに性差が出てしまうのか?
おいしくるメロンパンのMVって、サムネイルに必ずナカシマが映ってんですよ。そんでそのほとんどが、顔まで映り込んでる。
ある程度、ルックスを売りにしてるバンドはこういう所徹底していて、このナカシマという男、完全に頭のキレる計算高いスケコマシ野郎なので絶対にわかった上で徹底している。
この透明感系バンドの生命線は、歌詞、ルックス、MVの映像感、そしてツイートの内容に至るまであらゆるトータルコーディネイトで女性ファンを楽しませること。これに尽きる。
だからば、最近はバンドマンにスター性だったりSNS上での上手な立ち回りが求められる世の中になってきましたけど、その最前線がここ、透明感系バンド。いわばサブカル複合施設。メンヘラディズニーランド。この手のバンドにとってライブはエレクトリカルパレードぐらいの意味合いしか持たないというか、ネット上での立ち回りが肝要。一挙手一投足でファンを楽しませる。そのためにはツイキャスも定期的に行い
— ナカシマ (@nksm_sea) 2018年9月17日
こういう写真、載せたり
暑くて眩しくて、アスファルトに開いた自分の影を覗き込むとまるで奈落の池だ、焦点はどこまでも落ちてゆく。この身体も引っ張られて、爪先からドボンと飛び込んでしまいそう。
— ナカシマ (@nksm_sea) 2018年7月11日
詩的なツイート、欠かさない。
本来ね、この人は、絶対にこんな人じゃない。絶対に、こんな、人間じゃない。こんな人間は加藤純一のTシャツを着ない。絶対普段サブカルクソ女の姫カット掴んで小田急線の線路に投げ込んでる。趣味はファンの女のリプライをスクショして椎木知仁とデュエルすること(よりキモかった方が勝ちです)邪悪な眼をしている。
このナカシマ(@nksm_sea)という男は本当に頭がキレる。自分という人間がトータルしてファンの為のアミューズメントだという自覚を徹底しており、メスが喜ぶことを全部計算づくでやっている。本当に頭が良い。
この透明感系バンドの中でも、ナカシマ率いるおいしくるメロンパンが頭一つ抜けたのは、この徹底した
「浅野いにおの漫画に出てきそうな繊細で線の細い危うげな少年を演じる」
というキャラクターメイキング。演技力。隙のなさ。ここにある。今一番浅野いにおなのがナカシマ、その人。本来の魂は衛門なのにもかかわらず、ニコ生音楽王ですらその姿勢を崩さなかった。本当に頭がキレる。
そんでもって、おいしくるメロンパンの飛躍に貢献したのが、歌い手のファンの存在。
知略家ナカシマの賢い点は、キャラクターを演じるその演技力だけでなく、バンド音楽のファンと真正面から戦闘するのを避け、歌い手のファンを取り込みにかかった所。
冒頭、歌声について歯に物の詰まったような物言いであーだのこーだの書いたが、つまるところ歌い方が歌い手ライクなのだ。
歌い手ライクって何だと言われると、正統派な声量重視のボーカルじゃなく、アニメ声というか、作ったかわいらしい声で歌うあの感じ、これがあったからこそ歌い手のファンも
「バンドだけどこれは聴ける」
となったんだと。
実際彼のファンのプロフィールを見ると高確率で歌い手の名前が挙がっており、その他のバンドとはちょっと違ったポジショニングでファンを獲得している。YouTuberと仲良くしたりも、そう。
バンド音楽聴いている人間なんてのはもう既に大好きなバンドがいたり、音楽性にこだわりがあったり、自分のファンにするにはガードが堅く、顧客としては難しい人間が多い。
ともすれば歌い手のファンの方が若く、移り気な10代が多く、ここを攻めるのは実に賢い選択。
これで音楽が本当にしょーもないと、本人、事務所、そしてファンのみなさん、全員に落胆するんですけど「それでいいのかよ」と。おいしくるメロンパンの曲って、造りがマジでちゃんとしてるんですよね。
そりゃ、10代女性向けに作られてるので、俺の趣味じゃないけれど、一通り音楽を勉強した人間が作ってる、土台のしっかりしたポップスだし、あえてどクリーンでテンションコード当てまくるギターと、ドタバタドラム、主張しまくるベース。バンドとしても、今までになかった形態で、すげえ面白いと思います。歌詞や歌が致命的に俺の趣味では、ないけど。
本当に、このバンド、バンド名以外にマジで一部も隙がない。絶対に女をバンド沼に引きずり込むぞ、という気概がある。どこが売り出しても絶対売れてたと思う。ただ、ここまで人気がでるとは思わなかったけれど。
このバンドから学ぶべく所多々あります。バンドマンこそ研究してみてはいかがでしょうか。
それでは。