PK shampoo以上のバンドは今年もうこれ以上出てこないから雑誌は燃やしてスマホは折れ
音楽情報誌もそうだし、レコード屋のオススメコーナーとか、音楽ブログとか、最近だとTwitterなんかで誰でも
「このバンド、かっこいいよ!」
と紹介できる世の中になったわけだけれど、そこで毎度おもうのが「お前、本当にそのバンドマジで好きなのか…?」と、いうところ。
いや個人が「これ好き!」って言ってるのはわかるんだけれど、上で挙げた例たち。このサイトもそうですけど、ひと月に何十組もバンドを紹介しているメディアも少なくないわけで、そうなってくるとジャンルもとっ散らかってくるわけだし、誰とは言いませんけどね!商業誌なんかだと普段洋楽とか90年代の邦楽とかについて書いてる40過ぎのライターのおっさんが
「硬派なライブ展開で着実にファンを獲得するヤバいTシャツ屋さんの今回のリリースは、R&Bを取り入れた前衛的な音楽性で"歌詞だけのバンドではない"ことを見事に証明してホニャララ…」
みたいなことをね、言ってるとねさすがに
「お前それ本当か…?母親の墓の前、同じことを言えるのか…?」
と思うと同時に
「ていうか、辛くないか…?」
と思うわけです?思いません?
いやほら、10代の若者がさ、YouTubeのコメント欄に熱心に書き残してるメッセージなんかにはきっと嘘はないしすごく美しいと思いますよ。でもさ、数十年ライター業で飯を食ってきて、追いかけてるバンドのリリースやツアーがあれば個人のブログに丁寧に感想を書いてってしてる人がさ、まるで趣味に即しているとは思えぬ流行りのバンドのレビューを明らかに熱なく書いているのを見ると、同情を禁じ得ない。
というのも、自分にも心当たりはあり、まるで自分が良いとは到底思えないようなバンドを「これいいですよ~」と紹介したことはないにしろ"良い"にももちろん程度が様々あり
「すげえ良い、最高。これを聴かなきゃ鼓膜がかわいそう」
と思うものから
「あ、良い。俺の趣味じゃないけど好きな人はすごい好きそう是非聴いてみて」
といったものまで色々。
そのどれも紹介するからにはしっかり興味を持ってもらえるよう紹介しなければバンドにもファンにも読者にも失礼だ、と様々言葉を尽くして紹介してきたわけなんですけど、そうすると今度は本当に聴いてほしいバンドを紹介するときなんて書けばより多くの人に聴いてもらえるか?みたいな問題にぶち当たりまして。
長々、何を言いたいのか?
このPK shampooってバンドは本当に邦楽史に名を刻むとんでもないバンドだからば誰一人にも聴き逃してほしくない。そういう話です。
Naverまとめとか、バンド紹介botとか、雑誌とか、バンドを探せばレコメンドされるものが膨大に出てくる中で「これも良いしあれも良いぞ」とのべつ幕無し並べられるのに、うんざりしている人もいると思うんです。お前バンド紹介botじゃなくて、陳列botになってるぞと。
本当に良いものって、そんなに数あるもんじゃないし、なんでもかんでも全部聴いてたら人生が何回あっても足りない。わかっていただけますでしょうか。情報は絞られるべきだと。
絞りに絞り切った結果、このバンド、PK shampooだけは本当に臆面の一つもなく紹介できるバンドです。聴けば納得していただけると思います。どうぞ。
好きすぎて、どの曲から紹介したらいいか迷いますが、どの曲どのMVどのライブ、どこを切り取って見せても、見たヤツ全員が一撃でファン。ライブへ直行、Tシャツ購入。となっていたので杞憂でしょう。全部名曲。
音楽には流行りがあって、今トップでやってる大人気バンドの音楽性がインディーズバンドでもやっぱりウケたりするんだけれど、結局名前が残るバンド、ずっと聴かれるバンド、続いていくバンドってそういう消耗品じゃなくって、いつも流行りとは全然違うことをやってきた人間なわけで。
最近の傾向だと音楽はどんどんクリーンになってきていて、アツいライブをするバンドでもカチっと枠にはまった音の中で演奏をしがち。そんでもってテンポ感は早くってわかりやすいメロディがウケるみたい。
それに対してPK shampooの爆音、ノイズ、ローテンポっていう真逆の音楽性。
邦楽洋楽通して、ガシャガシャしたノイズをウリにしてきたバンドはグランジを代表に色々あったけれど、且つバラードで歌のメロディ重視っていうスタイルは今までいなかった。
普通、大体のバンドってルーツがわかりやすく見えるというか「あ、この人きっとアレ好きだな」って、音楽だけじゃなくってアートワークとかパフォーマンスとかでわかるんだけど、PK shampooの場合は
「面白えもん、全部使う」
っていう、ノイズも何由来なのか、歌詞は何を参考にしたのか、ていうか、そのメロディは、何だ?と、出自が一切わからん。本人に訊いても「インターネット」としか答えないし。
俺、カレー思いついた奴すごいと思うんですよ。
例えば料理のメニューを開発するとして、チンジャオロースとか、焼肉とか、オムライスとか、まあ何でもいいんですけど、ああいう普通の料理って
「あー肉を炒めて調味料ぶっかけたらウマいだろうな」
とか、まあ人間の知恵とか想像力の範疇で思いつくと思うんですよ。でもカレーって
「なんかスパイスめっちゃ採れるから良いカンジの分量で原型なくなるまで加熱して液状にしたらウマかった」
つって。インド人は。頭がナマステ。思いつかんそんなもんも、ゼロの概念も。
音楽でも極まれにそういうヤツがいて、大半の人間は
「俺、ラーメン好きだから、これに俺独自のトッピングをしてオリジナルラーメンとして提供するぞ!」
っていう風に、既存ものにアレンジを加えて改良することでオリジナルにしてるケースがほとんどなんですけど、PK shampoo、Voヤマトパンクスの音楽って、まるでカレー。ムチャクチャやっとる。
発明に近い。ノイズに激深いリバーブ、謎のコード感。
なのに、メロディは綺麗だから老若男女問わず誰でも聴けてしまう。確かに新しいことやってる人はいるんだけど、この「誰でも聴ける」っていうところに昇華するのが難しいし珍しい。メチャクチャやろうと思えば誰にでもできるわけで
ヤマトパンクスも個人的にこういうムチャクチャなの誰に見せるでもなく作ってたりしてんだけど(これはこれで好き)バンドはちゃんとポップと呼ばれるところに落とし込んでる。
さっきの京都線という曲、すごい好きなんだけど前身バンドのトラッシュノイズ時代からある曲でそっちのアレンジもとてもナイス。
Bメロで急にビートを落としてサビ連打。
携帯も二度変わったよ
でも忘れられずにいます、まだ
月をふたりぼーっと眺めたりして
恋をしてたころのこと君がいない夜って何してたんだろうな
思い出せないまま夜明け
君がいない夜って何してたんだろうな
思い出せないまま夜明け
凶悪なサビのメロディでこの歌詞歌うのは卑怯。そんなのやったら、かっこいいじゃん。カツカレーの発想。
メロディと言えば
ここのBメロから「ああ」で落ちるのとか、ヤバい。
曲のどこかに必ず必殺のフックメロディを隠していて、確実に殺しにくる。
好きだから、全部貼りますがもう。トラッシュ時代の代表曲で、地元関西では知名度からじゃあり得ない数のバンドがカバーしているヤベー曲「神崎川」なんですけど、これの
“注射器をここに捨てないで”って書かれた張り紙と三ツ矢サイダーの香り
覚えてる、覚えてる
あの神崎川の風
これ。
ここ数年間で人類が生み出してきたメロディの中でも有数のキラーメロディ。天才。
音楽って、音を使ってどれだけ人を感動させたり心地よくされるかっていうコンテンツだと思うんですけど、言葉にも理屈じゃ説明つかない気持ちの良い並び、綺麗な配列があると思っていて俺は、奴の詞はそういうセンスでしか説明のつかない「良い歌詞」っていうのを体現している。ゾッとする並びが一曲にいくつもある。
映像も全部ボーカルのヤマトが作っていて、俺たちの年代の憂さ(FF7のロゴとか、アスキーアートとか)全て詰め込んで情報量で攻めてくる感じ。独特だけど悔しいぐらいかっこよくて、金かけて作られたしっかりした演奏シーンのある良くあるMVなんかよりバンドのMVとしてはずっとずっと良い。人間味が詰まってる。あいつは何でもできやがる。
Tシャツ、適宜よろしく。 pic.twitter.com/ekE3froCVa
— PK shampoo (@PKshampoo) 2018年9月15日
Tシャツもめちゃめちゃ良い。コード進行書いてあるし便利。あいつは何でもできやがる。
そんなヤマトパンクスについてくるメンバーもメンバーで、演奏はもちろん一曲に何回か各パートに
「何、それは?」
っていうフレーズがある。特にギター、福島カイト。彼のリードは本当にギリギリの音階弾いてんだけど何故か気持ちいい。星のイントロとか、ヤバい。
全員、学のある常識はないけど賢いのがピタリ4人揃ってるんだけれど、やっぱり頭の良いやつはつまんないもん作らないし、常識がないやつの音楽はルールがない。
俺が応援したいのは、そういうバンドですし、好きなのも、そういうバンドです。
今年はこれ以上のバンドたぶんもう紹介できないので読者の皆様がた、来年以降にご期待ください。これ以上はありません。ございません。
それでは。