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残田 響一

2015/09/07

記事

ベースとドラムだけのパンクロック

もし、あなたのバンドにギターがいなかったら?

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杉井光の音楽小説「さよならピアノソナタ」(電撃文庫)にも、
「だいたいバンドを結成するとき、ヴォーカル志望が50%、ギター志望が50%、ベース志望とドラム志望がそれぞれ1%」
みたいなネタが書かれていたように記憶しとるのですが(間違ってたらすいません)、何かの都合でギターの都合がつかなくなったら?
 例えばお前さんが周りのギタリストに総スカンされとるとか(いやその状況を改善しろよ、のほうが先かもしれん)

弾けるひと・弾きたいひとを引っ張ってくればいいじゃない、と言われるかも。普通はそれでうまくいく。
ところめがうまくいかないパターンが……超一級のベテランミュージシャン・ベテランバンドでも、あるのだ。

現行体制のフリクション

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今を生きる日本オリジナルパンク伝説「フリクション」のレック(RECK)。
70年代。パンクロックの後、ニューウェイブの風潮が高まるなか、それにアンチする形でニューヨークのアングラ界隈で盛り上がったのが「ノー・ウェイブ」と言われる一派。レックはその当時単身渡米し、そのシーンの熱き息吹をナマで体感。そしてそれを日本に持ち帰り、バッキバキに乾いた「ノー・ウェイブ」の感覚をフリクションで展開。日本アングラロック/パンク界隈の立役者となる。
彼はベーシストとして、自身のバンド・フリクションを長い間牽引してきたのだが、ある時期から沈黙。しかしゼロ年代中期、ギタートリオ編成でフリクションを再開する……が、どうも「うまくいかない」。
あの大友良英をギターとして引っ張ってセッションしてみても、うまくいかない。

これは、ひとえにグルーヴの問題のようだ。
合うひととは合う。合わないひととは合わない。
大友が下手なわけがない(だったら「あまちゃん」の音楽担当になるか?)。
ただ、レックのリズム感覚、グルーヴ感が、孤絶しているから。
そこで、レックは、半ばしょーがなしに中村達也(ドラム)と、「二人きり」で、「ギターレス」のバンドを組むことになるので。
そんな音楽、成立するのか?

  するんだなぁ、これが。

 

レックはベースに、AKAIの「UniBass」(オクターバー。廃版。高い)を二台かませ、様々な歪み系エフェクターやピッチ加工エフェクター(ワーミーとかベースシンセとかワウとか)を駆使し……
要するに、ベースの低音を、ギターの音に加工する「ニセギター」方式でもって、シーンに再び二人きりの「フリクション」として殴りこみをかけたのだ。音楽的に暴力的に!
こんなふうに。


ヒリヒリきますね、このプリミティヴなパンク……ハードコア!
なぜこれが、ここまでぐいぐい我らの肉体を、会場(ハコ)の空気を揺らすのか?
ひとえにそれはグルーヴ感覚が、「ふたり」の間で、完璧に共有されているから。
中村がバッシバッシ叩いては、レックがブイブイとブーミーな「ニセギター」を鳴らして、高域・低域ともに音楽を支える。
レックが、ルーパー(ループ・サンプラー)を使って、フレーズをルーパーにコピーさせ、ループさせ、バッキングをルーパーと中村に「任せて」そこからニセギターで……ベースで「ソロをとる」!

息が合うとは、こういうことを指すっ! 大人のロックの余裕といってもいいかも。緩急を自在につける。
そう……まさにグルーヴィー!

プラスここで重要なのは、音域が「ぶっとく、中域出てる」というのもあるっす。
レックのニセギターは、確かにメタルやパンクのごとき「ギュイイイイイイイン! キュイーン!」じゃない。
だってベースだもん♪
しかし、レックは言う。

「よくわからないけど、ひとつ言えるのは、世のギタリストはもっと下の音も出すべきだよ。仮に音を上下で分けたとき、ドラムとベースは下の方にあって、ギターはその上に薄く乗っかっている感じっていう場合がほとんどだから。ジャカジャカだけ鳴らすんじゃなくて、しっかりボトムも出すべきなんだよ。それと、音っていうのは上下だけじゃなくて前も後ろもある。立体なんだよね。それが解ってくればね、もっと面白くなれる。」
――「THE EFFECTOR BOOK Vol.6」(シンコーミュージック刊)

……武道の達人かいアンタ……そうだよ……これがモノホンのミュージシャンなんですよ……。
音響で一番大事なのはジャンルにもよるが、しかしやはり「中域がグッとくる」こと。
アレなライヴハウスでよくありませんか? 高い音や低い音が聞こえてきても、肝心のメロディーがぐっと身体に響いてこない……伝わってこない、っていうの。
メロディーは、中域にこそある。それをぐっと伝える。
フリクションの場合だったら、レックの殴りつけるような歌と、殴りつけるような「ニセギター音」。
その、フリクション音楽の中核を、聴衆にがしっとぶっつけるためには、たとえ高域の「ギュイイイイン!」感を削ってでも、中域をぐっと出す!

これは昨今のバンドに、何か参考になる・通じるものがありはしないか。
ただ歌えばいいのではない。ただギターをギュイイイイン!とすればいいのではない。内容のある音作りというもの。

Death from above 1979の新譜

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そんな「ニセギター + ドラム」というのは、海外にもいて。
その代表格が、この9月に、再結成後はじめての新譜を出した。
Death from above 1979、カナダのハードコアパンク「デュオ」!
彼らはゼロ年代初期のガレージロック/ロックンロール・リバイバルのムーヴメントの中出てきて、「ベース&シンセサイザー+ドラム」というデュオ編成で、ダンス要素をも含んだハードコアパンクをぶちかますということで、ガレージ/ロックンロールリバイバルの中でも注目されていたバンドであった。……が、アルバム一枚出しただけで解散。
しかし数年前に再結成、この2014年の9月に新譜「フィジカル・ワールド」を上梓。

このバンドに関しては、当「地下室TIMES」でも過去に、「318」氏が記事を書いておられる。

 

このバンドは、記事にもあるとおり、ドラムのセバスチャン・グレインジャーが歌っとる。
大変だなぁ……と人事ながら思うが、新譜で見せる前作をさらに洗練させた、ダンス・ロック(ディスコ・パンク)的なエモ感にも通じる歌いっぷりはいかがか!
なんてったって、ライヴで立ち上がって、ドラムを無視して歌うくらいですからね!(しかもそれがライヴの盛り上がり演出なんだ)

このバンドももちろんフリクションと同じように「グルーヴ優先」+「中域優先」な音作りをする、「この二人じゃなければ、うまくいかなかった」連中。
フリクションと違ったこのバンドの個性は、ハードコア・パンクの激情をそのままにダンス・ビート的な感覚をブチ込むのをためらわない、というところだろう。
そしてベースの歪みっぷりも、レックとは違った手法を使っているので、中域がぐっと出つつもギザギザな攻撃的なディストーションを喰らわす。(シンセサイザーでベース音を変えてから歪ませている、という情報が。事実、この動画では、ベースとシンセの音を繋いでいる部分が垣間見れる)

ま、再結成したといっても、再結成する前となんら演ること変わってないんだが!(笑)
これは、この人たちが再結成する理由……

 

「現在どんなキャリアを積んでも、必ずDeath from above 1979と比較されるから」
……かわいそ。しかし、それだけ、このDeath from above 1979のプリミティヴなビートが、ガツンと世界中を打ったという証拠でもある。
それで、前のような強靭なビートを奏でてくれるのですから、ご馳走。じゅるり。

そう、グルーヴは鳴り止まない……のか? そうなのか?
一度鳴ったら鳴り止まなくても、しかしそれを構築するまでに、さまざまの苦労があり。
この手のバンドの長所にして短所は、「ベース(ニセギター)が、ひとつのフレーズしか弾けない」ということ。
そのフレーズがドラムとビシっと合えばいいのだが、合わなかったら悲惨。
もちろんフリクションやDeath from above 1979は、そんなまねをしませんが、実はこの「ひとつのフレーズしか弾けない」にはミソがあって。
低域(ベース音)が遅れて聞こえる傾向っちゅう。
ニセギター音に比べて。これは音響上仕方ないことなのだが。
だからこそ、世のベーシストは走り気味にベースを弾いてグルーヴを構築するのだが。
でもニセギターとベースの音を同時に鳴らす彼らは、グルーヴを構築するのが普通のバンド(ギター有りバンド)に比べて難しい。

グルーヴは鳴り止まない……?
場合によっては、フリクションが休止するようになったり、Death from above 1979が過去と比較されるように。
それでも、この2バンドは、今日も明日も明後日も、「ベースとドラムだけのパンクロック」を演り続ける ……あとに引けないじゃないですか、ここまでプリミティヴだと。ロックンロールだと!

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