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音楽業界に就職したい人を全力で諦めさせる記事

「このバンドの記事書いてください」とか「俺の曲を聴け」だとか「この曲パクりじゃないすか?」とか、当サイトのメールボックスにはちょくちょく読者のみなさんからのおたよりが届くのだが、中でも多いのがこういうの。

こんばんは。将来音楽関係のレーベルとかレコード会社とかで働きたいという夢があるんですがやっぱり大学は東京近辺じゃないと厳しいですか?もし働けたとしてロックというジャンルに関わりたいと思ったらやっぱりインディーズレーベルなどの小さい会社に行くべきでしょうか?

僕は今大学三年生で来年就活が始まります。
音楽にちょっとでも関わる仕事をしたいと思っているのですがどんな仕事がありますか?また、どうやったら音楽に関わる仕事に就けますか?

音楽が好きで、将来は音楽に関わる仕事をしたくて、思いついたのがライターでしたが、音楽ライターは石左さんの記事を読んで辞めようと思いました。そうなると、音楽に関わりたければレーベルスタッフか自らがバンドマンになるしかないのでしょうか?

 要約すると「音楽が好き…よし!じゃあ音楽業界に就職してサポートする側に回るぞ!でもどうすればいいかわからん!」という感じだろうか。大変甘っちょろくてよろしい!俺がヤフー知恵袋じゃなくてよかったなお前ら!

 結論から申しますと、ホントに音楽業界に就職するのはお勧めしない。食べるの大好きなデブが食肉加工工場で働くのが好きとは限らんのと同じで、音楽が好きでもそれを仕事にするのが向いてるかどうかはまた別の話。

 そもそも動機がズレてんですよ。それこそよくいる意識高い系みたいな感じで。アイツら壊れたファービーみたいに事あるごとに起業したい起業したい!っていうけど、大体そういうヤツが上手くいかないのは手段と目的が入れ替わってからなわけで。どういうことか?説明しましょう。

 本来ならば「何か人の役に立つものを思いついた」とか「こういう仕事がしたいけど、そういう会社がない」みたいな感じの目的が先にあって、それの手段として起業があるわけなんだけど、アイツらの場合は「起業したい」ってのが先にきちゃってるせいで具体性が全くないから、実態がないセミナーみたいなののカモにされたり誰にも需要がないウェブサービスを作っちゃったりするんだよな。誰でもいいからカレシ欲しいって言ってる女子大生と何も変わらん。好きな男がいるから付き合いたい!ならわかるがテメー誰でもいいから付き合いたいなんて失礼なやつと誰が付き合いたいって言うんだ。クリスマスが来るからって焦って付き合ったカップルが長続きするはずがない。落ち着いて考えてみればそんなの上手くいくはずがないのはすぐにわかるはず。

 音楽が好きだから音楽業界に就職したいっていうのは、つまりそういうことなワケです。ただ音楽が好きだから音楽に関わりたいってだけでなんの具体性もないまま就職すると痛い目にあうぞ、という話でございます。少しでも音楽に関わりたいならそのままファンを続けるのが一番。マジで悪いこと言わねえからやめとけ。何も考えずにツッコんで失敗したヤツをクソほど見た。

 日本は相変わらず新卒至上主義から変わってないし、一度しかない新卒カードで大穴に賭ける前にもう一度よく考えて欲しい。

 あとついでに書いとくけど、音楽業界は当然のように給料は安いし安定性も全然ないし、深夜3時に余裕でメール帰ってくるし、生活リズムも休みも全部クチャクチャ。土日休みの友達と遊ぶどころか自分の時間すら確保できるか怪しい。普通に結婚して家庭持ってなんてのもかなりハードルが高いだろう。離職率もハンパじゃないしな。知り合った人の半分は1年以内に「退職のご挨拶」って件名のメールを送ってくる。

 そんでもって将来性も絶望的だ。市場規模だけみても2007年に3,911億円あった市場が2016年には2,457億まで落ちてる。10年で40%オフ。値の下がり方がPCパーツのそれ。しかもこの中にAKBの握手券商法とか混じってるって考えると実態はさらに絶望的。ここから良くなる兆しも全くないしな。書いてて悲しくなってきた。

 とまあここで記事を終わらせてもいいんだけど、このくらいのどっかで聞いたことあるような正論じゃまだ諦めてくれてないと思うので、今回はみなさんの意志を徹底的に粉砕するまで記事を続けたいと思います。

興味のない音楽ばかり扱うと心が死ぬぞ

 突然だが、音楽系のニュースサイト、ナタリーでもロッキンオンでもバークスでもなんでもいいけど開いてみて欲しい。記事を開いて読んでみたいと思った見出しが幾つあっただろうか。大体の人は一つも無いかあっても一つか二つ、多い人でも3~4割が限度じゃないかと思う。

 ここでニュースサイトを開いてもらったのは「お前の音楽の守備範囲は狭いからやめとけ」ということを言いたかったからではない。まあホントに何一つ興味のあるのが見つからない場合は止めた方が良いと思うけど。

 話がズレたが、わざわざニュースを見てもらったのは、音楽業界で働くってことはつまり今しがたニュースサイトを開いて見た、興味のない方の見出し、そっちの方も相手しないといけないぞ、ということを言いたかったのだ。

 これが食べ物の話だったら、苦手な料理でも我慢して食えってなだけで済むが、音楽の場合は残念ながらそういうわけにもいかない。食べ物なら口で咀嚼して胃で消化するだけだが、音楽は耳で聞いて脳の感情的な部分で消化する娯楽なので、ホントに相いれないものは相いれない。ガンジーとかナイチンゲールみたいな偉人でも無理。特になんの訓練も受けていない地下アイドルの歌を4時間聞かせ続けられて笑顔でいられますか?全ての人間は平等に愛せない。でも仕事にするとそれをやらないといけない。一切興味のないものなら心を無にすればいいが、下手に好きなものほど心にくる。お覚悟を。

 

 そしてただでさえ厄介なこの問題がさらに厄介なのは、世代がズレるとさらにキビしくなるところ。

 若いうちはまだ良いのだ。世に送り出される音楽の大半は若い人向けに作られてるから。興味のない音楽だろうと多少良いなって思える部分もあるだろうし、自分の大好きな音楽だって巡ってくる。悲惨なのは年を取った後。

 これはもう自分次第だけど、上手いこと自分の好みを時代に合わせてアップデートできないと、毎日が逆懐メロ状態になる。俺達からしてみれば毎日演歌か昭和歌謡を聴かされているような感じなんだろう。興味のない音楽に囲まれて過ごす地獄。でもそういうオジサンが結構な割合でいる。

 僕がたまに行くライブハウスの店長とかも完全にそれで、見た目から察するに80年代あたりのバンドブームらへんでライブハウスを始めたんだろうけど、時代の流れについていけてないのか、どんな良いバンドがやっててもどんなクソなバンドがやっててもずっとポカーンとした顔で見ている。多分、音楽性も価値観もファッションも全部理解できないのだろう。なんか見てるこっちがツラくなってくる。でも今更別の仕事を始められないだろうし、多分彼は明日も明後日も1年後も10年後も、ずっとポカーンとしてるのだろう。彼は彼で本当に音楽が好きなのに、悲劇だ。

 もちろん上手く自分をアップデートできるオジサンもいる。下手な若者よりも若者に詳しかったりする。でもそれに失敗すると良くてドロップアウト、悪いと興味のない音楽を聴かされ続ける生き地獄が待っている。

 あなたは上手くやっていける自信があるだろうか。

 

とりあえずバイトしてみると良いと思う

 とまあネガティブなことばかり書いてしまったが、少しは建設的なことを。

 ここまで読んでもそれでも音楽業界で働きたいって人、まだいると思う。というかそれくらいの気概がないと絶対に無理だと思うけど。

 そういう人はライブハウスなりCD店なりレーベルの雑用なり、なんでもいいけど一度音楽系のバイトをしてみることを強くお勧めする。

 僕がここで「この仕事はこうで、この仕事はこうでこうだからおススメできない」とかいうことを書くこともできるんだが、それは僕の主観でしかないわけで、僕は営業マンの仕事なんてバカかサイコパスにしか務まらんと思ってるが、それが天職な人もいるわけで、つまり人に聞いた話は本当に役に立たんということ。

 だから自分の目で実際に見てどんな仕事の種類あってどんなことをしているとかを勉強できるバイトを一度やってみると良いと思う。音楽業界のクソなところも良いところも体感できるし、自分に向いているか向いてないかよくわかるだろう。動機ややりたいこともかなり具体的になるはず。

 貴重な時間をたった1000円程度で切り売りするわけだから、折角なら身になるものをしてほしいと思う。

 僕も学生時代ライブハウスでバイトして色々思い知ったクチで。先ほどの興味のない音楽のくだりも、その時こってり味わった話だ。

 ちなみにライブハウスの場合、興味のないジャンルの音楽とか意味わからんアイドルならまだマシで、僕がバイトしてたところは公演が埋まらないからか、プロレスとか開催したりしてて。一番最初は物珍しさでちょっと楽しかったけど、2回目以降は普通に興味ないしな。僕はその時の蛍光灯デスマッチとゴキブリデスマッチで飛び散った破片を掃除している時に心の何かが折れてバイトをやめました。

 ということで、みなさん心は折れましたでしょうか。

 それでも心は折れないし、具体的なビジョンがあるって人は是非音楽業界に入って頑張ってほしいなと思いますホントに。頭の固い時代遅れのオッサンとかが沢山いるだろうけど、それに負けずこの絶望的な音楽業界を楽しい方向に変えていってほしい。お願いします。

 では今回はこのあたりで。

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