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Hi-STANDARDの新曲、全然よくない

「今日ツタヤ行ったらさ、ハイスタの新譜が売ってたんだよ!!」

 席に着くと、友人である草谷くんは鼻息荒く話し始めた。そのCDの梱包を開けるとその鼻息は一層荒くなった。

「打ち合わせの前に悪いけど、ちょっともう今聴いていい!?」

 僕が返事をする前にCDは彼のラップトップにズブズブと飲み込まれていた。

「うわあ!ハイスタだ!本当にハイスタだ!」

 

 草谷くんは僕の一つ上、26才でゴリゴリのハードコア畑育ち。身長は180cmを越え、不精髭を生やし癖毛を頭頂部で束ねたかなりの強面だ。そんな彼が、ハイスタンダードの再始動に子供のように喜び飛び上がっていた。訊くに、思い出も思い入れもあるらしい。バンドの動向一つに心から一喜一憂する彼は本当に音楽が好きなんだろう。きっと彼だけでなく、日本中のファンたちが年齢も時間も超えてみんなで大騒ぎしているんだろう。その有様が心底素敵なことだと僕は思った。

 が、それと同時にもう一つ別の感想が頭に思い浮かんだ。

「これ、ハイスタじゃなくても聴くのかみんな…?」

 無粋、ここに極まれり。夏祭り当日に降る大雨のような意見。しかし僕は一リスナーとして思ってしまったのだ。だし、心のどこかで一瞬同じ疑問が過ったファンもいなくはないはず。そして、それを言わないのは不誠実なんじゃないかとも思ってしまった。

 先に言っておきたい。今回の話、無粋です。しかし思った以上は黙っているのも不誠実かと思い、今回筆をとった次第だ。

 僕はハイスタを聴いて育っていない。音楽は好きだが、違う区域で育った音楽好きだ。そういう人間が聴いたときの感想として受け止めてくれたらいい。視点の多様性として楽しんでほしい。それでは。

曲が良くない

 草谷くんがぴょんぴょん飛び跳ねて喜んで聴いている目の前で、僕は非常に心苦しい気持ちに襲われていた。曲全然良くないじゃん、と。

 ハイスタを聴いて育っていないとは言ったが、人並みに聴いたことはある。メロコア自体に詳しくないだけで、聴けば「かっけー!」ってなるしジェネヘとかオフスプとか、好きなメロコアバンドもいくつかある。初めてステイゴールドを先輩に聴かされた時「普段聴かないやつだけどかっけー!」となったおぼえがあるし、僕の中でのハイスタ像はずっとそのまま。MAKING THE ROADが僕にとってのハイスタだ。

 

 しかし今目の前で鳴っているハイスタに「かっけー!」という気持ちが湧いてこなかった。湧いてこないものは仕方がない。人間それぞれ好みもある。「なんでかっけー!って思わねえんだよ死ね!!」みたいなこと言われても困る。僕にはこれ、全然かっこいいと思えない。

 家に帰ってMAIKING THE ROADを聴いたが、これには「かっけー!」がやっぱり湧いてきた。英語の発音が終わってる。が、ここに日本のメロコアが完成して、ずっと誰も彼らを越えられなかったのも納得が行くかっこよさ。かっこいい。

 昨日の記事で草谷くんは

ノリで言うと、ウォルトディズニーが急に死者蘇生して「何がVRじゃ。90分アニメ作ってきたぞ、見ろ」って言ってきた感じ。

 と言っていたが、その90分アニメがディズニーピクサー制作だったような「何か違う」感。

 仮に、この曲をいま出てきたメロコアバンドが全く同じ音で鳴らしても「劣化ハイスタンダードじゃん」で一蹴されるはずだ。ハイスタが大好きであればあるほど辛辣な言葉でそいつらを拒絶するだろう。「ハイスタみたいでかっこいいね!」なんてきっと、言わないでしょう。僕ならそうだ。

 

音楽は曲だけじゃないとして

 メチャクチャシビアな人は「音楽は曲がすべて」とまで言ったりもするが、僕はそうじゃないと思っている。なんのバイアスもなしに曲だけで判断するなんて、ちょっと無理だ。僕ら人間だもん。

 この盛り上がりはHi-STANDARDの今までの紆余曲折があり、それを踏まえてこのゲリラリリース!再始動!というドラマありきで世間が「かっけえ!!」と沸いているわけで。それに目頭がアツくなる感じもわかる。

 そしてそれを踏まえた上での今回のリリース。歌詞性。音楽性。そういうのを全部ひっくるめたときに「かっけえ!!」というトータルでの作品とすれば、そりゃもう最高でしょう。さっきとは逆に、ハイスタのファンであればあるほどその感動は膨れ上がるはずだ。何年待ってたと思ってんだ!という話だ。

 

これからどうなるかが面白い

 WANIMA爆売れ!ハイスタ再始動!エアジャム開催!こんなのファンもファン以外もワクワクはしちゃうでしょ。

 意地悪な言い方をするなら「ゲリラリリースでこの盛り上がり、まんまと健横山の思惑通りに事が進んでんな」と、彼の"カッコイイ"を貫くことへの上手さに鳥肌も立つ。愚直な天才という面の裏に、計り知れない賢さ周到さを感じる。

 今回のリリースは再三言うように、全然曲が良くない。音楽は曲だけに終始しないが、曲単体は全然良くない。僕は好きじゃない。ケンの声をもっと聴きたいし、3人でギターベースクラッシュが合わさってズドン!というあの感じも足りない。僕が勝手にわがままに彼らに期待していることだが、ファンも遠からぬことを思っているんじゃないだろうか。だし、それがハイスタの真骨頂のはずだ。

 しかしライブで聴いたら聞こえがまた違うかもしれない。次のリリースだってあるかもしれない。ピザでデカいことをぶちかましてくれるんじゃないか、そういう期待も持てる。今回の事件自体は、音楽業界にとって明るいニュースで間違いない。これからへのワクワクでもう僕は十分です。

 でも曲は良くなかったです。それだけ。それじゃあまた。

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