お前らクズだろ。the ピーズ聴けよ
80年代バンドブームに生まれながら現役で活動している数少ないバンド、The ピーズ
メンバーチェンジを重ね、一度の活動休止を経て今年結成27周年を迎えた彼ら。
そのファンには30代、40代といったバンドブーム時代からの根強いファンもいれば20代、10代のロック好きな若者ファンも多い。
また忌野清志郎やTHE MICHELLE GUN ELEPHANTのメンバーなどミュージシャンにもファンが多いのは有名な話だ。
その幅広いファンを今も増やし続けている理由とはなんだろう?
理由は簡単、クズだからだ。
まぁ聴きましょうよクズのみなさん
まぁ聴きましょうよクズの僕と一緒に
魅力の一つはベースボーカルのハルが書く歌詞にある。
初期の作品では日常やエロ、無意味でヤケクソな歌詞が
「音に乗る言葉であればいい」という彼の考え方から書かれていた。
”ブリーチ ブリーチ いくぞ脱色だー かみの毛の色抜いて変えちゃおー”
しかしバンド活動が積み重なっていくにつれて歌詞に変化が見受けられた。
その頃発言した「曲を作るたびに遺書のつもりで歌詞を書いた」という言葉通り
ダメな自分に対しての自己嫌悪、絶望、少しの希望、生死、現状への焦りなど徐々に内面的な歌詞になっていく。
"君はカスだよ かなりカスだよ
どうせカスだろ かなりカスだろがんばったって無理だよ
変ろうたって無理だ
いいコになんかなるなよ
いいコになんかなるな”
"シニタイヤツハシネ シニタイトキニシネ
わざと焦ってるんだ ひとりで焦ってるんだ
バカがひとりでわざと終わる正面からマトモに 自分をみれねーよ ボロだもん
暮らしを変えるより 暮らしを変えるより夢を変えたいわ”
そしてメンバーチェンジや試行錯誤の上、煮詰まっていたハルは活動休止を決めた。今でこそ活動休止だが、その当時は解散とも言われていた。
そして5年間の活動休止後初のアルバム「The ピーズ」の一曲目、「生きのばし」はこう始まる。
”死にたい朝まだ目覚ましかけて明日まで生きている”
私はこのワンフレーズに活動休止期間の5年間すべてが表されているといっても過言でないと思う。
彼の書く歌詞はよく”文学的だ”と言われる。
絲山秋子という芥川賞作家の作品「逃亡くそたわけ」で歌詞が引用されたこと
小説「重力ピエロ」や「アヒルと鴨のコインロッカー」の作家として知られている伊坂幸太郎が
「実験4号」という彼らの曲をベースにして短編小説を書いたことなど、文学界にも影響を与えているのは確かである。
そんな素直でかっこつけていない歌詞が、どこか物事を深く考えすぎてしまうような
ダメだと焦りつつも周りがするようにはなかなかうまくできないような人たちの心に響き、安心感を与えるのではないか。
そしてその歌詞に反した明るくロックンロールな曲調。
いわゆる80年代のロックンロールやパンクロックをそれまで聴くことがなかった人や若者がすんなりとこのバンドを受け入れ
彼らの支持を得ることができる理由はこれらのことだと私は考える。
それでもロックンロール聴くのは乗り気しねえなあ。という人は、比較的聴きやすいだろうこの曲をぜひ聴いてほしい。
”10年前も10年先も
同じ青な空を行くよ
スローモーションが浮かんで行くよ
もうずっとグライダー yeah ボクはグライダー
燃料タンク 地図 ナビゲーター
ハナから無いよ しまいまで
ハタから見りゃ そらのんびり
でもとっくにギリギリなんだ もう みんなグライダー”