BASEMENT-TIMES

読める音楽ウェブマガジン

ホーム
アバウト
人気記事
月別索引
オススメ記事

コラム 記事

動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか → いやですお断りします

 こんな記事がネット上でちょっとした話題を呼んでいました。

動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか

 読みましたか?

 読んでないよという方のために、勝手ながらこの記事の内容を簡単にまとめると以下のよう。

・ライブハウスは動員の少ないバンドのノルマ代に経営を依存している
・ドリンクやフードや集客努力など、ライブハウス側の企業努力が足りない
・動員の少ないバンドがみんなでボイコット起こせば7~8割のライブハウスが潰れるんじゃ?
・そしたら良いライブハウスだけが残って市場競争が生まれるに違いない!

 はい。

 俺は現代っこなので幾度となくこういうのを見てきたんですけどこれ、愚かな人類は皆殺しにして一度世界を浄化しなければならぬ系の魔王ですよね。魔王もブログとかやるんですね2017年にもなると。

 上の四要項のうち、最初の一つだけは概ね同意なんですけれど、残りは全く共感できません。特に

・動員の少ないバンドがみんなでボイコット起こせば7~8割のライブハウスが潰れるんじゃ?

 これに関しては

「北朝鮮国民全員で団結して金正恩シバけば独裁終わるジャン」

「世界中の人が1円くれたら70億円手に入るのにな~」

「碇シンジ君、あなたが乗るのよ」

 これらと同じですからね言ってること。

 多分、読んだ方の多くが「間違ってないけどなんかチガウ」と思ったのはこういう所に原因があるのでは。こういうのをこれから実現性無視の正論と呼びましょう。今名付けました。良かったら、さも知ってて当然の言葉のような顔をして使ってください。

 あと「ライブハウスが集客努力を怠っている」的な物言いをワザワザ棘のある言い方で書いているのに単純にハラ立ったので反論させてもらいたいなと。儲からないことを"好き"だけで頑張ってるライブハウススタッフ、イベンター、バンドがどれだけいるか。まあ、なんかこれは個人的な怒りなんでいいんですけど。

 著者様も「意見があればぜひ」と言ってくださってるので遠慮なく書けます助かりますそういう感じで以下どうぞ。

フラっと立ち寄れるライブハウス

 要するに著者の海保さんの主張は最終的には

「ライブハウスでレストランレベルの値段と質を提供できればノルマとかいらないよね。みんながライブハウスにフラっと立ち寄れるようになるよね」

 というところに着地してるんですけど、勢いがありすぎて骨折してます、意見が。

 でもこれって実際のところ"海外では"実現しているんですよ。以下参考文献。

 無名バンドは無料でバーやコーヒーショップ、レストランで演奏しているし、そこそこ有名なインディーズバンドも$10 - $40 (約1200円〜5000円)と、かなりの安価なのだ。
 私が行くライブのチケット代は平均$15 - $20 (約1200円 - 2400円)、$20になると「ちょっと高い、どうしようかな」と悩み出すのである。日本のお前らからすると、相当贅沢な悩みと思われる。

こんなの卑怯だろ、なんでアメリカ人のバンドはあんなにハイレベルなのか?より

 人の事言えないけどこの人読者との距離感どうなってんだよ。ウケる。

 これは二年前に海外在住のライターさんに書いていただいた記事なんですけれど、ここにあるように海外では無名バンドはバーやコーヒーショップ、レストランで演奏しているそう。欧米に留学に行った友人からも「なんかレストラン入ったらライブやってて超かっこよかったー」みたいな話を訊いたことありますし結構日常らしいです。洋画でもよくそういうシーン見かけるし。

「日本でもそれやればいいじゃん!」ってみんな思うんでしょうけど現実問題無理なんです。問題はだいたい3つあって

・日本は土地が狭いから、レストラン程度の防音設備でドラムなんか叩いたら近隣住民の苦情がヤバい
・知らんバンドや音楽を聴いて盛り上がったりしない日本人の国民性とか文化
・海外のバンドはパフォーマー的な側面が強いが日本のバンドはタレント的な側面が強いので初見の人間が楽しみづらい

 都内のライブハウスなんかは地下につくって徹底的に防音した上で近隣民との激しい苦情との闘いですからね。レストランで演奏なんて日本じゃまずムリ。国土でムリ。

 海保さんも「ライブバーでやれ」と言ってますけど、国内じゃライブバーもノルマ取りますし店客はほぼゼロだしライブハウスと何ら変わらない状況です。

 下2つに関しては国民性の問題なので、インド人からカレーを取り上げるぐらいムリです。ムリだし、意味がねえ。

 音楽が好きな人ほど音楽志向のバンドが認められるべきだ!と考えがちなんですけれど、結局のところそれは趣味の押しつけ(自覚があるならいいけど)でしかないので不毛です。パフォーマーバンドもタレントバンドもエンタメとして両方認められるべきなので無理に国民性まで変える必要ないです。インド人に納豆を食わすな。別に意味がねえ。

 この前提から考えるに、件の記事の「ライブハウスのフードやドリンクをグレードアップしろ」という主張は海外で言う所の「演奏可能なレストラン・バー」と「キャパ150ぐらいのライブハウス」の役割を1店舗で両方カバーしろぐらいの意見になります。昔知り合いの女性に「ワンちゃんとごはん食べられるペットショップ開きたいの」というイカれたトリマーがいたんですけどそのぐらいの無茶です。人件費と家賃設備投資諸々を夢や理想が支払ってくれるなら経営可能なんですけどね。あ、でも防災の観点からも無理か。無理ですね。

 加えて日本人の国民性とバンドの傾向から「フラっと立ち寄れるライブハウス」というビジネスモデル自体が破綻しているのも完全に無視。

 というかライブハウスの数減らして人気バンドだけで連日埋めちまえ!という考え、土日の存在を全く考慮に入れてない。戦時中の日本の暦かな?

 なので、俺は海保さんの提案は賛成できないです。

 

まとめると

・ドリンクやフードや集客努力など、ライブハウス側の企業努力が足りない
→ ブラック企業を生む考え方

・動員の少ないバンドがみんなでボイコット起こせば7~8割のライブハウスが潰れるんじゃ?
→ 実現性無視の正論

・そしたら良いライブハウスだけが残って市場競争が生まれるに違いない!
→ ビジネスモデルの破綻

 こういうカンジ。

 全体的に意見が確証バイアスかかってるんですこれ。

確証バイアス(かくしょうバイアス、英: Confirmation bias)仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと

 人間の心、怖すぎるぜ。

 あと理想論としてはベツに悪い話じゃないのにいやに攻撃的な反論(リプライ欄が地獄でした)が多かったのは、この海保さんという人、良い人そうだしたぶん実際良い人なのにわざと挑発的で突き放した物言いをしているので反感を余計に買っちゃったのかとおもいます。俺なんか3年にもわたってこのサイトで最悪の人間性をさらしているんですけど、見ての通り演技じゃなくて本当に人間が最悪なので見てるヤツも怒る気にならないんですよね。俺は人としてどうなんでしょうか?あれ?

 人間って結構人間なので、ムカつかせると怒るし怒ると反論してくるんですよ。しかも今回の件に関しちゃ論理自体に突っ込みどころが多かったのでこうなったんだとおもいます。全裸で蜂の巣つついたらダメなんですよ。

 さて、ライブハウス周りの環境がどうすれば良くなるか。俺の意見はこの記事に概ね書かれています。今でも十分楽しいところだから、お近くのライブハウスに行ってみてはいかがでしょうか。そういうところから音楽周りの経済状況は良くなるのかも。

 強いて言うならクラブカルチャーを見習って、お客さん同士の交流を奨励するイベントとかあれば集客が見込めるかもねと考えています。人間は寂しいので。

 どんなバンドも最初は客ゼロからのスタートですから、ライブやらなきゃ始まりませんよ。マーケティングだけ上手いネット発のバンドってだいたいライブダサいし。俺はライブしてるバンドが好きです。

 それでは。

オススメ記事

記事検索

オススメ記事