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知っていますか、バンドって毎回自腹で3万円とか払ってライブしてるんですよ

 先日当サイト宛に以下のようなメールが届いた。

はじめまして!いつも楽しく読ませていただいています

先日の邦楽を海外の方に聴かせる企画大変面白かったです

従来の記事よりもこういった企画の方がベースメントタイムスさんには向いていますし読者も期待する所だと存じます

ですが少々選曲がいまいちだったかなと思います^^;

なので是非2回目の開催に向けて私のオススメのバンドをいくつかお教えしようと思います

オーラルシガレットというバンドなのですがなかなか演奏も上手く曲も結構考えられているものが多いです

他にはポルカドットスティングレイやAmazarashiなんか悪くないと思います

 破いて燃やした後、このメールアドレスで片っ端からフィッシングサイトに登録してきました。

 とっても音楽に詳しい(?)人たちからしたらば、このメールの内容なんかお笑いぐさにもならないんだろうけれど、投函者も投函者なりに音楽が好きで、彼なりの秘蔵のカッコイイ音楽が上のラインナップなのだ。善意で教えてくれているようだし。ありがとうございます。さようなら。

「いや全部知ってるよ。なに言ってるんだこの人」

 と一蹴してしまうのは簡単だけれど、こういう所からこそ世間との認識のズレを確認して修正して行くべきなんじゃないかと。俺たち、ズレてるぞ。

 世間全体で見れば彼なんかめちゃくちゃ音楽に詳しい人に分類されるんだと思う。普通バンドなんかラッド、バンプ、ゲスの極み、くらい言えれば「よく知ってるねー」だ。

 今日はそんなお世間様へ向けた話題。みなさん普通に暮らしていたら絶対に知り得ないし知る意味も無い、音楽の最前線で生きるバンドマンたちについての話です。雑学としてお楽しみください。どうぞ。

 ライブと言えばZEPP、武道館、な人たちからしたら信じられない世界だと思うのだけど、インディーズで頑張っているバンドでは、平日20人集客があれば"売れてきている"に分類される。ちなみに武道館のキャパは13000人くらいです。同じ業界の話とは思えないぜ。

 じゃあ俗にいう売れないバンドマン。これらはどのくらい集客するのか?と言うと、それはもう地域やバンドによって様々だけど0〜5くらいですかね。

 で、多くの場合はノルマと呼ばれる2~3万の出演料をライブハウスに支払っており、1枚2000円ほどのチケットを売った差し引き金額が収益として計上される仕組みとなっている。

 最初の方は友達とかなんとか呼んで数人からチケット代をいくらか回収できたりもするけれど、友達が義理で来てくれるのはせいぜい1回や2回ほど、数回ライブを重ねれば当然客は限りなくゼロに近づいていく。

 だいたい5人ファン呼んだらライブハウスの店長に「結構頑張ったね!今日支払い2万で良いよ」と言ってもらえます。マジで。「頑張ったね」の後に「2万払え」という美しい日本語。華厳の滝のような角度の文法。

 なのでバンドマンたちは2〜3万を下北沢の側溝に流し、5バンド合わせて集客10人以下のガラッガラのライブハウスで

「行けるか下北ァー!!」
「俺たちはまだ今はお客さんもいなくてバイトしながらバンドやってるけど!!いつか、いつか!!絶対武道館に行ってやるゼェー!!」

 みたいな。それを月2〜3。客のいないバンドと客のいないバンドがぶつかって、何が起こるかみなさんご存知ですか?

 なにも起こらないんですよ。

 なぜそういうことが起きるのかというと、ライブハウスにも維持費がかかるのだ。当然だよね。

 ライブハウスだって人気イベントや良ブッキングでカレンダーが埋まるわけじゃないのだ。空いた予定には集客のないバンドでもなんとか呼んでノルマ代だけでも回収しなければならない。しなけりゃ家賃、光熱費、給料、その他諸々雑費が支払えずに店じまいとなってしまう。

 若者の夢を応援しているのか、搾取しているのか、もうよくわからない。わからないが、ライブハウス勤務の方々がスポーツカーを乗り回しているのを見た事は無いし、みんなそれぞれ現実とお金と戦っているとかしか言いようがない。罪とか悪は目に見えないし正体もないけど現実や環境はたしかにある。そういう話だと僕は思いますよ。

 

じゃあどうやって売れるのか

 じゃあ集客ゼロのバンドは一生客のいないライブハウスでバッターボックスを見つめながら素振りを繰り返すだけなのか。救いはないのか!?そうなりますよね。大丈夫です。ちゃんとあります。

 各ライブハウスの店長に「ちょっといいなこれ」「見所あるな」と見初められ始めさえすれば、もうちょっと有名なバンドと対バンを組んでもらえたり、レコード会社やライブ制作会社などなど音楽業界で顔が利く人を紹介してもらえたりする。

 売り出す側だって次のスターバンドを追い求めているのだ。超探している。ユーチューブだけでは飽き足らずサウンドクラウドを片っ端から巡回して探すレコ屋の店員さん。毎日ライブハウスを3〜4件ハシゴしてまだ見ぬバンドを追いかけるメジャーレーベルの社員さん。ちょっと見所があるバンドが現れるとどこからともなく大人が群がり、熾烈な契約合戦が繰り広げられる。僕だって大して力にはなれないけど誘われたライブは大体行ってみてる。

 こう訊くと結構夢あるよね。

 よく「バンドなんか売れるのは運だよ運」みたいなこと言うひといるけれど、それはある意味正しいけどある意味では間違っていて、本当に才能のあるバンドは運が良かろうが悪かろうが関係なく売れていたに違いないと僕は思う。だって本当にみんな探し回っているんだもん。正しい部分があるとしたら、それは「運とかコネとかで売れてるバンドも確かにいるよね」という部分だけじゃないかな。今ライブハウスで頑張っているバンドを見ると「ああ僕がバンドでうまく行かなかったのは才能と根性が足りなかったんだな」とつくづく思います。音楽として好き嫌いはもちろんあるのでそこらへんは一消費者として勝手に好きだの嫌いだのは言うけれど、彼らの頑張りにはもちろん頭下がりっぱなしです。そんなの、わざわざ言う必要がないことだけど。

 近場でそんなことが結構起こるもんだから、バンドマンたちは「いつか俺たちにもそういう時期が!」と胸に期待を抱き、万札握ってライブハウスへ足を運ぶのだ。

 そういう所から始まって、RADWIMPSのように国民的ビッグスターになるバンドから、インディーズでワンマン集客1000人くらいだけど一般的なサラリーマンくらいには稼げてるバンドとか、もっと集客は少ないけど毎日全国回ってバチバチライブして食っていってるバンドとか。色んな形でバンドを仕事にできている人たちがいる。多くの人たちにとっては紅白に出れるようなバンドが生涯知り得るバンドの全てなんだろうけど、ちょっと奥には色んな人が音楽の上に住んでいる。

 

ライブは娯楽として単純に面白いです

 まずは人が見てくれないとどうしようもないので、このサイトではメジャーの有名バンドで冗談言わせてもらったり、こういうコラムも書いたりしてみているけど、せっかく音楽を紹介するならそういう光の当たりづらいところにある、奥の奥のバンドたちをみなさんにお届けできればと思います。

 売れてようが売れてなかろうが、かっこいい音楽はかっこいい。ならせっかくなら人が選ばないものを試してみるのも良いんじゃないかと。

 7000円払って有名バンドのライブに行ったり、万札はたいて夏フェスにオフ会しにいったりするのも楽しいとは思うけれど、2500円で近場のライブハウスに行って、映画を見るような感じでドリンクを飲みながら生演奏を見るのも純粋に楽しいと思います。普通に、もっと流行っていいくらい娯楽として優秀。人それぞれだけど魔法石に課金するよりは充実感あるんじゃないかと。

 あと1つのバンドを追いかけているうちにファン同士で仲良くなったりとかも当然あるので、孤独な人にはなおオススメです。3〜4回も推しているバンドの最前列で隣り合ってるのに話しかけない方が不自然だろ、くらいの空気になるので。ハードコアのライブとかなんかはライブ中殴り合って親交を深めている人たちなんかもままいます。ファイトクラブ的な。

 そんなわけで、音楽にあまり興味が無い。ライブとか行かない。そういったみなさんも是非試しに一度ライブに足を運んでみてはいかがでしょうか。

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