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GRAPEVINEに愛と敬意を込めて

 諦めるの「諦」の字って、もうイヤになって放り出すって意味じゃないらしいですよ。

 元の語源は仏教だかの由来の言葉でモノを見極める、知る、理解する、真理、真実、そんなニュアンスの文字らしいです。意外とポジティブな意味ですね。じゃあなんでギブアップを意味する「諦める」に「諦」の字が入っているのか?それを説明するのにGRAPEVINEというバンドの話を。

 GRAPEVINEとは!去年夏の終わりにフロントマンの田中が文春に不倫報道をすっぱ抜かれたバンドです!そして俺の最も尊敬するミュージシャンであり、最も憧れている人間です。間違いなく人生で一番聴いたバンドでしょう。日本最高峰のロックバンドです。

 

 一部の方、お久しぶりです。久々に好きな音楽のことについて話したくなりまして筆を取りました。ちょっと年を取りましたねお互いに。忙しかったですか?音楽聴いてました?俺は結局めちゃくちゃ音楽聴いてました!

 

概説、GRAPEVINE

 まず、全くGRAPEVINEのことを知らない人たちの為にWikipediaの来歴欄をChatGPTにぶん投げて要約してもらいました。時代はAI。音楽ライターいらず。便利になりましたね。あ、でも別に読まなくてOKです。

1993年、西原誠と西川弘剛によって大阪で結成されたバンド。田中和将と亀井亨が1993年に加入し、その後大阪を拠点に精力的に活動を展開。1997年にミニアルバム『覚醒』でメジャーデビューし、東京に進出。1999年に4thシングル「スロウ」がヒットし、2ndアルバム『Lifetime』はオリコン初登場3位を獲得。2001年、バンドのリーダーである西原誠がジストニア治療のため一時離脱し、バンドはサポートメンバーを迎えてライブを続けた。西原は2002年に復帰したが、ジストニアの再発のため同年内に再び脱退。バンドは以降、5人編成で活動。2006年と2014年を除き、ほぼ毎年アルバムをリリースし、2012年にはメジャーデビュー15周年を迎えた。2014年にはポニーキャニオンを離れ、SPEEDSTAR RECORDSへレーベル移籍し、SPACE SHOWER MUSICとのマネージメント契約も結んだ。この移籍後、バンドはMVでの演技やメディア露出が増加した。

 えーこれを「一応人間」でお馴染み俺、石左が要約します。

結成4年でさっさとメジャー行って、ちゃんとロックバンドやりながら2年でオリコン3位とったけど、商業商売が嫌んなってミスチルコースを蹴り、マジで自分たちの信じるカッコいい音楽を頑張って、マジでかっこいい音楽が好きな奇特な人間の人気だけで飯食ってきた男たちです。友人のバンドマンに「お父さん、突然会社辞めてきて『俺はもう会社嫌になったからビリヤードの棒作って売ることにした』って言い始めてビリヤードの棒売ってるんだけど、お父さん、ビリヤードの棒業界でブイブイ言わせてるっぽい」というヤツがいるんですが、GRAPEVINEの経歴はマジそんぐらいロック。生き方かっこよすぎ。誇り高すぎ。本当に人生に必要なことわかりすぎ。MVの田中エロすぎ。目真っ直ぐすぎ。任侠(おとこ)すぎ。

 音楽性的にはデビューから現在にかけて「良いバンド」から「良い音楽」ってな感じで音楽として良い、聴いて耳心地が良い、作品として素晴らしい、そんな感じで年々型にとらわれなくなっていってます。どの時期もスゲー良いですが、

「普段バンドを好きで聴く!」

 という活きの良い人には

 初期のGRAPEVINEを

「良い音楽だったらジャンルなんでも好き」

 という僧のような人には

 最新作、Almost thereを、是非聴いてみてください。

 

 

スキャンダル後の最新作

 田中が文春にやられたわけですが、あまり騒ぎになりませんでした。エッセイが国語の教科書に載った時は俺達あんなに喜んだのに。

 本人は本当に沈痛なご様子で反省を示していたのですが、人様のご家庭のことに騒ぐようなのはGRAPEVINEのファンにはほぼおらず、なんなら人生の多忙な時期にGRAPEVINEから離れていた人たちにも「あ、好きだったなそういえば」と名前が届き、静かにひそかに注目状態になっていた最新アルバム。マジでものすごいです。音楽関係の人に「聴いた?」ってしばしばいわれる。アルバムがそんなに話題になること本当にない。だって聴かねえもん、人間はアルバムって。アルバムで音楽楽しむみたいな文化、かなり絶滅危惧。雅楽、ホッキョクグマ、ゲートボールです。俺達、ゲートボーラーです。自覚しましょう。

「アルバムがすげえって何がすげえの?」

 バンドの、ミュージシャンの"その時期"が切り取られているし、リストでいろんなミュージシャンの曲ごちゃまぜ!よりは統一感がやっぱりあります。マスタリングつって盤全体のバランスを整える調整も入ってますし、トリコのフルコースみたいなもんですね。対してとにかく捕獲レベルが高い食材を集めて食う!みたい楽しさがプレイリストってとこでしょうか。わかったか小松?

 

 最新作から、ミュージックビデオ三作目。

「MVなんかご家族連れの川辺バーベキュー会場で演奏でよかろうよ」ぐらいのスタンスの時期もあったんですが、今作は明らかにミュージックビデオを含めて現代の音楽作品!って感じで気合が入っているし、今回MVを出している数も多い。俺はMV見ながら音楽聴くのスゲー好きなので本当にありがたいです。もちろん昔のMVも大好きですけどね。

 

 このアルバムの先頭曲です。彼らのルーツの音楽性に近いオールドのロックを踏襲した曲です。

 良かったら探して歌詞を調べてみてください。どういう歌だとみなさん思います?抽象的で何の話をしているのかよくわからない?じゃあなぜ、当時から歌詞の芸術性を評され、国語教科書にも文章が乗り、名実ともに文才のある人間の詩がこんなに抽象的なんでしょうか。俺は「物事の真理とかって近づけば近づくほど抽象的になるからじゃね?」と、思ってます。「NARUTOのサクラって人気ねーよな」よりは「ジャンプのヒロインって基本人気ない」の方がより広い範囲に言葉が対応するからです。

 主語をわざと避けたり、何かとは明言せず「彼等」と表現したりして、みんなが人生でどこかで直面する感情に当てはまる詞になっているなと思います。そして歌詞の内容はきっと、その感情に対する田中なりのアンサーが込められているなと俺は思います。

 やりたくない音楽やった方が苦労は少ないかもしれないし、言わない方が良いことそれでも曲げたくなくて言って損するとか、基本的に貫くと損なスタンス。そういう姿勢への賛歌なんじゃないかなと。人間最後は愛が勝つぜ的な、もっと言えば「人間は悪いもんじゃない」ぐらいのクソ怪しいテーマに全財産ベットする博打うちの、マジのラブの歌だと思います。超いい曲です。

 

 プロデュースに「イサオヒート」こと、長年サポートメンバーを務めるほぼメンバーの高野勲氏が参加し、超現代的最先端の音楽性から繰り出される関西弁の最悪飲んだくれ中年の歌なんかもあります。サビ前だけわざとらしいオートチューンがかかったり、サビはクソでか暴力ギター。最高。マジ感謝。関西弁でなんやかキレられてる謎の音声、毎アルバムある怒りの歌なのか。怒りの歌も年を取ってユーモラスに、なんか妙に癖になる謎バランス感覚が冴えまくってます。

 その他にも、昭和~平成初期再評価の流れに「じゃあこれもアリでしょ?」と最近の音楽時世を見極めたシティポップに思わず「ジジイ!!月9(げつく)かよ!?」とファン絶叫のド直球ラブソング。「去年大変だった時の話か!?」と勘繰るような曲。ガチで言っていいのか?という火力で世の中に中指立てている曲。最後の曲はずばり「SEX」今この時期にこれ行ける勇気あんのマジで田中だけ。一曲目で歌ってることをアルバムで実行してるの任侠(おとこ)すぎる。ロックすぎる。心臓が野武士すぎる。ちなみに内容は愛を持って俺達愚かな人間を許してくれている曲です。

斯様に
そう例えばセックス
LGBTQQIAAPPO2Sは
あなたの願いよ届け届け
バカげた世界に光を光を
一緒に

 ガチで深けえ愛の歌です。許してくれています。諦めてくれています。

 

 諦めるの語原は「物事を明らかにする」の「あきらか」から来てるそうです。理解する、わかるってことですね。

 GRAPEVINEの今作は全体的に「自分より強く理不尽な力に逆らう」というロック精神が強いです。でもただ怒るとかではなく、許したりユーモアにしたりしてより正しい姿勢を見せてくれます。愛という言葉がアルバムの最後の一曲の頭に出てくるように、愛で諦めてくれているような優しい姿勢です。人間やら社会やらというやつに理解を示し、諦めているかっこよさ。GRAPEVINEは諦め続けていてかっこいい。ずっとこのスタンスに一番惚れ込んでいます。

 

 前作の「大人なりの新しい人生」みたいな開けた感じはなく、達人の本気のような煮詰まったアルバムになっています。超最先端の傑作です。マジですごいアルバムですよ。紹介させていただけて大満足という感じです。もう一つもっとごく個人的な記事を書きましたがこれでBASEMENT-TIMESは更新を停止します。今後更新は一切いたしません!ありがとうございました!

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