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2016/07/16

記事 邦楽ロック

今邦楽で最もヘンなバンドIvy to Fraudulent Game

いまここにきて猛烈に人気を伸ばしているバンド、Ivy to Fraudulent Gameをご存知だろうか。このサイトの読者の方ならば名前くらいは見かけた憶えがあるとおもう。

そして誰一人ちゃんと名前読めてないし正確にスペルを把握してないだろう。ちなみに俺は読めてないよ。調べたところフラウデュレントと読むらしいが、ファンすらロクに読めてない。検索エンジンのサジェストもこの始末である。

ivy

オイ諦めんな。

 

頭に述べたように、最近の雑食系邦楽ロックキッズの間でこのIvy to Fraudulent Gameがジワジワ人気を伸ばしている。そういうイベントでもチラホラ名前を見かけるようになった。見かけるは見かけるが、正確にスペルが記憶されない故に調べようもなく、名前が判然としないモヤモヤからか、しばらく謎の存在として俺の心の片隅に鎮座していた。これが狙いなら思う壺だよ。

耳の早い邦楽ロックキッズのみなさんから一大注目を集めるIvy to Fraudulent Gameだが、このバンド、ちょっとヘンなバンドだ。定義バンドともかくとして「ザ サブカル邦楽」みたいな位置で売り出されながらも内情はそこからかなり逸脱している。

このバンドをKEYTALKとかフォーリミとかKANA-BOONとかと並べて邦楽ロックいえーい!みたいにありがたがっている人たちを眺める俺の心情は、ピカチュウやニャースと並べてモンスターボールでジバニャンを持ち運ぶサトシを見るときのそれ。異物混入してんぞと。

ネット発バンドの一角

最近本当にインターネット発のバンドが多い。最近じゃユーチューバーすらバンド活動を行い、ゲーム実況者のだしたCDが有名バンドの倍売り上げを立てる時代だ。

握手券を添えたアイドルのCDや、そもそも集客の方法からして規模が違うネット有名人まで、一緒くたに群雄割拠のオリコンのランキングで優劣を判断するのは、ダッシュと自転車とスポーツカーで500メートル走するようなもんである。不毛だ。

で、くだんのIvy to Fraudulent Game。このバンドはその中でもかなり特殊系と言える。

ツイキャスというサービスをご存知だろうか。ザックリ説明するならば、今ニコニコ生放送から取って代わって若者の間で人気を博している生放送配信サービスである。

古来からユーストリーム、ツイッチ、ニコ生、と様々あった配信サービスだが昨今のツイキャスの文化はニコ生のそれとおもってもらって問題ない。ユーチューバー崩れやツイッターで人気のイケメンや美少女がアニメキャラクターのような声で「いや、イケボじゃないですよォ」みたいなことを延々言い続けるアレである。百聞は一見に如かず、よかったら見に行ってほしい。

で、このIvy to Fraudulent Gameというバンドのボーカル。寺口宣明、聞くに有名ツイキャス主というやつだったそうで界隈ではかなりの有名人らしい。

人気が出始め邦楽ロックバンド!として売り出し中の今でこそ、ツイキャス主だった過去は抹消されつつあるが、他の邦楽ロックバンドと対バンなんかすると、Ivyだけ明らかに客層が違う。なんていうか、ネット特有の匂いがするので彼らのファンだけ一目で判別がつくのだ。ブン殴ったら「わこつッ」みたいな音がしそうな顔してる。

特異な部分はまだまだある。ボーカルの名前で調べると真っ先に「V系たぬき」のスレッドがヒットする。たぬきと言えば言わずと知れたV系バンドのタレコミや肉体関係募集、資金援助募集、誹謗中傷掲示板。V系というジャンルの異質さを垣間見ることのできる貴重なサイトだ。

外部の人間が覗くとそのただれっぷりにたじろぐだろうが、ヴィジュアル系という社会においては至極ありふれたことであり部外者である僕らがつける文句は一切無いが、日本が法治国家であることを忘れるほどの混沌っぷり。

俺個人としてはこの欲望に明け透けな感じ、好きだし見習いたいと思う。サブカルバンドの裏でコソコソファンと繋がっている感じよりよほど好感が持てる。こちらも後学のために是非見に行ってほしい。こっちは本当に文化として面白い。

たぬきの説明はこのくらいに、寺口宣明の名前がある異常事態はわかっていただけたと思う。

 

音楽性はヴィジュアル系のヴの字もない。言うなれば2010年前後に流行ったマスロック・ポストロック・残響系ド真ん中だ。こういったバンドが出てきては消えて今ではほとんど見る影もない、のにも関わらず今更のこのサウンドだ。先日紹介した30秒ポストロックで聴けるアマチュア宅録のみなさんの方がポストロックの向こう側に行こうとしている感じ、やりすぎ感が面白く、比べる物でもないがあえて言うならば俺はこっちの方がすきである。

一通りアルバムを聴いた印象は、ドラムがちょっと面白い。他のパートに比べてサウンドに異常にこだわりを感じる。やけに薄いスネアを使ってみたり、必要があらばエレクトロのキックを使ったりと、明らかに実験要素が多い。他のバンドから差別化をするべく一番頑張っているパートだ。どうやら作詞作曲もドラムによるものらしい。頑張りすぎだろ、ツイキャスしてないで手伝えよ。

 

で、全然サウンドはV系じゃないんだけれど、音源で聴いたときはまったく気がつかなかったがライブで聴くと歌い方がV系そのまんまなのだ。しゃくり上げが多く高音で喉を締め上げるあの歌い方である。V系ではごくごく普通の歌い方だが、邦楽ロックとヴィジュアル系は異様なまでにハッキリと線引きがなされており、新宿歌舞伎町のライブハウス以外で聴くことは滅多にない。

で、またファンの話になるんだけどやっぱりファンの服装が、黒い。彼らの出番だけ最前から濃厚なリズリサの匂いがする。

 

今の20代や、若年層のバンドマンや音楽関係のところで働いてる人間であれば一発で「なつかしい事やってんなオイ」と気がつくような音楽だし、ライブを一目見ればその異様性を即座に感知するバンドだ。

しかし、バンド音楽を聴き始め、何でも良いからいろいろ聴いてみたい!という若者からしたら逆にこのサウンドが新しく感じるのかもしれない。また他のバンドと出自や客層が違う、なんてこともよくわからないのかもしれない。それは逆に健全だな、とも思う。

V系+ポストロック+ツイキャス主の三重構造を邦楽ロックでコーティングしたこのバンド。今日本でビジネスとしては一番面白い売り出し方をしていると言える。個人的には今後の動向がとっても気になるバンドだ。

逆に言えばこのバンドを聴いて、見て、その特異性に気がつくような人はちょっと精神が健康でないのかも。一銭も生活費の足しにもならんのに、音楽聴きすぎである。休め。

このバンド、みなさんにはどう映っただろうか。ヘンかヘンじゃないか、好きか嫌いか。ヘンだな~と思いつつも好き、それならそれで良いと思う。俺の言うような内情の話を好き嫌いに持ち込むのはむしろ不健全だ。好きはものは誰の言うことも気にせず好きでいてほしい。

俺はこのバンド嫌いです。

それでは、また次の記事で。

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