BASEMENT-TIMES

読める音楽ウェブマガジン

ホーム
アバウト
人気記事
月別索引
オススメ記事

今一番あざとい商業オシャレ Nulbarich

 いやー見事に売れましたねNulbarich。

 正直なことを言えばこうも売れるとは思っていませんでした。


Nulbarich - NEW ERA

 というのもちょっと強引過ぎだと思ってたんですよね。デビューの仕方が。

 出てきたタイミング、音楽性、覆面バンドという設定、デビューするや否やCD店、ラジオ、iTunesあたりでの猛プッシュ。そして極めつけはサチモスそっくりのロゴ。ワンピースとフェアリーテイルくらいの似具合。

 流石にあからさま過ぎるんじゃないかと。メンバーの顔は隠れているのに、レコード会社のcero、Suchmosあたりで耕されたオシャレ音楽の畑で漁夫の利を得たいって意図は全然隠れてなかった。

 MVも「女なんて見てくれが洒落てるカフェにでも連れてけば喜ぶだろ」くらいの発想のテンプレオシャレだしな。

 あと個人的に厳しいなと思ってたのが、バックグラウンドの有無。Suchmosが売れたのってSTAY TUNEのキャッチ―さとオシャレさが時代にぶっ刺さったからなのは間違いないと思うんですが、それと同じくらい彼らのカルチャー感が重要なんじゃないかと思っていて。生きたオシャレというか。横浜のオシャレな人たちの音楽がカッコよ過ぎて世間がほっとかなかった、ストーリー性というか。

 幾らオシャレだろうが、曲が良かろうが、そういう諸々を蔑ろにしていては世間は振り向かないだろうなって思ってました。世間はそこまで甘くないぞと。

 はい、僕がバカでした。

 

 今度彼ら、武道館公演をするらしいですね。

 今ではYoutubeのコメント欄も小学生並みのピュアなコメントやポエムと、突然の自分語りで溢れて完全に成功したミュージシャンの様体に。さぞ御の字のことでしょうなあ!

エゴが一切感じられない

 とまあ、今回はNulbarichの悪口を言いたくて記事を書き始めたのではないんです。いや実際心の中ではオシャレマンウィズとか札束サチモスとか思ってるけど、そういうことを言いたいわけじゃないんです。

 ことのあらましはというと、先日フェスで彼らのライブを見たんですね。悪口は言うけど音楽性は結構ドンピシャなので、音楽に罪はねえ!って見に行きました。

 結果としては、カッコよかったです。普通にめっちゃ良かった。フェスというシチュエーションとか抜きにしても非常に質の高いライブだったなと。

 ただ、前から薄々思っていたのけど、ライブを見て確信しました。

 この人たち、エゴが一切ないなって。

 


illion - BEEHIVE

 ここでいうエゴとは、わかりやすく言えばRADWIMPSの野田洋次郎のソロ活動、illionです。

 野田のファンを敵に回すと外を出歩けなくなるので言い訳させて欲しいんですが、決して音楽的にダメというワケではないです。というか寧ろ高度な音楽。ああいう実験的な音楽があるからこそ音楽ってのは進化していくものだと思うし、尊いなって思います。

 ただまあ世間のニーズというか、RADWIMPSのファンが求めている音楽かって言われるとそうじゃないじゃないですか。正直言って、普通にかなり難しい部類の音楽だと思うんですよね。現代音楽とか音響系とか、そういうの寄りというか。それこそアイスランドとかでしかウケない音楽だなと。

 まあ平たく言えば野田のオナニーなワケです。ファンのためでも売り上げのためでもなくて野田洋次郎が作りたいから作った音楽。それがillionだと思うんですよね。

 


Nulbarich - It's Who We Are

 良くも悪くも人間は、売れると調子に乗るものだと思うんですが、もうこれは人間が人間である以上仕方がないことで。あのビートルズですらちょくちょく自己満足としか思えないような曲を書いていたし、SuchmosはStay tuneでバカ売れしたのに胡坐をかかずに、あくまで自分たちの音楽を追求した結果、ミーハーなファンがグッナイしたし。それこそ元ネタのJamiroquaiなんかは10分間ほとんどずっとソロだけの曲があったり。でもそういうことろが面白いなって思うところでもあったりするワケなんだけど。

 でもNulbarichの音楽にはそういうのが全くないんですよね。音楽の先にJQの顔が見えてこない。

 悪く言えば置きにいってる、よく言えばファンが喜ぶ曲。というかファンが好きじゃなさそうなのは絶対にやらないって感じ。リード曲はバッチリ狙いにいくけどアルバム曲はちょっと遊んでみたってってのはよくあるパターンだけど彼らの場合はそれもあまり感じられないし。

 ブラックミュージックがルーツとのことで確かに音楽はそれっぽいんだけど、それもあんまり具体性がないなとも思う。特定の誰かっぽさも無ければ、どれかが抜けてるって感じもしないし。ルーツが凄く満遍ないんだけど、逆に偏りが無さ過ぎて人間味を感じないというか。Suchmosも同じようにブラックミュージックルーツって感じではあったけど、最近の曲を聴く感じ、ブラックミュージックとは言いつつ実はロックが好きなんだなってのを感じるしな。あのバンドは凄く人間っぽい。

 なんなんですかね。ホントにただ金儲けのためにやってるのか、それとも裏方をやっていた人間としてのプライドからなのか、ファンが喜ぶことだけが生きがいの聖人なのか、真相はわからないけとにかく自分を殺した音楽だとは思います。

 


Nulbarich – Almost There

 ただまあアレコレ言っても、音楽自体はめちゃくちゃカッコいいと思います。普通に今の邦楽でもトップクラスのクオリティ。

 この曲とか最近の洋楽の取り入れ方が凄く自然だしホントに器用だし、実力がある人なんだなって思います。

 でもバンドじゃないなって思います。メンバーは流動的とか言ってたし、わかりきってたことだけど。メンバーの個性をぶつけ合って出来上がる偶然というかミラクルを楽しむバンド音楽とは対極の存在だなと。

 とまあデビューの時のやりかたはちょっと感心しないなあ、という印象でしたが、個人的にはエゴの無い部分もここまで滅私奉公を貫かれると逆に一本筋が通っててカッコいいなって思います。

 多分僕が気に入らないのは売り方も音楽も全然バンドじゃないのにバンド面してるとこなのかもな。最初からメジャーレーベル的なモノだったって思えばゴリ押しっていってもアレくらいよくあるものだし。

 とまあ僕みたいにオタクっぽいところを気にしない人であればホントにおススメの音楽だと思う。アルバムもこれでもかってくらいギッシリ詰まってるしな。捨て曲ないし。お買い得だと思う。マジで。出来が良すぎて可愛くないなって思うけど。

 ということで徹底的にあざとくて商業主義なオシャレ音楽、Nulbarich。あなたはどう思いますか?

オススメ記事

記事検索

オススメ記事