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2015/09/07

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SUPER BELL''Zはなぜあそこまで成功してしまったんだろう。

何をもって売れたかというのを基準にするのは難しいところであるが、CDの売り上げは未だに一つの目安にはなる。
ただ現代はCDが売れない時代だと言うし、あんなに売れた気がするSEKAI NO OWARIですらこの記事を書いている段階で一番売れたシングル曲で15万枚そこらだという。

一方、時代背景が違い比較が難しいところとはいえ、15年前に一つのグループのシングル曲が30万枚弱を売り上げた。
私たちが好きなあのバンドやあのバンドの一曲よりずっと売れてしまった。
それが彼ら、鉄道&テクノユニット「SUPER BELL"Z」である。

CDTVに登場

もう15年前のことなのだが、そのシングル曲でのテレビ出演時の動画を紹介する。


私が初めて聴いたとき、そして見たとき衝撃だった。
まず、これがTVという公共の場に出てきたこと、それそのものが衝撃だった。

色々とやばいんじゃないか?
つか、なんで京浜東北線?
てか、区間半端じゃね?
え、歌詞出すん?
あ、フルVerじゃない。

頭の中をよぎるツッコミ。たぶん全国でこういうことが起こったんだろう。結果売れた。マジで売れた。数字は絶対だ。

 

なぜ売れた?

全国のバンドマン達がかっこいい曲や泣ける曲を日々探求し、曲を書いては捨て、音を入れては首をひねり、酒を飲んでは自暴自棄になり、グルーピーをはべらかす夢をみて。。。
と不断の努力を続けている横で、このようなグループが売れたことに対して、怒るだけでは何も生まない。これは一つの研究材料だ。
3つほどポイントを考えてみよう。

 
1.一般的な親しみやすさ
多くの人間は通学・通勤で鉄道は毎日利用するものだ。
その中で絶対に聴く“音”がある。生活の中に溶け込むように一つの“音”が。それは車掌の声だ。
あの、いつも聴いている音がドバドバと麻薬のごとく脳内につぎこまれていくのだ。やべぇ。
そう、親しみは武器だ。

 
2.ほどよく抑えられたオタク気質
フロントマンたる車掌DJの野月氏は当然のごとく鉄道マニアであるが、その趣味嗜好もギリギリで抑えられていることは大きなポイントだ。
例えば、鉄道趣味でも、音楽系に近い趣味として、モーターの起動音や線路の軋む音に想いをはせる趣味、通称音鉄というものがある。
彼らは鉄道の音を録ることでエネルギーを摂取する人種だ。
そういう趣味のある人間と付き合うと、二人でいるのに東京駅から舞浜駅までの京葉線車内で鉄道の音をとるために一切しゃべらせてもらえないという行動をとらされる。(ほぼ実話)

そんなちょっと素敵だがアンダーグラウンドな世界に比べ、SUPER BELL"Zの音楽は、鉄道をフレーバーにしつつ適度なミックス加減がある。
思わずノってしまうリズムや、ちょっとカラオケでいれてしまおうかな、と思える絶妙のバランス感覚だ。
ギリギリを見据えることはなかなか難しいが、音楽上の個性といえるレベルにまとめあげられていることは特筆すべきことだろう。
引かれない程度の個性ももちろん武器だ。

 
3.“同業者”受けがいい
彼らはいわゆる“同業者”から見てもちょうどいい具合のオタク具合がある。
マニアというのは厄介なやつらだ。ニワカだと相手にしないし、ガチすぎると触れようとしなくなる。
SUPER BELL"Zはかゆいところに手がとどくマニアさがある。たとえばこれだ。


鉄道好きなら誰でもつっこみたくなる狩人の名曲「あずさ2号」の歌詞に一つの答えを示した。
歌詞を引用しよう。

八時くらいのあずさじゃなくて
かいじで行きます
八時過ぎたらあずさじゃなくて
かいじで行きます

ちょうどいいくらいの修正具合。かいじ長野県行かないけど。
あずさのダイヤはダイヤ改正のたびに変わる。八時でないことも珍しくない。
それに対してある程度の対応を可能とするよう、八時近傍にはあるだろう、という修正がやばい。とてもスッキリする。
このように歌詞もすばらしい。めんどくさい鉄道マニアも納得する。
近くの人間からも反発が少ないのは何よりも大いなる武器となる。

こんな三つの武器を持っているんだから売れても不思議じゃないのだ。

 

くるり岸田氏との“競演”

さてロック界の鉄道マニアといえばくるり岸田氏の名前があがる人間も少なくないが、野月氏と岸田氏は鉄道対談を行ったことがある他、人気私鉄京浜急行電鉄をテーマにした曲が共にある。
実際に双方をきいてみて、この項の締めとしたい。



どちらもこいつらの武器をフルに使っている。
情景描写の達人くるりの音楽と妄想鉄道の達人SUPER BELL"Z。
同じ車両にのっていても人は本当に見ている風景が違うのだなぁ、と感じさせられる。
そして、双方共に鉄道趣味を趣味でないレベルに昇華しているのだ。達人は何でも武器にする。

売れないことに不思議はあるが、売れるという事象に不思議はない。
もし売れないことに悩んでいるバンドマンがいるならこういうグループを研究してみるのも面白いかもしれない。

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