何故BIGMAMAはブレイクし切ることができなかったのか。
あなたはRX-RECORDSというインディーズレーベルを知っているだろうか?
最近移籍してきた有名どこではTOTAL FAT、コアな音楽好きには認知されているRIDDLEなどが所属していて、今でいうならテレビにも多数出演、音楽好きでなくてもそれなりに名が通るようになってきた[Alexandros]が看板を背負っているレーベルだ。
しかし、実はこのレーベル――今でこそ[Alexandros]が稼ぎ頭という感じだが、昔は違った。
2009年~2012年頃、このレーベルを背負い、ロックシーンの最前線まで駆け上がりそうな盛り上がりを見せていたバンドが、彼らの他にいたのだ。
それが、BIGMAMAだった。
当時、Yellow Cardも知らなかった僕が、最初聴いた時はそりゃもう衝撃だった……基本はスタンダードなパンクロックでも、そこにバイオリンを溶け込ませることで、そこらのバンドとは一線を画す音を出していた。
それからはもう、アホみたいにCDを聴いていたし――聴かせる力が、彼らにはあった。歌詞の面白さ、展開の上手さ、サビのキャッチーさ。どこを取っても、褒める場所しかなかった。
そんな彼らがなぜ、今は人気が落ち着いてしまっているのか……その辺り、考えていこうと思う。――ちなみに、刺激的なタイトルの割に、アンチな内容にはしないつもりなので、ファンのみなさんには怒らないで頂けるとありがたいです(震え声)。
初期BIGMAMA
いま聴き直してみると、そんなに気をてらったことはやっていなかったんだと思う(曲展開は高度だけど)。ただキャッチーなメロディーに乗せて、彼らの思うカッコイイをやっていたに違いない。――そしてそれは、実はそう簡単にできることではない。
あと、やっぱり繰り返しになるが……バイオリンの魅力はマジで大きかった。リスナーの印象に残るよう、何度も繰り返されるギターの音に対して、ギターリフ、という言葉があるが、BIGMAMAに関しては「バイオリンリフ」という言葉を使いたいくらい、バイオリンがメインを張っていた。――またそこに、ギターが負けじと絡んできたりして、もう最高。作詞曲をやっているVo.金井さんは、こういう展開が本当に上手いと思う。
具体的なアルバムで言えば、1st(Love and Leave)から3rd(and yet, it moves 〜正しい地球の廻し方〜)あたりまでが、この路線だった。そして、BIGMAMAというバンドに脂がのっていたのも、この頃で――僕が大好きだったのもこの時期だ。
後期BIGMAMA
しかし、彼らは変わってしまった。音楽性も、そこに乗る歌詞も。
音楽性に関しては、このMV以外にも、ざっと後期のMVを観てもらえればぼんやりとわかってもらえると思う……なので、ここで取り上げるのは、変化を遂げた歌詞の方だ。
もしも運命の赤い糸が
今はその目に見えなくても
信じていれば必ず繋がる神様にバレないように
真っ赤な嘘で染め上げよう
偶然はない すべては自分次第《A KITE》
後期の彼らはこのように、聴く者に語りかける形の歌が多くなった。BIGMAMAからリスナーへ、直接届けたい言葉を使い、歌にする。……一般的な歌詞、と言っては誤解を招きそうだが(この曲はともかく、「ex-extra」など、言葉選びが抜群な曲もあるので)、作詞の手法としてはオーソドックスだろう。
それでは、それに対して、前期の歌詞はどうだったかというと――。
She waited in the line to get a better class
And stayed up all the night to slip on the tender glass
"Oh my god. It does not fit for me ..."
"I don't care anymore." She crammed it into the wheel
She never gave up wearing with her bloody heel
Your destiny should be changed by your hand
It's needed by all over the world now(対訳)
前日徹夜で行列並んで我先にと靴を履きます
まずいぞ、しかしサイズが合わない
かかと潰して無理矢理シンデレラ
ガラスで若干血まみれですが
そうさ、今のご時世
運命は自分の手で手繰り寄せるもんさ《Cinderella ~計算高いシンデレラ~》
こんな感じで、ストーリー仕立て。幾人かの登場人物を動かして、伝えたいことをリスナーに語りかけることが多かった。――どうでもいいけど、やっぱ改めて見ると、この曲の歌詞面白いな……「靴のサイズなんてそんなに変わらんし、シンデレラって実は強かな女性だったんじゃ?」という発想も面白ければ、そこにカノンをぶっ込んで曲にしちゃうのほんと素敵。
こういった寓話的な歌詞は、古くはBUMP、近年ではニコニコ界隈でも流行った手法だけど、これ程までに「物語」を面白く歌詞に落とし込めていたバンドは、BIGMAMA以降あまり出てきていない気がする。
しかし、先述した通り――そういった部分も、彼らは変わってしまった。
ただ、本音を言わせてもらうと……僕個人としては、後期の路線もこれはこれで好きだった。そりゃ曲調は大人しくなってしまったし、物語を綴る歌詞も減ってしまったけれど、アルバムを通しで聴けば、初期の良さが残っている曲もあった(←ここ超大事)し、4thアルバムの『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』なんかは、完成度の面で言えばBIGMAMAの中で一番なんじゃないかと思う。
けれど、それに客がついてこなかった。
『CPX』、『Paper-craft』、『かくれんぼ』――これらの曲に心を鷲掴みにされ、BIGMAMAを愛していた人にとって、後期の彼らは退屈なものになってしまった。だからこそ、その人気は上昇を止めたのだろう。
(余談だけれど、新譜『The Vanishing Bride』のMVは絶対、『A KITE』ではなく……絶対に『Flameout』で作った方が良かった気がするんだけど! あんなBIGMAMAのいいところを煮詰めたような曲を、なぜ販促に使わなかったんや……!)
今のBIGMAMA
それでは最後に、初期、後期ときて――現在。
新しい方向へと歩き出した「今の彼ら」はどうなのか、ちょっと聴いてみよう。
……おい、誰だいま「なにこの謎設定とPV(笑)。てかダンス(笑)」って笑ったやつ! ばっかもーん! 曲を聴かんか、曲を!
でも、本当にちゃんと聴いてみてくれ。――結構面白くないか? これまでとは別のベクトルを走ってるけど、これはこれで良いと思えないか?
BIGMAMA、昔は好きだったけど今は……っていう人。もしくは、彼らのことを知らなかったけど、この記事で気になってくれた人は、どうか彼らに改めて触れてみて欲しい。今ならベストプライス盤なんてのも出てて、お買い求めやすいぞ!(ダイレクトマーケティング)
以上、僕の大好きな彼らが、今年こそブレイクを果たすことを祈って、この記事の締めとさせて頂く。
ここまで読んでくれて、ありがとう。
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