なんかクリープハイプって誤解されてない?
尾崎世界観から
とでも言われてしまいそうなお節介だけれど、クリープハイプは誤解の多いバンドだと思う。彼らのイメージを人に聴くと
「ああ、あのイマドキの売れ線バンドね」
「今度会ったらセックスしよう!の人ね」
「なんか下ネタばっかのバンドでしょ」
うるせえ!なーにが下ネタが嫌いだよこの野郎。お前ら生まれてくるときどこから出てきたんだよ。言ってみろオラ。
万人に好かれようなんかない以上、ファンじゃない人間に悪いイメージを持たれるのは仕方ないとして、彼らの場合応援してくれているはずのファンの行動までもが、一部悪い方向に転がって彼らの枷になってしまっている。そんなのは、バンドにとっても、ファンにとっても、ファンになれる人にとっても、もったいないことだ。誰も得をしない。
イメージと声質の取っつきづらさから、邦楽を聴き飽きた20代なんかは聴かず嫌いで素通りしてしまいがちだが、クリープハイプはむしろそういう人たちこそ「良いじゃん」と思って聴ける、昨今じゃ珍しいバンドだ。
この記事をきっかけに、彼らを通りすがった人たちももう一度彼らの音楽を聴き直してみて欲しい。
ファンはバンドを体現するのか
歌詞のテーマが性に関するものが多かったり、有名曲のHE IS MINEばかり取り沙汰されたりと、そういう所から"チャラついた"バンドだというイメージが流布しているようだが
一番はコレだと思う。地獄みたいな画だないつ見ても。いつだって問題を起こすのは根からの悪人なんかではなく、テンションが上がっちゃった奴だ。悪気があったわけじゃないとは思うが、猛省して欲しい。
当時から足繁くライブに通い詰めていたわけでもないので、言い切ることはできやしないが、元のファンはこんなに若い子たちばかりじゃなかったように思われる。
今でこそファン層は十代が大半を占めるが、それは何というか売れたバンドの宿命であり、メジャーで売れれば中高生が飛びつくし、逆に言えば中高生の間で人気が出なければバンドは大きな成功を描けない。
しかしだ。自分も、よく思い違いから偏見を抱いたりするが、若者に支持されているバンドだからといってマッシュヘアでも10代でもない人間には聴けない音楽だとは限らない。
人気に火がつくまでに出したCDは6枚ほど、今に至るまでに歌詞はちょっとだけわかりやすい表現に寄っているように思えるけれども、歌っている内容は今でもずっと変わらずガキみたいな大人に向けた内容だ。尾崎の歌詞が腹の底に沁みるようなマセた中高生なんか、ヤだよ。願わくば年相応にワンオク聴いてリプトン飲んでてほしい。
深夜のコンビニの店員が缶ビールを買う客に舌打ち
いつも使ってるスタジオのお気に入りの部屋が取れなかったし
彼女が妊娠しているかもしれないらしい
全くホントにムカつくぜもうビールなんか飲んでる場合じゃないっすね
―バイトバイト
憂鬱を売り物にしていると見るか、馬鹿正直な本音と見るかは人によるだろうけれど、人間が本当に触れて欲しくないキツい所に土足で踏み込んでくるこの歌詞性。好き嫌いとかじゃなく、無視できない人にはとことん付きまとってくる呪縛のような重さがある。
よくIndigo la endと抱き合わせで扱われているのを見るけれど、両者共に歌詞のテーマに男女間の苦い経験が多いだけでその中身は全く別物だ。
川谷の書く歌詞の方は清潔で、綺麗に飾り立てられ、しっかりエンターテイメントとして商品化されているが、尾崎の、特に初期の歌詞は無加工で刺々しい危うい内容となっている。
そういえばクリープハイプって水商売や風俗で働いている女性の間でちょっと人気あるんだって。やっぱり職業柄ABCとかヴィジュアル系とかボカロとか聴いてる人が大多数みたいだけど、それでも邦楽ロックの中じゃクリープハイプが一番人気らしい。
人気が出て、たくさんの人が聴くようになって、町で、テレビで歌を耳にするようになると、歌詞も音楽性もチープに感じて俺たち捻くれまくった人間からすれば
「売れてる歌に共感しちゃうなんてそこらへんの凡人の感性みたいでダサいな」
と無意識に遠ざけてしまったりする。凡人のクセにな。
しかし良くも悪くも売れてるかどうかなんていうのは内容に関係ないはずだ。
今売れ線と言われているバンドと共通するところを挙げろと言われても、髪型ぐらいしか思いつかない。ギターとドラムの音なんか本当にローファイでCD音源を聴いてもイングランドの売れないバンドみたいでペラッペラ。俺はこっちの方が好きだよ。
最後まで歌詞に話が集約するが、尾崎の少しスレた歌詞は本来こんなに世の中に肯定される内容じゃなかったんじゃないだろうか。
たまたま、彼らが売れ始める頃にちょうど"浅野いにお"とかが作った大きな池ができていて、そこにクリープハイプが見いだされたように思える。だから、ちょっと外から見て歪な形になっているだけだ。
「クリープハイプを聴いてるなんてダサい」
なんて思ったりするのは人目を気にしすぎる俺やアナタみたいなヤツだけだから、安心して聴いてほしい。凡人が共感できる歌詞だから売れたのだ。凡人の俺たちに共感できないわけがない。
繰り返すけど、売れてる音楽を聴いてるのがダサいわけじゃないよ。売れてる音楽を聴いてるヤツがダサいだなんて思ってるヤツの方がずっとダサいよ。