RADWIMPSが売れた理由は気持ち悪かったし、もう気持ち悪くないから。
「今一番売れてるバンドって何ですか?」
難題だ。何と答えてもいじわるな音楽好きに難癖付けられそうだ。猫のアイコンのおっさんにハッシュタグ付きで140文字パンパンに詰まった文句のリプライが送られてくるのが目に浮かぶ。
ミスチルとかB'zサザンみたいな現役のビッグネームを挙げるのが妥当か、はたまたおいしくるメロンパンとかポルカドットスティングレイのような人気急上昇中のバンドを取り沙汰せばいいのか。
しばらく考えてみたんだけれど、RADWIMPSが一番しっくりくる答えなんじゃないか?と思った。
だって、そりゃ総合セールスとか規模感で言えばミスチルみたいなバンドの方が上かもしれないけれど「今一番売れてる」と言うにはなんか違和感ある。ありません?
たぶんこれって、新規顧客を獲得しているかどうかって所だと。
たしかに、ミスチルは現役のバンドだけれど、新規ファンをガシガシ捕まえて若い世代の支持を集めているバンドっていうよりは、昔から根強く応援してくれている長いファンに支えられているバンドという印象。
ともすれば、うら若き十代の支持を最前線で根こそぎ刈り取っているバンドと言えば、RADWIMPSになるんじゃないかと。次点でマイヘアバックナンバー。
そんなRADWIMPSの話なんですけど今日は、このバンドが音楽的にどうだとかかっこいいだとかそういう話は一切ナシ、しません。ファンの中学生の子がYouTubeのコメント欄に親のスマホで必死に書き込んだアツい愛のメッセージに勝てるわけがない。10代の文字の筋力に勝てるわけがない。どんな音楽ライター崩れが言葉をこねくり回して褒めたたえた文章よりも、本気でそのバンドを愛してる子のああいう書き込みが一番真実味がある。勝てない。
ので、俺はですね、商業という部分に的を絞って今日の記事を書きたいとおもいます。誰にも聞かれてないのに、説明したいと思います。聞いてください。
RADWIMPSは何故売れたのか?
ファンからしたら
「かっこいいからでしょ」
の一言で終わっちゃう話題なんだろうけれど、意外とラッド苦手っていう人もいると思うんですよね。いや、いるんだよ。こういう話題に触れると無条件で激昂する過激派のファンの人いますけどね。そういうところですよ。お前と洋次郎のそういうところ。具体的には
もう決めたもん俺とお前50になっても同じベッドで寝るの
こういう人の話全然訊かない感じな。
このもう、歌詞の中に出てくる"お前"の気持ちなんか一切無視で一人で突っ走って行っちゃう感じ。わかりますか。一歩間違えたら簡易裁判所から接近禁止命令出そうな感じ。ナチュラルにストーカー気質。
女性たちがどんな異性に惹かれるか、さまざまな好みがあるように
「こういうちょっと強引で子供っぽい男の人好き!」
っていう方もいれば
「怖いし普通に引く、そもそも帽子のセンスが嫌」
っていう方もいらっしゃるわけですよ。
これが嫌われる理由の一つ、且つ狂信的なファンを獲得している理由なんじゃないかと。
RADWIMPSが他のバンドと比べて優れているのが、この狂信者の多さ。ファンの強度と言っても良い。
ファンに種類をつけるなんてナンセンスだけれど、あえて言うならば
「ラッドが一番好きなファン」と「他に一番好きなバンドがいるけどラッドも好きなファン」
の二種類に大きく分けることができる。どのバンドもそう。一番好き!と応援してくれるファンと、ほかのバンドと並行で応援してくれるファンと、二種類のファンがいると思う。
RADWIMPSがすごいのはこの「一番好きだ!」と公言して応援してくれるファンの多さ。
これって、一部に嫌われちゃうような歌詞を書いてるからこそだと。
たとえば仮に、RADWIMPSの歌詞が差し障りのないものだったとしたら、たぶん今ほど「ラッド苦手」っていう人はいなかったはず。だけれどその分野田洋次郎を神様のように崇めて信奉するファンも絶対少なくなると思う。
八方美人的な歌詞じゃなく、刺さる人にだけ刺さる、ある意味気持ち悪い歌詞を書き続けてきたが故に今の人気があるんじゃないか。
ギアチェンジが上手い
よく「RADWIMPSは前前前世の一発屋だ」と言われることがあるけれど、そりゃ全くの間違いで、テレビ露出がなかっただけでバンドシーンで言えば2000年代からずーーーーーっと長いこと売れ続けている、かなり特異なバンドだ。
この4枚目のアルバムまで、勝手に初期ラッドウィンプスだと俺は思ってるんですけど、この頃にはもうとっくに若者の間じゃ一般層にまで広まっていて、俺は当時高校生とかだったんだけど、あんまり音楽とか好きじゃないっぽい先輩とかカラオケでRADWIMPSを歌っていたのを憶えている。流行ってました。
で、ファンの人ならわかってくれると思うんだけれど、この頃らへんまでがピークで歌詞が女々しくて相当気持ち悪かったんですよね。(褒めてます)
言葉で伝えるの難しいからあんまり音楽の話したくないんだけれど、サウンドもここまで統一感があった。当時めちゃめちゃ新しかった。発明だった。というか、いまだにこういう音使いのバンドっていない、絶滅した。
歌詞と音楽で、しっかりファンをつけていったのがこの時期。
そこからまた一つ知名度を伸ばしたのが
アルバム名も変わって5枚目のアルトコロニーの定理。とくにこのリード曲、おしゃかしゃまが当時の少年少女に与えた衝撃たるや。
元々ファンだった人も、初めてラッドウィンプスを聴いた人も
「何ですか、これは」
とショックを受けた。ここで、誰もが認めるスーパーバンドになったんだと思う。
そんな経緯を経て満を持して
前前前世の大ヒット。
6枚目の絶体絶命以降の歌詞って、女々しさ70%オフでもっと哲学的な内容だったり、恋愛詞にしてもストレートな表現に寄って気持ち悪さが抜けた印象。
本当の意味でメジャーなバンドになるために、今まで切ってきた「ラッドの女々しい部分がキライ」という人たちにも聴いてもらえる歌詞に変化していったんだと思うんです。
例えば、いくら大ヒット映画の主題歌だったとしても、初期RADWIMPSの歌詞性だったらば、あんな大ヒットにはならなかったんじゃないかと。
要するに、自分たちの売れ具合によってマニュアル車の変速みたいに、ギアを着実に変えていってるんですよね。
初期は強固なファンをつかむために女々しくて気持ち悪い歌詞を、中期は音楽的に圧倒的に認められるような楽曲を、そして最近はさらに多くのファンを獲得するために大衆にも響くストレートな歌詞を。野田洋次郎はマジで頭が良い。ラッドウィンプスが売れたのは偶然じゃなくて、才能はもちろん、経営者的な頭の回転があったから必然的に売れたんだと思います。野田洋次郎が会社とか経営してたらヤバいと思う。日本のGDP上がるマジ。
そんなわけで、ちょっと長い記事になってしまいましたね。納得していただければ幸いです。
それでは。