BASEMENT-TIMES

読める音楽ウェブマガジン

ホーム
アバウト
人気記事
月別索引
オススメ記事

WHITE ASH のび太のクセに"洋楽"は生意気だぞ!

メジャー後、WHITE ASHの人気は確実に減退している。

フロントマン、のび太の見た目こそ色物ではあったが、音楽性やバンドとしての地の力は本物。初期のちょっぴりふざけていた成分も年々薄らぐ一方で、楽曲の内容は濃くなっていっている彼らだが、メジャーデビューを境に、なぜか人気は下火になってきている。好きなバンドだけに口惜しい。

バンド自体は立ち止まってはいないし、タイアップも人気アニメやテレビCMなど顧客層とマッチしたものばかり。運も実力も努力も十分だ。条件だけみれば人気が落ち込む理由がない。
だがもしその失速に理由があるとすれば、バンドの良し悪しのみでは語れない部分だろう。

今回はそんなWHITE ASHの現状と過去を比較しつつ、彼らの失速からバンド市場が何を求めているか、そんな大それたことを考えていきたい。

のび太

ファンのみなさんはご存じだろうが、このバンドのフロントマンである眠そうなメガネ。名を「のび太」と言う。
そう、あののび太だ。青いドラム缶の承認欲求満たし器のアイツ。由来は言わなくてもわかる通り、似ているから。ちなみに他のメンバーは普通に各々の名前を名乗っている。ベースの女の子はしずかちゃんだったりはしない。

真面目にやれよ。そう思われる方もいるかもしれないが、思うにこの「のび太」というふざけたポジショニングこそ彼らの人気爆発のミソである。

「なんだよのび太って…ふざけ……、あれ曲も声も超カッコイイじゃん…」

これである。「のび太のクセにかっこいいぞ!」と俺たちの心のジャイアンが刺激されどんどん口コミが広まり一躍メジャーデビュー。
なんだか裏口入学のような駆け上り方だが、バンド業界においては珍しい話でもなく他に例を挙げるなら、ゲスの極み乙女。の名前だったり、マンウィズの被り物だったり、SHISHAMOの顔面だったり。ヒットを打てるバンドの多くは音楽性以外の何らかの話題性を持っている。
「このバンド曲めっちゃかっこいいから聴いてよ!」
よりも
「のび太がめっちゃ歌上手い」
の方が、はぁ?のび太が俺を差し置いてリサイタルだと?と興味を引けるわけだ。

しかし世にひしめくバンドのみなさんもそれは重々承知であり、話題性に事欠かぬようただ個性的なバンドなら掃いて捨てもまだ余るほどにいる。WHITE ASHがその中から一歩出し抜けたのは他ならぬ楽曲の良さだろう。なんだかんだ言っても結局はそこである。彼らの音楽は、新しかった。

 

洋楽?

ジャギジャギのシングルコイルサウンドはナンバーガール以降の邦楽のそれだし、手数の多いドラムは丁度2010年代の流行り。音像だけ切り抜いて考えれば完全に邦楽。しかしブルーノートを絡めたシンプルなリフ、のび太独特の歌声、それらが既存の流行り・売れ線とは違う新しい音楽性となり得た。

イントロからサビまでの流れも、邦楽らしくちゃんとサビで音程を跳ね上げシンバルを殴り盛り上がりをつくってはいるが、わざとらしくBメロで落としたりはせず山が突然やってくる。サビ感だけでなく邦楽にはない演奏のリフレインで山場を作る楽曲を持って来たりと、邦楽ロック専門の若いリスナーにも聴ける邦洋合いの子バンド。文字にするならこんな所だろう。

そんな彼らの楽曲が似たり寄ったりの邦楽シーンに飽きたリスナー達をガッチリ抱き込んだ。が、そろそろ昨今の楽曲の話をすればこの"洋楽っぽい部分"が今の失速の主な原因じゃないかと思っている。

 

個人的には、以前にも増して好き。新譜は本当に良かった。が、ますます既存のファンは離れて行ってしまうのでは、と色々と考えさせられる内容だった。

打ち込み音楽の要素を取り入れたり、以前にも増して全体を通しての盛り上がりを重視した音楽にはなっている。ギターの音もよりローファイになりウケる所にはウケるハズの楽曲だ。
しかし一番勢いのあった当時の楽曲と比べると明らかに洋楽成分が増えている。というかまったく彼らを知らないまま楽曲を聴かされたら洋楽だと思っても仕方がない仕上がり。のび太の歌を除けば邦楽っぽい要素はほぼほぼ消滅してしまった。

こうなってくると移り気な若年ファンの心を繋ぎ留めておくのは難しく、それが明らかに数字となって結果に表れているのがまさに今だろう。

 

楽曲は本当に良い。ライブで聴きたいと思わされる曲ばかりだ。

しかしだ。今手放してしまったファンたちは、キャリアを重ねればいずれどこかに行ってしまう、良くも悪くも太く短いファンだ。やりたい事を我慢してそこに寄り添いつづけるのも案パイではなかっただろう。

現状はWHITE ASHにとって厳しい。このまま低空飛行じゃメジャーからの契約も危ういかもしれない。しかしここからまた新しい"細く長いファン"を獲得していければそれはバンドにとって大きなプラスだ。

今のWHITE ASHには、楽曲で、ライブで、そういったファン達を楽しませるだけの力がある。

がんばれのび太。負けるなWHITE ASH!
影武者の黒人のみなさんは一体どこへ行ったんだ!

band-white-ash-mask9

[amazonjs asin="B00QP45R9E" locale="JP" title="THE DARK BLACK GROOVE"]

オススメ記事

記事検索

オススメ記事