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ミクスチャーロックという言葉が死語になりつつある

linkin_park_-_hybrid_theory

 みなさんはミクスチャーロック・ミクスチャーメタルというジャンルをご存知だろうか。言葉を聴いてバッとジャンルのイメージが出来る人は20代後半から30代の人のはず。年を取りましたね。

 ざっくり言葉の説明をするならば、ミクスチャー(混ぜられた)ロックという意味で、主にヒップホップ等のロック以外の音楽の要素を取り入れた音楽ということである。とまあ定義としては他のジャンルの要素が入ったロックということになるのだが、ミクスチャーに分類されるバンドの大半がラップで歌うため、ラップが入ったロック・メタルという意味でミクスチャーという言葉を使う人も少なくはない。

 因みにこのミクスチャーという言葉は和製英語で、外人には通じないし、日本独自の概念であるのでインターナショナルな読者は注意されたし。

 

 全盛期の90年代末期から00年代中盤あたりでは本当に凄くて、売れてるバンドは殆どミクスチャーな時代だった。今の20代後半から30代前半くらいの世代の人たちでは、ロックならミクスチャー派とメロコア派の二大勢力みたいなそういう雰囲気。大体どのバンドもみんなラップしていた。

 その世代の人たち、青春の象徴がミクスチャーだったという人は少なくないんじゃないだろうか。


Linkin Park - One Step Closer

 コチラはミクスチャーの中でももっとも商業的成功を収めたバンドの一つ、リンキンパーク。初期の頃の一曲である。

 サビでラップで合いの手を入れる辺りはモロミクスチャーの特徴であるが、ミクスチャー独特の”ノリ”もふんだんに含まれている。コチラに関しては後々説明しよう。

 ちなみにPVはダサい。当時からダサかったが、月日がたてば一周してかっこよくなる気もしていたが、やっぱ今見てもダサい。でもカッコいい。


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 ミクスチャーを知っている人からしてみれば、コイツは何を今更ミクスチャーの話をし始めたと思われるかもしれないが、ミクスチャー世代の人達よ、驚くなかれ、このミクスチャーという言葉、現在凄い勢いで死語と化している。

 実は、この記事を書く以前にもう一本「最近ミクスチャーロック復権の兆しがヤバイ」というタイトルで記事を書いていたのだが、その際に同僚に「ミクスチャーって言葉今はマジで通じないよ」と言われ、とりあえずツイッターで”ミクスチャー”という言葉が含まれている呟きを検索してみたのだが、これがまあ少ない。

 冷静に考えてみれば、私の世代で既にミクスチャーという言葉が通じたのも一部の洋楽好きのバンドマンばっかりのような気がする。そういえばバンドやってる後輩の女に「ミクスチャーがさあ」と話た際には、タイ料理かなんかの話をしていると思われたこともあったしなあ。ちなみにその前の記事はボツになりました。

 言われてみればミクスチャーという言葉が出てきた当時は、ロックでラップするのもヒップホップやらファンクのリズムを取り入れるのも一般的ではない時代。そういう時代だからこそ必要な言葉だったのかもしれない。

 今となっては、ミクスチャーがひとしきり流行って、ロックも当然のように他のジャンルとクロスオーバーするようになったということだろう。確かに言われて見れば、ゲス極もロックでラップしてるのに、ミクスチャーといわれてるとこみたことないもんな…。

 ちなみにリンキンパークにせよリンプビズキットにせよレイジアゲインストザマシーンにせよコーンにせよ、その辺りのミクスチャーの代表的なバンドのウィキペディアページのバンドプロフィールからはミクスチャーという言葉が削除されている。確か前はあったはずなんだけど、言葉が刈り取られたのか、公平さを保とうとすると削除する必要があったのか、まあ確かに曖昧な言葉ではあったけど…

 この今にも消滅しそうな「ミクスチャー」という概念。青春を共にした25才としては見殺しになんてできないしたくない。ということで今回はこの"概念"をみなさんに布教したい。

 

”ミクスチャー”という概念

 先ほども書いたが、現在ミクスチャーという言葉が死語となりつつあり、以前ミクスチャーと呼ばれていた音楽は、重たい音楽全般を指すラウドロックという言葉やラップロック・ラップメタルという言葉に置き換えられつつある。

 先ほどボツになった記事でも「ミクスチャーという語の代わりにラップロックという言葉で置き換えてはダメなのか?」という案が出たのだが、これがダメなのである。


Incubus - Drive

 例えばコチラは”ミクスチャー”の代表的なバンドの一つ、インキュバスの代表曲で"Drive"である。

 彼らはラップこそしないが、DJプレイや、弾力のあるヒップホップ的なノリや、フレーズをループさせながら展開していくアレンジなどなど、それまでのロックにはなかった要素を、ヒップホップその他の音楽から輸入したまごうことなき”ミクスチャーロック”なのである。

 ただミクスチャーではあるのだが、その代替語であるラップロックやラウドロックではない。インキュバスはあんまりラップしないし一部ヘビィな曲があるが、ラウドロックに分類されるほどヘビィ一辺倒というわけでもない。

 

”ミクスチャー”という言葉が廃れるのはしゃあないけど、割りと大事な概念だったんじゃないのか?

 さて、上の例のように現在ミクスチャーの代替としてラップロックやラウドロックという言葉が使われているが、正直全然代替になっていない。というかミクスチャーと言う言葉が廃れたので便宜上別の言葉を当てる必要があったという感じだ。

 こういう言い方をすればミクスチャーという言葉が使われなくなるのは少々もったいないような気もするが、逆に廃れて当然な理由もある。

 一つは先ほども書いたが、日本独自の概念という理由から、もう一つはこの言葉がクソ曖昧なことである。

 冒頭にも書いたが、90年代後半から2000年代中盤辺りまでのミクスチャーの勢いは凄まじかった。海外のロックもミクスチャー的な要素をもったバンドが席巻していたし、日本でも売れてるバンドの半分くらいはラップしてたりという状況。

 そういう理由もあってミクスチャーに分類されるバンドの範囲がめちゃくちゃ広かったのだ。

 海外ではレッチリ辺りのいわゆるミクスチャー的な流れの前からラップとロックを融合していたバンド、レイジアゲインストザマシーンのような硬派なバンドやリンプビズキットに代表されるチャラいバンド。

 国内でもDragn Ash、RIZEや山嵐といったちょっと怖い系のお兄さんがやってるバンド、オレンジレンジのようなチャラそうなバンドもいればHYみたいな洒落たバンドも、UVERworld、ラッドウィンプス、書き出せばキリがないのだが、これら全然音楽性が違うバンド達がひっくるめてミクスチャーと呼ばれていた。

 


Mad Capsule Markets - Good Girl

 これもミクスチャーだし。


HY - A.M. 11:00

 これもミクスチャー。

 コレは極端な例だが、それでもこれらは他ジャンル特にヒップホップから影響受けているという共通項がある。

 

 思うに例えばヤンキーと一口に言っても、人によってはただの田舎の工場勤務の茶髪の兄ちゃんのことを指していたり、人によっては殆どヤクザと変わらないレベルのド悪いやつのことを指していったりと言葉というのは元々が曖昧なものである。

 ただヤンキーの語が実際に指すものの差異はあっても基本的には「悪いやつ・悪そうなやつ」というイメージの言葉である。

 ミクスチャーという言葉は確かにクソ曖昧な上、人によって指す音楽がてんでバラバラではあるのだが「他のジャンルと融合している」という共通認識を持った語なのである。

 ただミクスチャーという語が廃れた今、上のバンド達が共通してもっているミクスチャー的な要素、その要素をもっている音楽をひっくるめて呼ぶことが出来なくなっているのである。

 

言葉が死んで概念も死んだ

 少々哲学っぽい話になるが、人間は言葉で概念を認識するといわれている。

 例えば、最近はあんまり流行っていないが「草食系男子」という言葉がある。ザックリ言えば恋愛に消極的な男性くらいの意味だが、あの言葉が生まれた途端に、今までは見えなかった「草食系である、草食系ではない」みたいなのが分類できるようになる。

 ミクスチャーも同様で何かハッキリとた特徴よりもフィーリングレベルでの、ミクスチャー的である、ミクスチャー的でないといった、ミクスチャーという言葉でしか説明できない概念を持っていた。

 言葉が廃れることに対しては特に何か言いたいことはないが、なんか大事なものを失った気がするんだよな…

 

 結局今回の記事はミクスチャー好きのおじさんたちにしてみれば今更言うような話ではないまま終わってしまったが、ミクスチャーという語をしらない若い諸君には、一度ミクスチャーという切り口で音楽を覗いてみるとまた新しい発見があるかと思う。

 ということで今回はこの辺りで。

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