透明 青葉市子
唐突だがみなさんは「透明」と「無色」の違いを説明できるだろうか?
そもそも「透明」とは透けて見える状態のことであり色ではないらしい。「無色」は色が無いという色らしい。
つまり向こう側が透けて見えるような状態であれば「透明」な状態であり、色がついていても透けて見えていれば「透明」になるのだそうだ。
青葉市子とはそんな「透明」な存在であり、また様々な色を持つシンガーソングライターである。
透明である。色は白色だろうか。
冒頭の声だけの部分。筆者はあまりに澄み切った音に声だと気づかなかった。
声だけでここまで世界観を表現できるアーティストはそうそういないだろう。筆者はシンガーソングライターとして一種の完成形だと思っている。
しかし彼女自信はシンガーソングライターになろうとしたわけでもなければ何かを表現しようとしたわけでもなく、ただ歌を歌うこと、それ自体が楽しいからやっているだけとのこと。
天才である。
彼女がクラシックギターで爪弾くフレーズはどれもこれも難解なものが多いが、それを歌いながら何気ない顔で弾き倒してしまう。
現在25歳である彼女は17歳の時にクラシックギターに出会いそこから自己流で現在の演奏スタイルを確立した。その後19歳の時に上京、すぐに1stアルバム「剃刀乙女」でデビューを果たす。この動画の曲は1stアルバムに入っている曲になるのでこの曲をわずか2,3年という期間で創り上げライブでこれほどまでの世界観を生み出せるほど昇華させたということだ。
天才である。
温泉宿でのライブ映像だ。3分5秒あたりで映る男性の寝顔がとても気持ちよさそうである。
またよく聴かないと聴こえないが5分1秒辺りで彼女が客席から聞こえてくる子供の声を真似しているのがわかると思う。おちゃめである。かわいい。筆者の心を射抜くには十分過ぎた。
この動画のように1曲の中にいくつもの展開を作り一つのストーリーとして完結させるという曲の作り方も彼女の特徴のひとつだ。2分16秒からの展開はまさにプログレ的展開だ。
天才である。
筆者は先日彼女のライブに足を運んだ。お寺の中で行われたそのライブには様々な世代の人達が集まりみな静かに彼女の歌に耳を傾けていた。
せわしない音楽が流行る今のシーンに逆行するかのようにゆったりとどこまでも透明な彼女の歌が幅広い世代に支持されている理由なのだろうと思った。