ロックンローラーだって救われたい 「家」/LUNKHEAD
春の番組改編期で、新しいテレビ番組、ドラマがドンドン始まってきている。
どうも、趣味がテレビ視聴のJKです。
というワケで、急いでハードディスクレコーダーの中を整理しなきゃ春ドラマを録画できない。
特番時期で膨れに膨れあがった番組たちが・・・
そんな撮り貯めたバラエティ番組をさっさと流し見して、消さないと。
とりあえず早く家に帰んなきゃ。
早く家に・・・家?
ハッ、家と言えば・・・
LUNKHEADが歩んだ11年の現在地10thアルバム『家』
デビュー11年目の愛媛県出身4ピースバンド。
下北ギターロックブーム創世記の生き字引の今作がメジャー返り咲きの勝負作である。
以前にも書かせてもらったが、このバンドの特徴は、歳月を重ねるごとに素晴らしくなっていく点にある。
デビュー直後のささくれ立った瑞々しい1st『地図』の頃よりも、オープンで明るいメロディを臆することなく鳴らし始めた渾身のセルフタイトル『LUNKHEAD』よりも、初のベスト発売から間髪入れずに放たれた驚くほどラウドで、かつキャッチーになっていった『孵化』よりも、桜井加入後の新たなストロングスタイルを提示した『[vivo]』よりも、インディーズに立ち還り、苦労の末に作り上げた最新作『メメントモリ』が、キャリアを通して見て確実に、彼らの最高傑作だった。
節目のオリジナルアルバム10枚目。
再びメジャーレーベルに戻ってきた今作『家』も果たしてそうなのか?
先行でライブ限定版としてリリースされたこの『シンフォニア』。
非常にLUNKHEADらしい曲で、アルバムのハイライトを挙げるとすれば、この曲だと思う。
疾走感と壮大さを併せ持つこのパワーチューンの安定感が、まずはこのアルバムが並のアルバムでは済まないことを匂わす。
再生ボタンを押してすぐに、必殺技の如く叩きつけられる疾走感溢れる前のめりなナンバー『MAGIC SPELL』。
そこから、ヒリヒリしたいつものランク節が始まるかと思ったら、先述の『シンフォニア』と『僕たちには時間がない』という陽性な曲が2曲続く。
その陽性具合も、とてつもなく高く、そしてメッセージ性も強い。
誰かの背中を力強く押せる強さと優しさ。
彼らが最も得意とする球種がしっかりコントロールされ、投げ込まれている。
5曲目の新たな定番バラード『うちにかえろう』まで聴いた時点では、今回は比較的優しめなのかな?と油断させておいて、『懺悔室』のような変化球を投げ込んでくる。
『ぐるぐる』以降、さながら麻薬のようにこう言うハジけた楽曲をアルバム毎に求めてしまいがちだが、ありがたいことに今作もキッチリ投げ込んできてくれてた。
ファストチューンもあったり、ブレイクナンバーもあったり、バラードもあったり。
明るくキラキラしてバラエティ豊か。
ここまではまあ、そんな印象だった。
それが覆された、文字通りぶっ飛ばされたのは次の曲を聴いた時である。
人をこんな殺したいと願う日が いつかこの僕にも来る日があったなんて
そこに救いだとか善だとか悪だとか、どうでもいい
”誰か教えて”
今までのLUNKHEADからは感じたことのない質感の曲である。
その感触が、今までの彼らのサウンドと、このアルバムの決定的な違いであることに気付く。
前作『メメントモリ』で、向き合った「死」と言うテーマをより掘り下げ、うまいこと、エグ過ぎない空気感で表現している。
トリガーとなったのは、昨年あったメンバーの大事故だろうか?
ともかく、彼らが向き合ってきた死生観の表現方法が「遂に爆発した」そんな印象を感じる。
「いのちだいじに」とか
「生きとし生ける者は尊い」とか
そんな美しくて崇高な死生観じゃなくて・・・
「誰の心にもいる化け物」
そして「ソレ」に怯えるフツーの人
この獣のような衝動の源泉をミクロだが鮮明に捉え表現している。
誰の心にも必ずあるだろう闇を臆することなく歌う。
今のロックミュージシャンが意外と目を背けてきた大題だ。
10代の子供たちが、ふざけあいの延長で、命を殺めてしまうようなこんな時代だからこそ・・・このテーマをもっと突き詰めて、そしてこういった曲が思春期の子たち、悩める大人たちの救いになればな、と思ってならない。
そして、こうやって通して聴くと、既発の曲も全然印象が変わるのがわかる。
『スターマイン』なんて、ただのお祭りソングかと思っていたが、うっすらだが「千川通りは夕風だった」のような、瑞々しい楽しさの中にも、切ない風景が見え隠れしてくる、聴くだけで胸騒ぎがするようなセンチメンタルな曲だったことに気付かされ、『うちにかえろう』という曲の意味する「うち=家」と言う単語も全く違う感触の物質になる。
『家』というタイトルは、家みたいなバンドになりたいのではなくて、あなたの様に10年の中で売れないながらも出会い応援し続けてくれたファンのみんなが俺らにとって家なんだな、と思ってつけたんです。
小高芳太朗 @odakayoshitaro
『家』とは、聴く者のことだったのだ。
正直に気持ちを開放した末に『家』と言うタイトルに行きついた理由がようやく理解できた。
限界まで向き合った死との対話の果てに、感謝を伝えざるを得なくなった。
ファンという存在に、救われている喜びが、このアルバムの陽性さを産んでいるのだろう。
ロックンローラーだって、人の子。
救われたいんだ。
そして、救われていることに感謝したいんだ。
でも、それにしても最後の曲、『玄関』にはたまげた。
曲調、歌詞の内容供に、問答無用の最後の曲である。
絶対に、ライブで最後にやるべき曲だ。
そんな曲に『玄関』とはよくつけたものである。
そして・・・
生きなきゃ それでも 生きなきゃ それでも
進まなきゃ これから 出かけなきゃ
”玄関”
帰ってきたかと思ったら、もう出て行くらしい。
『うちにかえろう』なんて言っておきながら、最後の曲でまた新たな冒険へ旅立つんだから、困ったもんである。
でも、それでいい。
もっと冒険して、もっとブレイクして、もっと大きなステージで、彼らを見たい。
もう一度デビューアルバム。
「窮鼠猫を噛む」と言ってしまえば某大阪のバンドがチラついてしまうのだが、このアルバムはそんな1枚である。
通して聴くと、圧倒的な熱量でやれることをやり尽くして、「まだ生きてるぜ」と咆哮を挙げる姿が目に浮かぶ。
もうベテランなのに、迷いも悩みも感じれば、ベテランらしさの優しさや説得力もチラ見せしながら、ポッと出たての若手のような勢いもある。
要は、詰め込んだ。
やれることは全部やった、カッコつけたり、考え込んだりせず。
結成して16年でデビューして11年も経ったバンドの素の到達点であり、決意の出発地点、そんなアルバムだ。
集大成とは、まだ呼びたくはないが、現時点では紛れもなく彼らの最高傑作だろう。
同世代のバンドが、次々歩みを止めたり、ステージを降りてしまったりとする中、止まらず走り続けたバンドの強さが凝縮されたこの『家』。
こういうアルバムがもっと売れると、日本のロックシーン、もっと面白くなる、絶対。
『家』/LUNKHEAD
01.『地図→家』
02.MAGIC SPELL
03.僕たちには時間がない
04.シンフォニア
05.うちにかえろう
06.金色のナイフ
07.神様なんていない
08.モリ
09.誰か教えて
10.懺悔室
11.スターマイン
12.玄関
「実際に聴いてぶっ飛べばいいと思う」とのLUNKHEAD本人からメッセージを噛みしめ、心して聴いて、心して書いてやりましたが・・・ヤバいアルバムでした。
最後に、1曲目の『地図→家』を聴いた瞬間の鳥肌は本気でヤバかった。
コレは、わかる人だけわかればイイと思う。
素敵なプレゼント、ありがとうございます。
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