ダサくないメタル Killswitch Engage
『メタルはダサい。』
長らく言われているが、ダサいと言われ喜んでいるフシがメタラーにはある。ドMだ。
もはやメタルがダサいのではなく、ダサいのがメタルであるといわんばかりである。
そんなダサいメタル業界に颯爽と表れ、禁忌を犯したやつらがいる。
Killswitch Engageだ。
禁忌
禁忌、それは『インテリジェンス』である。
『インテリジェンスに裏打ちされたかっこよさ』、これはメタル業界では禁忌なのである。
それを持ち込んでしまった。戦犯である。
Killswitch Engageは高い演奏性、ずば抜けたメロディセンスを武器に「メタリック・ハードコア」=「メタルコア」を世に知らしめた。
しかし彼ら、批判されることも多い。
メタルにしてはメタルしていない。ハードコアほどハードコアしていない。そういった面だろう。
アイアンメイデンしかメタルと認めないような層には総スカンを食らうこと山の如しであるが、私は声を大にして言いたい。
Killswitch Engageはかっこいい。
Adam Dutkiewicz
Killswitch Engageを語るには、彼を紹介せねばならない。
アダム・デュトキエヴィッチ、作曲のほとんどを手がけているギタリストだ。。動画で観てわかるとおり陽気な男である。
All That Remains, As I lay Dying, The Devil Wears Prada 等々をプロデュースしたことでも有名だ。
特筆すべきはバークリー音楽大学出身であること。超名門だ。
ここ出身のアーティストを追っていたことがあるが、しっかり学ぶと『頭の良い』クールな音楽に系統することが多いようである。
学んで得たインテリジェンスをメタル、引いてはハードコアに持ち込んでしまった。
彼の作る楽曲から染み出すインテリジェンスはここからきているはずだ。
バンドについては代表的なVoが活動中に2度変わっているため、二度楽しめる。
一人づつ取り上げてみていこう。Killswitch Engageのファンはどっちのボーカルが好きかを肴に酒が飲める。
ちなみに私は下戸である。
Jesse David Leach
ジェシー・デイヴィッド・リーチ。
復帰したりなんやりややこしいので省くが、二大ボーカルの一人だ。
Killswitch Engage - My Last Serenade
荒削りであるにも関わらず人を惹きつけるなにかが彼の歌声にはある。
これはかなり初期の曲で、ここ最近別人かと思うほど歌唱力が大幅に上がっている。彼を追うのも面白いだろう。
楽曲もいい。『インテリジェンス』、感じるだろうか。
メタルっぽいブレイクダウン的なパートから、疾走。
そのまま4/4拍子から6/8拍子に変わり、サビパート。
サビもハーフで落ち着くかと思いきや、3拍子で疾走。かなり練られた楽曲である。
こういう楽曲の仕掛けはアダムが担当しているらしい。
恐るべしバークリー。
この後の楽曲にも共通して言えることだが、彼らサビメロが本当に素晴らしい。
何が素晴らしいかって、『歌いやすい』のである。
ライブに足を運んだことがあるが、他のメタル系バンドに比べKillswitch Engageは客が一緒に歌う割合が多い。
メタルもハードコアも基本的に口ずさみにくいのである。
理由は様々だが、ハイトーンだったり、シャウト気味だったりだ。
一般ピーポーには敷居が高いのである。
その敷居を下げた意味でも彼らの存在は偉大であると私は思う。
Killswitch Engage--Always
ヘビィ系のバンドは例にも漏れず突然頗るかっこいいバラードを作り始めるのはなんなのだろうか。前世からの因縁かなにかだろうか。まぁいい。
彼らのバラードも超ド級である。
むしろこれだけ作っても売れるんじゃないかと思うほどクオリティが高い。
ソングライティング力の強さを思い知らされる。
この楽曲はもう一人のボーカル、ハワードが健康上の都合で脱退している間ジェシーが復活したときのものである。
ジェシーはこの際ボーカルオーディションに応募し、自身の力で返り咲いた。
Killswitch Engageを離れたあとも彼は力を蓄えていたのである。かっこいい男である。
Times of Graceというアダムとジェシーが組んだ別名義のバンドもあり、才能がケミストリーしている。そちらもおすすめだ。
Howard Jones
もう一人のボーカル、ハワードジョーンズ。
ちなみに、どちらかというと私は彼のほうが好きである。
Killswitch Engage - The End Of Heartache
何がいいかって、声が美しさを損なわない程度にこもっているところだ。
メタル系のボーカルでここまでしっとり歌えるボーカルは稀有である。
メタル的に異質、ハードコア的に異質な楽曲に、異質なボーカルが載ったこの感じがたまらない。
楽曲も素晴らしい。
アルペジオ(コードをバラバラに弾いていく奏法)の入れ方が本当にうまい。
つっこまれても責任はとらないが『アルペジオがいいよね~。』と言うと玄人っぽく聴こえるのでぜひ使ってほしい。
コードをバラバラに弾いていく奏法であるため、魅力的なコードを知っている、または創り出せる人間のアルペジオは人を惹きつける。
憶測になるが、この辺にバークリーが生きているんじゃなかろうか。
音楽性は違うが、凛として時雨なんかもアルペジオを武器にしているバンドのひとつだ。ちなみに彼は感覚寄りの天才タイプだと私は思う。
Killswitch Engage - The Element Of One
イチオシの楽曲である。神々しさを感じる。ボーカルはこもっている。
紹介し忘れたが、ギタリストのアダムはライブのたびに変な格好をしてくる。
今回はマントであるが、ツノをつけたり、スカートを履いたり、インテリジェンスとは程遠い装いが多い。
そんな彼だが、この動画を観てわかる通り、普通にボーカルがとれるレベルで歌がうまい。
やはり彼がこのバンドの核なんだと再認識させてくれる。
さてボーカルのハワードだが、よく謎のタイミングで客席にマイクを向ける。
普通この楽曲ならサビで向けないだろうか。お茶目である。
現在彼はDEVIL YOU KNOWというバンドで活動しているが、Killswitch Engageでの彼のほうが輝いて見える。
ぜひ自分の耳で確かめてほしい。
二人の人間が同じ楽曲を歌うことになるので、『どっちが好きか戦争』が絶えない。
海外では「ハワードVSジェシー」などといった動画もある。これも楽しみ方のひとつである。
常にお互いを比べられて仲が悪くなりそうなものだが、
Killswitch Engage - My Last Serenade Live (with Jesse & Howard)
仲良しである。
ん、今気づいたがこの動画アダムがいない?ん?え?アダム?わからん。
二人が仲良しならそれでいいのである。
批判されることも多い彼らだが、自身の力でメタル、ハードコア界隈に一石投じた姿がかっこいいのである。
批判する人間にKillswitch Engageよりかっこいい曲つくってみろハゲと伝えたい。
あ、いや、ハゲってハワードのことじゃないぞ。