若手UKロックのリリーフエース・The View
青春。それは甘酸っぱい響きを伴った言葉。誰もが皆、どれだけ求めたとしても、二度と戻ってこない時間・輝いていたあの頃の僕ら。懐かしき良き思い出を胸にして、未来へと一歩一歩進んでいく。・・・このように書き連ねてみたが、青春に楽しい思い出が全くと言って良い程ないのに気づいてしまった。彼氏彼女の恋はおろか、友達・仲間との友情、自分の全てを注いだサークル・部活動。うん・・・悲しいくらい何もない。
勉強さえもトップに立てなかったよ。ぶっちゃけ、遊んでたヤツの方がしっかり成績や単位を取ってたよ。
今日は、せめて、そんな情けない自分の青春の励ましや慰めであった最高のBGMを紹介する。
煌めく蒼のような音像
The Viewは2005年に結成されたスコットランドのバンド。2006年、彼らはThe libertinesピート・ドハーティのツアーバスのドアをノックしデモテープを渡すと、その才能を見出され、見事メジャーデビュー。“Franz Ferdinand, KASABIAN, Arctic Monkeysに続く大型新人の襲来”と噂は噂を呼び、瞬く間に人気が爆発した。
翌年リリースされた1stアルバム『Hats Off to the Buskers』に収録された二枚目のシングル曲。The Libertinesの疾走感と荒々しさを継承しつつ、The Beatles, OASIS等の伝統的ブリティッシュロックの抒情的かつ思わず歌い出したくなるメロディを併せ持つ。事実、OASISノエル・ギャラガ―はThe Viewを「同じスピリットがある。みんなを感動させるようなものがな。」と絶賛した。
若さだけじゃない実力派
いやいや、「UKバンドなんて最初持ち上げるだけ持ち上げて、2ndアルバムで本当の実力を出したら、案の定コケるでしょう?」
確かに、そのようなジンクスがある。実際にThe Viewは、2ndアルバムから、バンドサウンド以外にもストリングスやサックス等外部の音が、レーベルの圧力で導入され、ライブではバッキング・トラックを使うことになり、それがどうも馴染めなかったと後に語っている。しかし、そのような音源を出せたことに関しては誇りを持っており、1stほどの大きな成功を収めることはなかったものの、一度犯した大きな失敗を引きずって解散した幾多のバンドにはならなかった。
それは元々、「ロックバンドとして」だけではなく「音楽グループとして」の地力が大きく強かったことに他ならない。
2ndアルバム『Which Bitch?』より。このアルバムは1stと比べて暗めな曲を多く入れているが、上手いこと節目節目に明るい曲を入れることで、全体的な流れと一曲一曲の完成度が二作目にして目を見張るものになっている。
特に、上の曲がアルバムの中核を成している。「この手のストリングスの曲をロックバンドでやる意義が分からない。」と言う人の意見は分かる。しかし、例えるなら、一日を過ごすことが苦痛になりそうなほど絶望的な気分で迎えた朝・・・そんな時に飲むコーヒーの味は何時も通り苦いが、不思議と安堵や微かな高揚感が生まれる。このような日々の微細を表現していくために、ロックバンドは必要な物を全て取り入れるのだ。この曲のストリングスは、まさにその答えとして最上の形だろう。
3rdアルバム『Bread and Circuses』より。「単純に良い曲を揃えれば、良いアルバムが出来る。」そんな中学生が考えそうな発想を最高に体現してくれている名作なので、必聴だ。
そして、現在
The Viewは自分たちを束縛するメジャーレーベルから離れ、今はインディーズに舞い戻り、自由な活動を送りながらも新たな作品を着実に輩出している。
4thアルバム『Cheeky for a Reason』,ベストアルバム『Seven Year Setlist』(この記事で挙げられた曲は全て収録されている!)も語りたいところだが、来月、9月9日(日本盤。輸入盤は2 日遅れて販売)にリリースされる5thアルバム『Ropewalk』からの一曲を最後に紹介したい。
中毒性のある一曲。初聴は印象に残りづらいが、今までの彼らにない方向性を打ち出してきている。
是非、これからの彼らを楽しみにしたいところだ。