週刊スピリッツで連載中の音楽漫画バジーノイズについてのお話
まずおしらせ!
週刊スピリッツで連載中の宅録カス野郎とサブカルクソ女が活躍する音楽漫画、バジーノイズの監修をちょっと前からやらさせていただいております。作者のむつきとは飲み屋で知り合いました。
せっかくなのであらすじを紹介。
「バジーノイズ」は音楽と恋を題材とした物語。神戸の舞子にあるマンションで住み込みの管理人として働く主人公は、シンプルな生活を送りながら、1台のPCとともに音楽のある日々を楽しんでいた。好きなもの1つあればそれでいい、そう思っていた主人公の生活に徐々に変化が生まれ……。今を生きる男女の音楽と恋を描いたドラマが綴られていく。
―漫画ナタリーより
大嘘。NARUTOを本格派忍者漫画と呼ぶぐらい無理がある。ナタリーはこういうやっつけ仕事しやがる。オイ大山ァ、聞いてるか。
一巻までの話数が来週号で出切るのでここまでを踏まえた個人的所感を述べますと、これは音楽漫画というより「音楽業」にフォーカスが置かれている漫画、だと思います。
まず主人公
きよすみくん。
このサイトの読者層である半引きこもりの宅録野郎。本当は別に人と仲良くしたくないわけじゃないのに、つい口をついて出る言葉が冷たく拗ねていて、口に出した後に「しまった」と思うと同時に「いや、別に俺は独りでいいし」と頭の中ですらまた拗ねる面倒なタイプの根暗。お前らですね。見てる音楽メディアはindinativeと口ではいいながら実際はBASEMENT-TIMESの方を頻繁に見てる。記事リツイートせずにいいねだけ残していく。そういう奴。
ネット上でたまに見かける「才能、確かにあるんだけど」っていう人。
彼の問題は今までの人生での成功体験のなさからくる自信のなさ、閉塞感。「俺なんか凡人だ」という自己防衛で身を守る代わりに身動きが取れなくなっている人。才能あるのに。そういう人。
故に行動力がなくて自分を売り出したりしない、よく言えば謙虚なんだけど彼自身にとっては損な性格をしている。
そんなきよすみが
このサブカルクソ女、うしおと出会って… というのがこの漫画のスタートライン。
このうしおという女も面倒なやつで、自覚がないタイプの売女というか、無意識に人との距離感が近いが故に男が勘違いして人間関係の玉突き事故起こしまくるタイプの女。
そんな性格が災いして、立ち回りの上手いバンドマン崩れには遊ばれるし、本当に自分を大切に思ってくれている人間の好意には鈍感だったり、地獄膣と呼ぶにふさわしい人材。
こいつがきよすみと知り合うことによって、きよすみという人間が用意した自己防衛のための心の壁を障子を破くみたいにやすやすと突き破って、頼んでもないのに外に引っ張り出すような事態に発展する。
ある意味ではお互いの問題を補完し合う真逆の二人という感じ。男女間だから恋愛の要素が一切ないと言えばうそになるけれど、それ以上にタッグといった方がしっくりくる。普通、物語のタッグって男と男なんだけどこれは男と女で異性というカモフラージュをしたコンビものの漫画だと思う。
音楽漫画って最近増えてきててジャンプなんかでも新しく始まってたりするんだけど、どうもバンド経験者的というか、プレイヤー側視点になりがちで
「良い音楽を作って売れる!」
みたいな一次元的な話になりやすい。けどバジーノイズのテーマは他と違って、そういう所じゃなくて、
「"音楽を売る"というとことと"現実"」
っていう、もうちょっとシリアスな、実質的なテーマを取り上げている。
売る側と作る側の軋轢だったり、意識の食い違いだったり、そこで起こる人間関係だったり、そういう所がミソ。
ちょうど、ウォーキングデッドがただのゾンビモノじゃなくて"ゾンビ"という舞台の上でヒューマンドラマをやっているように、バジーノイズは音楽という舞台の上で人間性を描いている。そういう漫画なんじゃないかと。
んで、最後に宣伝なんですけれども今回スピリッツの「音楽フェス特集」という企画で、うしおちゃんを使って音楽フェスにいるサブカル女子を細分化し、研究し、見開き一ページ使って解剖解説を行いました。
こんなに丁寧に現代のサブカル女性を切り開いたページ、後にも先にもありません。是非読んでください。俺とむつきの独断と偏見をスピリッツ編集部がマイルドに読みやすく仕上げた至高の一品です。
そんなわけでバジーノイズをよろしくお願いします。
それでは。