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残田 響一

2015/09/07

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ナウなフレンチ音楽から現在のヤバいフランスを見る

ボンジュールフランス!
華の都・巴里(パリ)!
お洒落で優雅で洗練された白人国家、フランス!
テーマソングを国家以外に挙げるとしたらこんなカンジかな?

(楽曲の完成度とは別に……ネタが古いだろうか……今の美少女オタクは「サクラ大戦」通過してないだろうからなぁ)

 

う~ん麗しいねえ、フランス!
じゃあ、今のナウいフランスのリアルタイムの世相はどんなカンジかな?

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このあとに、

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……………………。
これが、現在のフランス、か。

フランスという多民族国家を簡単に音楽で読み解く

今回は社会派でいく。

もう、フランスといったら「テン年代(2010年代)のテロとの戦い」の象徴のひとつとなってしまったことが悲しい。
さて、そのような世相で、イスラム文化、ムスリム(イスラム教徒)というものに対するバッシングが、フランス国内では強まっていることは事実である。

だがそれは、当然のことながら、「ついさっき」はじまったことではない。
いくつかの視点が複合的になったところに、この問題はある。
間違っても「イスラムが悪だから悪なのだ」みたいなオバカサンの論法は、少なくともこのサイトで日々ユーモアの鍛錬をしている皆様にはしてほしくないところだ。

とはいっても、政治理論、国際政治論的に話すのも、違うと思う。なんといっても、そのように固く解説しているところは他にもあるのだから。

当サイトは、音楽サイトなので、あくまで「音楽」という文化論でもって語ってみたい。
いかにフランスという国が、その内実において「分裂」しているかを。

 

アラブ移民

 

まずはこれを聞いてみてほしい。ぶっちゃけ開始20秒でいい。

何というアラブ臭だろう!
これは、イギリスのパンク・バンド、The Clashの代表曲「ロック・ザ・カスバ」を、アラブ系フランス人歌手「ラシッド・タハ(Rachid Taha)」がアラビック・ロック・カバー(というかアレンジ)したシロモノだ。
フランス、及びヨーロッパで大ヒットした。滅茶苦茶大ヒットした。今ではタハの持ち歌である。

さて、このようなアラブ歌曲がヒットする背景にあるのは何か。
それは、もはやマイノリティとはいえなくなった、アラブ系フランス人。
もともとは、旧フランス植民地だった、アルジェリア、モロッコ、チュニジアなどの「マグレブ諸国」から、多数のアラブ人が、第一次大戦のあたりからフランスに移民してきたことに由来する。
現在のフランスに住まうアラブ系フランス人は、その二世、三世にあたる。その総数は、数百万と言われる。
そしてフランス第一の宗教はもちろんキリスト教だが、第二はイスラム教である(人口比率からいって)。
だいたい、アメリカにおけるヒスパニック移民のそれと比較したらわかりやすいだろう。
そう、アラブ系コミュニティの地位の低さだ。

世相の混乱、社会情勢の変化、そしてイスラム過激派の台頭もあって、このアラブ系移民コミュニティと、「いわゆるフランス白人富裕層」たちは、当然ながら反目しあう。
半ばお互いを仮想敵としているフシもあった。そこに、今回のテロ事件。フランス移民情勢を知らないひとからしたら、寝耳に水だっただろうが、知っているひとからしたら「いつか何かが起こるんじゃないか」と思っていたと思う。結果論にすぎないが。

で、タハの音楽。純正アラビック・ロック。
こういう音楽が民衆の熱い支持を得るほど、フランスにおいては「アラブの血」というものが、リアルに息づいている。
そしてそこに込められているメッセージは何か。
レベル・ミュージック(反抗の音楽)だ。

郊外の混合(ミクスチャー)

 

また、別の角度からも見てみたい。

フランスにおいて、「外国人」がさまざまに流入しているのは、今の一例でわかったと思うが、ことはそれだけではない。
「白人=富裕層」という単純な図式だけではない。

すんげえ盛り上がり。

これは、フランスで伝説となったミクスチャーバンド、「マノ・ネグラ(Mano Negra)」のライヴだ。
これを聞いて、どう思われるであろうか。

王道パンク、ロックンロール? アラブ? スペインっぽい? ラテンっぽい?

そう、この音楽は、さまざまな音楽文化を、アタマでなく、カラダでミックスした音楽である。フランスの、ナマの音楽だ。

このマノ・ネグラ、フランスの郊外から出てきたバンドだ。
フランスは中心部と郊外とで、経済格差が激しい。また、人種混合(の問題)も、郊外はより激しい。入り乱れ混乱するフランスのリアルのより濃いところが、郊外である。

それだけ多民族、コミュニティ乱立が起こっているところでは、固有の音楽文化がごっちゃごっちゃになる。体系だったものではなく、身体感覚でミックス!

そこから生まれてくる音楽は、「そこで鳴っている音楽」「そこに居るさまざまな人々」のミクスチャーである。ミクスチャーである必然性があるのだ。荒ぶれた感覚と、郊外のリアル。それすなわち、フランス各地のロードサイドが抱える、社会的な問題である。必然的に、闘争がある。その感覚を、マノ・ネグラは音楽、その在り様で示す!

祝祭と、秘められた反抗精神。それが、今のフランス音楽のリアルだ。

 

まとめ

 

どうであろう? ここまできて、さすがにフランスが「オー・シャンゼリーゼ!」とのんきに言っていられる国でないことは、十分にわかったことと思う。

さて、本記事が訴えたいことは、「いわゆる○○イメージ」の害悪だ。
こと、音楽に関してだったら、「違うよ! これはパンクであってメタルじゃねえよ!」とか、「これはヒップホップであってレゲエじゃねえよ!」とか、正確に評定することができるみなさんなのに、「国」「異文化」となったら、十把ひとからげのステレオタイプイメージで片付けてはいないだろうか?

言うは易し行うは難し、だ。我々だって、食わず嫌いの音楽とかあるだろう? どーしたって受け入れにくい音楽とか、あるだろう?

寛容さとはかように難しいもので。

そういった凝り固まったイメージを、ちょっとずつでも、この地下室TIMESの洋楽記事がほぐしていけたらいいな、と思っている。

当地下室TIMESには、「ステレオタイプを相対化する」記事、「世界の音楽を聞く」記事といったものが、このようにある。

アナリティクスを使おう ~クロアチア1位を知っているか~

音楽と宗教

この記事を読めば誰でもワールドミュージックのニワカ通になれるよ!

聴いたことねえだろアラブポップ!アジア各国のチャート1位の音楽を調べてみた。

……といった具合に。参考になれば幸いだ。

 

最後に、フランスがまだ平和だった時代の音楽を聞いて、終わりにしたい。フレンチ・ポップの伝説、フランス・ギャル。

その平和もかりそめのものかもしれないって? そうかもね。でも、あのフランスから、優しい、エスプリに満ちたソングが消えるってことは、音楽の歴史のなかであっちゃいけないだろう!

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