半狂乱の半立ちピアニスト 板橋文夫
半勃ちを連想したやつは帰ってくれ。よし8割ぐらい帰ったかな。
板橋文夫、私イチオシのジャズピアニストだ。
ジャズピアニストと聴くと、オシャレな感じがするだろう。落ち着いた感じがするだろう。
彼は違う。彼のピアノは最高に疾走している。
そしてテンションが上がりすぎていつも半立ちである。
完全に的を射た表現だと思うのだが、読み返してみると非常に頭が悪そうだ。とりあえず、観てほしい。
シンプルストーリー - ACIDMAN
超名演である。
2011年、皆さんご存知ACIDMANが渋谷公会堂でアコースティックライブを行った。
実はこのシンプルストーリーという楽曲、オリジナルは全くこんな雰囲気はなく超大胆なアレンジが施されている。
バンドがアコースティックでライブをし、ここまでサマになることはもちろんすごいが、ACIDMANがかっこいいことはもう論ずるまでもないのである。
板橋文夫、ジャズピアニスト板橋文夫なのである。
ゲストとして演奏しているのにも関わらず、全てを食わんばかりに疾走。
チョッパー、グリッサンドで煽る煽る。
本格的に即興をやってきた者のみに許されたフレーズ感。
私も思わず前かがみである。
一見直情的に弾いているようにみえるが、ボーカルをしっかりと見ていてメロディに呼応しているフレーズを弾いている。スキマを縫って弾いている。
さらに言えば、彼が直情的、半立ちになるのは楽曲を聴いている人間のアドレナリンが噴出するポイントとほぼ一致している。
よく聴けばA、Bメロなんかはかなり抑え目に弾いている。
彼の演奏に引っ張られてか、リズム隊、ベースとドラムが超楽しそうである。
ボーカルのオオキもいつもはギターソロを弾かないのだが、がっつりソロを弾いている。
おそらくだが、スリーピースという制約から解放されたので演奏を薄さを気にしなくて良かったからだろう。
『あ~どうも○×△□~ぶっ! ありがとう。』
出し切ってしまっている。演奏で語ったからもはやなにもいらないということだろうか、恐ろしい男だ。
渡良瀬 - 板橋文夫
こんな繊細なプレーもできるのである。
立ちそうで立たない、なんというもどかしさだ。
渡良瀬 - 板橋文夫 金子友紀
立った!文夫が!立った!
これだけやりたい放題やられて歌いきれるボーカルの力量が半端じゃないと思うのは私だろうか。
感情に任せてやりたい放題弾いている部分も多いが、繊細で流麗なフレーズも大量に出てくる。
ボーカルが彼の暴走を苦笑いで見ているところ、下手なお笑いより面白い。
なぜ彼はピアノを弾くんだろうか、きっと彼の熱量を受け止められる楽器がピアノしかなかったからだと私は思う。
SUMMER TIME - 板橋文夫
特別付録CD『板橋文夫ジャズピアノ入門』の字幕が出て笑ったのは私だけではないだろう。
どう入門しろというのだろうか、『まずは座って弾きましょう。』とでも言うのだろうか。
好奇心が止まらない。
誰かぜひ購入してレビューを書いてほしい。切に願う。