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大学生にはギリわかって高校生にはギリわからない 2000年代後半の邦楽ロックを振り返るpart2

 前回に引き続き2000年代後半を牽引してきた以降の邦楽ロックバンドまとめpart2、今回は2000年代終盤から2010年代初頭にかけて、邦楽ロックのトップシーンに名を連ねたバンドたちの紹介になる。

 この年代の音楽は9mmやチャットモンチーが大暴れしていた時代が目立ちすぎるためか、振る返ると言うほど過去でもないためか、取り沙汰してまとめられることは少ない。ので、今の高校生とかには前回よりも逆に馴染みのないバンドばかりかもしれない。

 しかしこの年代こそ今手に取って聴いてほしいバンドが密集している。派手な音楽なら今のシーンで間に合っているのだ。

 歴史通は言う
「戦国だの、江戸だの、幕末だの、そういった派手な時代ばかりフィーチャーされがちだけど通は安土桃山、安土桃山マジでヤバい」

 そういう感じ、僕は日本史専攻じゃないし知らんけどたぶんそう。

 そんなわけでpart2、見ていこう。

andymori

 天才。

 バキバキのディストーションサウンド全盛の当時、ペラペラのインディーロックで時代を優勝したのが彼ら、andymoriだ。

 新しいも古いもクソもない音楽である。たぶん1000年先もかっこいい。聴いてると「ヤッバ、音楽じゃん」ってなる。

 当時残響レコードが諸場を荒らし周り、猫も杓子も変拍子ポストロックマスロックに飛びついていた時代。バンド側もレーベル側も「こういう音楽が流行っているからバンドはこうじゃなきゃダメだ!」と騒ぐ中、小山田はヒョコっと現れて「え、かっこいい音楽なら何でもよくない?」と急に正解を鳴らし始めた。正解。5年に1度くらい現れるのである、急に正解するやつ。本質を突くやつが。

 彼らが現れた時、なんだか妙に納得したおぼえがある。「なるほど、これでいいんじゃん」と。ローファイもインディーも所詮日本ではマイナー音楽みたいな風潮は、ただ全員の思い込みだったに過ぎなかったらしい。繰り返すが「~じゃなきゃダメだ」なんてことは音楽にはないようで、かっこいいのが正解。単純すぎて忘れがちだけど本当にそれだけだということをandymoriは再定義した。

 彼らが現れて川に飛び込んで解散してまたかっこいいバンド始めて、残した物も、これからの期待も大きい。が、彼らの耕した畑からはまだ大きな収穫はない。andymoriという枝葉が彼ら止まりではなく、ちゃんと今とこれからにつながってほしいなと思ってやまない。回りくどい言い方をやめるなら、こういうバンドもっと流行れよと。じゃなきゃ今のシーンは不正解だ。エゴに過ぎないけど、そういう意味でも今の高校生に聴いてほしいバンドの筆頭だ。

 は?初期はリバティーンズのパクりだと?その通りだよ!!リバティーンズはフリー素材だからパクっていいんだよ。

 

相対性理論

 テレ東って曲名つけられるセンス、完全に破綻者である。

 相対性理論は曲が良すぎた。このサイトでは常々「バンドは曲がいいから売れる売れないみたいなことではない」と夢も希望もモラルもないことを主張しているが、相対性理論は曲が良すぎたから売れた。曲が良くてもバンドは売れないが、曲が良すぎるとバンドは売れます。

 カヒミカリィ以降あまり聴かれなかったウィスパーボイス文化を"やくしまるえつこ"は急速に発展させ、今の日本の女性ボーカルシーンに与えた影響はビートルズよりも大きい、椎名林檎、YUKI以来の逸材である。

 あとサブカルのこういった形をかたどったのも相対性理論なんじゃなかろうか、身も蓋も意味もない歌詞、絵が下手めの小学生が描いたようなファジーすぎるアートワーク、シュール。そういうカルチャー的影響もデカい。イソベマスヲなり、おしゅしなり、おもちエイリアンなり、ああいう異常状態がカルチャー的にアリになったのは相対性理論の時代にフワっとサブカル憲法が改正された為なのでは。

 サウンドは最高、ネオアコともオルタナともつかぬペコペコの音作りに雑食に持ちよられたタイトなリズムで包み揚げ餃子よ。andymoriが「あ、それでよかったのかよ!」という感想なら、相対性理論は「え、そんなのあったのかよ!」という感想。再定義VS発明、両者ともに異常者である。必聴。

 

ねごと

 この年代のガールズバンド枠は"ねごと"だろう。SCANDALは、ギャルすぎる。衣装がAKBのパロディAVみたいだもん。

 チャットモンチー、SHISHAMOに比べて知名度が伸び悩んだのは「曲がちゃんとしすぎた」ことが原因だとにらんでいる。ちゃんとしてる。

 聴いた感じはシンプルな歌ものバンドなんだけれど、ここにも9mm時雨の余波があったのか、演奏がクソ難しい。

 高校生の女の子がねごとにハマったとして「バンドやりたい!ねごとのコピーをしてみよう!」となったときにまず間違いなく挫折する難易度。チャットモンチーもドラムが頭おかしいが、そういうベクトルじゃない困難だ。

 あとガールズバンドのコピバン枠に「けいおん!」がいたのもまずかった気がする。相手が生身の人間じゃないんだもん。キツい。

 そんな不遇なねごとだけれど上述の通り、音がしっかりしすぎなくらいしっかりしている。まさにこの時代の音楽といった様相だ。

 あらかた有名ガールズバンドは聴いたなあという乙女には、そろそろ安土桃山。ねごとを聴いてみてほしい。

   

the cabs

 だーれだ!!

 マジでだれだよお前。

 現KEYTALKのよしかつこと、首藤義勝の真の姿がこれ、the cabs

 爆撃機こと中村一太の気の狂った手数のドラムとフロント二人の立ち姿が印象的なこのバンド、残響時代を代表する狂気のスリーピースだ。

 リリースは少ないがいまだに人気は根強く、ツイッターとかでも首藤義勝のことが好きすぎてKEYTALKにキレまくってる人とか、高橋の安否とかを心配している人を多数見かける。高橋は東京喰種の主題歌とかやってるよ。

 東京喰種と言えば、グールの作者が残響およびthe cabsの大ファンらしく、主題歌のオファーなどは本人が行っているらしい。ラインナップが普通に同世代でウケる。

フジファブリック

 好きすぎて言うことがない。彼のせいでクリスマスが楽しいだけの日じゃなくなってしまった。

 日本人にしかできない音楽であり、日本人のバンド音楽の答えのようなバンドだった。

 この歌詞性も、ちょっと真面目だったりふざけてたり間抜けだったりする感度も、日本人にしかわからない機微だ。

 MVで女がダンスし始めたのは彼らのせいもあるんじゃないだろうか。

 彼らもandymoriと並んで、後継者不在のバンドだ。この感度とサウンドが以降のどこかに実を結んでほしい。忘れられてほしくないバンドだ。

 

amazarashi

 amazarashiの1stまでの動きは、すごかった。曲一つでこんなにファンを取り込むのかと。爆弾の作り方で火がつきみるみるうちに売れた。それこそ彼の歌詞の世界観みたく夢物語のような成功だった。

 これも、変な音楽である。しっかり特徴のある音楽だ。

 メロディ感のほとんどない、8分で刻むAメロから、音程を大きく上げて起伏の大きいサビ。という独特の手法と特徴的な声で、聴いた瞬間に「あ、amazarashiだ」と知らない曲でも一発でわかる音楽になっている。

 しかしファンを獲得した要因はそれ以上に歌詞にある。淡々とシニカルな世界観がリーマンショック後の不景気にウケた。いや不景気は関係ないにしても、潜在的にいた根の暗いやつ、スクールカーストの敗北者層に「あ、これだ」と思わせる説得力があった。

 最近そういうシリアスに暗い音楽をあまり見かけないが、そういう子たちは何を聴いているんだろう。

 今のamazarashiはなんだか壮大でドラマチックな方に行ってしまったな、と僕は思っている。それはそれで好きな人もいるし、なにも批判するところはないんだけど、1stは良い意味でショボかったなあと思い返す。なんか、普通にダメな奴の唄だった。共感できるかは別として、ちょっと聴いてみてほしい。

 

神聖かまってちゃん

 ショボい。そういう意味ではいつまでもショボくいてくれる。

 出れんのサマソニ!?の初年度出場者であり、ロックンロールは鳴りやまないっ で良くも悪くも「なにこれ」と世間に不安と衝撃をもたらした。が、その後しばらく鳴りを潜め。僕もその存在を忘れかけていた頃、ニコニコ動画のランキング上位に
「セーラー服でB'zの物まねをしながら家具を破壊する動画」
みたいな動画にて無事彼との再会を果たした。怖かった。

 奇行ばかり目立つが、蓋を開けてみればちゃんとミュージシャンバンドである。音がつぶれるぐらい歪ませたギターに淡々とピアノを乗せるという手法は一種発明だった。

 頭のおかしなヤツが奇をてらってやっている音楽、そういう風な評じゃもったいない。色眼鏡を外して見てみてほしいバンドだ。まあ、それでも受け付けないなら仕方ないよね。そういうこともあるよね。

 

お疲れさまでした

 part1に続いて長くなりました。お疲れ様でした。

 たったこれだけじゃこの時代を網羅したとは言えないが、せめてこういう空気感だけでも伝わればと思う。

 最近のバンドをあらかた聴いてしまった。という人はここら辺から掘り下げてみてはいかがでしょうか。

 それではまた次の記事で!

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